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尻と椅子

どうにもお尻の位置がしっくりこない椅子というのがある。あらゆる位置、あらゆる角度で尻を置いてもこれではないという感じで落ち着かない。そして、何度も試しているうちに、どうやらこの椅子で快適に腰を落ち着けることはできなそうだと知るのだ。

ちょっと作業をしようと入った喫茶店やカフェでこれに当たると最悪である。常にどうもピタッとこない違和感を尻周りに感じながら作業をする羽目になるので、捗るものも捗らない。自慢ではないが、どれだけ尻にフィットする椅子に座った状態でも集中して作業をこなせる人間ではないので、それが尻がしっくりこないときた日にはもう諦めるしかない。コーヒーを飲み尻の位置を定期的に移動させながら、ただSNSをダラダラ見て終わったりするのである。

これは単純な椅子の良し悪しではない。椅子と尻との相性の話だ。たとえ周囲でいい人だと見なされている人でもどうしても馬が合わないことがあるように、人間工学に基づいた立派な椅子が自分にとっては全然快適でないこともあるのである。椅子は人であり、尻もまた人。人間椅子であり、人間尻なのだ。

ちなみに、一見中身がありそうで実は何もないこの文章は、カフェのしっくりこないソファに座って書いたものである。それを踏まえて読むと、なかなか頑張ったのがわかってもらえるのではないだろうか。

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