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キャパを超えた叫び声と、姉さんの話。

昨日カフェに行った時並んでいると、何やら前の方から大声をあげながら歩いてくる女性がいた。
カフェで大声って書いた文章を読んで頭の中で想像した音量の、軽く10倍くらいの声。

歩きながら悪態をついて、並んでいる同年代の女性にぶつかったり、いや、ぶつかったりというか、思いっきり意図的に叩くまではいかないけれど、それでも激しく当たって、当たりながら「なんでこんなところに並んでるんだ、馬鹿野郎」とか「ふざけるな!暇人が!」みたいな内容の事を英語で言うところのFワード満載で、いやそれ以上の日本語の悪態をつきながら、その女性に文句を言っていた。

友達?知り合い?それににしもは激しい挨拶をする人なんだなと思って見ていると、言われている女性は何も言わず笑顔でその人を見ている。

と、その叫んでる女性はまだまだ悪態を言い足りないらしく、カフェの中でそれを繰り返し、外に出てもそこいら中に響き渡るような声で叫び続けていた。

「えっ、他人同士?」
そう、その難癖をつけられて小突かれてた女性は、その騒いでる女性とは全くの他人だった。

「ねえ、そういうこともあるんだろうねえ、どうしたんだろうねえ」と言いながら、叫びながら外に出ていく女性を、優しく目を細めて余裕の笑顔で見送っていた。
「おおっ」
思わずその小突かれてた女性の懐の深さと冷静な対応に「姉さん、一生ついていきます!」って言いそうになったくらいのかっこよさを見た。

私はその女性同士が知り合いだと思っていて、なんか揉めたのかなあと思ってたから、その人たちの3人くらい後ろに並んでいても、呑気にまさか自分に何かが起こるなんて思ってもいなかった。

でも、他人同士なのにあんな事をしてたんだとしたら、私も姉さんの立場になっていたのかもしれないと後から気づいて「こわっ」っと思いながら、イヤイヤ私だったらあんなに冷静な姉さんみたいな態度とれるかなあと思った。
私があんな事されたら「何するんだよ!」ってすんごい顔して言っちゃいそう。

でも多分そんな事したら、あの叫んでた女性に油を注ぐことになって、もっと大騒ぎになったかもしれない。

姉さん、カッコイイっす。

しばらくして、警察が来た。
そう、警察が来るくらいの騒ぎ。

しかし、あの叫んでた人は何が気に入らなかったんだろう。
待つのが嫌だったのか、それとも、うーん、あんなになるまでの理由が想像つかない。

これは語弊があったらアレなんだけど、ちゃんとしたっていうか普通にきちんとした身なりで、綺麗な明るいグレーのコートを着てた。
見た目であーだーこーだ言うのは良くないんだろうけど、一見、なんていうか、そういう暴挙に出るようには見えない女性だった。
だから並んでいる人のお友達か知り合いかなのかなと思った節もある。
人間ってあんな風になれるんだね。
ってか、あんな声が出せるんだね。

びっくりしたなあと思いながらコーヒーを飲んでると、さっきの叫んでた女性が歩いて来た。
「うわっ!やばいじゃん!」と思ったら、なんと、さっきとは大違い、手に持ったエコバックを子供のように前後に揺らしながら、鼻歌でも歌ってるのかっていうくらいの楽しそうな足取りで、るんるん歩いて通り過ぎていった。

私は、一体全体何を目撃したんだ。
あんぐりした。

うーん、天気のいい午後、何事にも動じない姉さんと、なぜか悪態を突きながら叫びまくってる女性、そしてその出来事の後10分も経っていないのに、ルンルンと子供のように楽しげに歩いて行ったその女性を見て、私なんかまだまだなんだなーと独りごちながら、シナモンロールをフォークでつついた。

映画とか本とかの中じゃなくても、不可思議なことはあるものだ。

どうか皆様、安全で楽しい日曜日をお過ごしください。
ちょっとだけの非日常と共に。

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