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2021東京都議会選挙分析「メディアが敢えて触れない視点」

7/5未明になり総ての議席数が判明した2021東京都議会選挙だが、当方の所感としてはメディアの選挙前分析は結局大きく外れたし、選挙後の分析もとうてい的を得ているとは言い難い。

まず、常識中の常識として、現在は引き続き「コロナ禍」であり、国政、地方議会に関わらず、過去のデータを見ても大規模災害直後や災害下の選挙は必ず投票行動が保守化し「現体制維持」になる。「取りも直さず、まず災害対策をしっかりやってほしい」という有権者の意思表示なのだろう。もちろんこのような状況下では「政権交代」など誰も望まない。

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「災害下の選挙は投票行動が保守化する」この事実を今回の結果に当てはめると事前に「大敗」と言われた自民党が議席数こそ 8増だが、得票数自体はあまり変わっていない。都民ファーストは逆に15減で得票数は85万近く減らしているが、なにせ投票率が42.39%ともなれば全体的に前回と95万票減となり85万近く減らした都民ファーストの前回の得票数は大多数が浮動票によるものであったと見える。

都民ファーストの政党としての位置づけは基本的には保守だがリベラルの色が強い。つまり立憲民主党と自民党との中間だ。それだけに両党合わせて改選前の71議席から64議席となったが、有権者は都民ファーストを自民党の代替的に捉え、概ね自民党支持で前回都民ファーストへ投じた層は自民党支持には戻らず引き続き都民ファーストへ投票したのではないか。そして都民ファーストが31議席に留まったのは小池都知事の投票日直前のパフォーマンスの効果などではなくあくまで災害下で「現体制維持」に投票行動が働いた結果とみる。

そもそも自民党と自民党出身の小池知事が率いる都民ファーストの体質は近いはずで、振り返ると小池氏は知事就任以降、公明党への一方的な恋慕を隠さず、前回都議選では選挙協力まで取り付け46議席を獲得し「第一党」の座を目論み通り得た「大恩」がある。今回公明党は自民党との選挙協力を選択したが、公明党は「国政には進出しない」との約束のもと都民ファーストと選挙協力したのであって、その約束を一方的に反故にしたのは小池氏なのだから、今回も公明党にはあくまで議会運営を助けて欲しいと考えこそすれ、敵対感情は持ち得ないだろう。

以前から「オール与党」と呼ばれる東京都議会運営を新勢力で考えた場合、小池氏膝下の都民ファーストを軸にあくまで相談相手は「是々非々」を標榜する公明党で、公明党を介する形で自民党の協力も得る図式になるのだろう。こうみると小池都政に敵対する立憲民主党と共産党連合は実効性のある議席数を得ることなく小池氏にとってはなかなかの安定基盤を得たと言えるのではないか。

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また「自公惨敗」とする新聞の見出しもあったが、公明党は結局全員当選であり今回の都議選では唯一の勝者というべきだろう。未明まで結果が持ち越されたのは現行制度で実施された2005年以来最高数と言われた期日前投票の997,823票が大きく乗ったためで、基本的に直接的なコミュニケーションで支援依頼をする公明党(創価学会)のスタイル故、それがままならない今回はそれ故苦戦を囁かれていたのであるが、むしろ確実な期日前投票を活用した結果と考えられる(実際公明党の選挙の現場では期日前投票を中心に投票依頼をしている)

また、「公明党の得票数は前回比で10万票以上減らしているので力が弱まってきている」との声もあるが、ならば共産党をみると14万票以上減らしており公明党の比ではない。それに公明党は基本的に創価学会や公明党に縁のある、頼まれたような有権者しか投票しない傾向があり。一切「風」など吹かない政党であるが、共産党は昔から現政権への反対意志の受け皿になる事があり、必ずしも共産党支持ではない有権者に投票されてきた経緯がある。ただし過去3回の選挙結果を見ると公明、共産は驚くほど投票数に変動がない。増減は投票率に連動しているといってよい。

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注目すべきは2009年の選挙で、本来国政と都政は別物だが民主党政権誕生の機運で都議会でも民主党が大勝したが共産党は8議席に終わっている。これこそが自民反対票の受け皿としての共産党の立場と、反自民を標榜する政党が候補を多く立てると個々の選挙区で相対的に共産党は埋没してしまう事実を示している。

この危機感が共産党が野党共闘・選挙協力を推し進めたい本音なのだろう。つまり今回共産党が獲得した票は立憲支持者も加わっているとすると、本来の共産党支持勢力は60万を切るぐらいに下落している可能性がある。

公明党の山口代表が今回を「奇跡的な結果」と評するのも、本来2009年の共産党のように、ほぼ同程度の票数で推移してきている両党に関わらず、相対的に埋没し落選してしまう共産に比べ公明党はそうならない。これは相当小刻みに各選挙区の実勢をチェックし的確にテコ入れしなければ無理である。したがって共産党と公明党は地味ながら状況分析の精度とそれに対する対策に大きく差があり、変化する選挙状況の中でどれだけ「打つべき手は打った」と言える戦いが出来るかどうかで「奇跡」を手にすることも出来るのだと思う。

最後にまとめるが、今回の都議会議員選挙で有権者は「与党、野党を問わずコロナ対策をしっかり推し進めて欲しい」という有権者の意思表示だったとみる。

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