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つぶやき 「匂いの記憶」

思い出を辿れば思い出す香りはたくさんあるけど
すぐに匂いが蘇る記憶は、自分にとって鮮烈な思い出ということか。

匂いを感じることは止めることができない。入れたくない情報って、目や耳からなら自分で制御できるけど、嗅覚は制御できずまず自分の中に入ってくる。それから鼻をつまむくらいはできるが・・

電車で、隣に座った男の人から香って来た自分と同じ香水の匂い

中央線で会社へ向かう途中、スーツ姿の男の人が隣に座った。
ふわ〜っとかおる。
「あっこの匂い 私の香水と同じだ。」
’ブルガリのBlack’ユニセックスの香水が気に入っていた30代。
香水瓶がスタイリッシュで、甘く、少しエキゾチックな香りだったような・・・The香水!と言ったようなものだったと思う。
もうしばらく匂いを嗅いでないので香りの表現が曖昧だが、誰かがつけていればすぐわかる気がする。
隣に座った人の顔が見たかったけど、見れなかった・・のは、タイプのままにしておきたかったから。
でも見ておけばよかったな。。たまに思い出す光景。
中央線のブルガリ。

夏の日、急にふる雨が空から連れて来た匂い

からっからに乾いたアスファルト
ギラギラの太陽
積乱雲と空
急に降り出した雨
この瞬間の匂いが好きだ
空から連れてきた匂いだと、後から教えてもらった
そうか 空の匂いだったのか。

ビデオ屋さんの匂い

街のビデオ屋さんが亡くなると聞いた日、あの匂いが・・・無くなるのか。
と寂しくなった私は変態かと思ったよ。なんだろうなあ、わかる人にはわかると思うのだよ!どこのビデオ屋さんに行っても同じ匂いしてた。
何が発している匂いかわからないけど。
いい匂いとか、変な匂いとかではなく 私が好きな匂いだっただけで
特段、みんなの共通点になるものではないだろうが、わかる人にはわかるはずだと思うのよ。

屋久島の山小屋、高塚小屋のトイレの匂い

縄文杉登山の時に使わせて頂いたありがたいトイレ。
戸を開けた途端・・強烈なアンモニア達が襲ってきた。瞬殺だった。
鼻がもげるとは、このことだ。目も開けられない。出来ることなら身体中の毛穴を塞ぎたかった。
so far これまでの人生の中で最強の匂いに出会ったことは間違いなかったよ。
それらが、人間達の体から出てきたものというのが・・また恐ろしいばかりで(笑
しかしながら、ここに用事があった。顔にタオルを巻き、息を止めて、耐えに耐えた1分少々。
外の美しい空気に心から感謝し、忘れられない思い出と経験値レベルをあげてくれた高塚小屋トイレに最敬礼!

父が死んだ時の部屋の匂い

私の父は元気に一人暮らしをしていた。特に医者にかかることもなく、少々ボケは始まっていたが、とりあえず一人暮らしはできていた。
ある日、父の親友であるおじさんから電話がかかってきた。
「父ちゃんと連絡がつかないんだけど、どうなってるんだい」
耳が遠い父は、携帯の音が聞こえない時があった。朝いるであろう時間に家電にかける。でない・・
仕事へ行く足を、実家に向けた。
玄関の前に立った時にもうわかった。
5月、汗が止まらず夏日が続くような日々だった。

人の体はタンパク質でできている。新鮮な血液が流れなくなったらすぐに腐敗が始まる。魚や肉が腐るのと一緒。
その時の匂いと、倒れていた背中の姿は、忘れることはできないのだろうな。

匂いの記憶は、入れるの止めることも、消すこともできないらしい。

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