飛行機の斜め前の席の人が座席のモニターで笑点を観ているのが隙間から見えた。イヤホンをしているため音声は聞こえてこない。無音の笑点をしばらく見ていて気づいたのは、「座布団運びの山田くんの目が時々怖い」ということだ。

普段我々は声を聞きながら笑点メンバーを見ているため、あまり表情だけに注目することはない。山田くんもそうだ。彼のキャラクターを認識する上で、あのコミカルなハイトーンボイスはかなり重要な要素となっている。

だからこそ無音の山田くんをじっくり見てしまうと、笑顔と笑顔の隙間に一瞬現れる真顔につい意識が行ってししまうのだ。これは山田くんの表情のベースが笑顔であることも要因の一つである。平常時から起こる変化にはどうしても目が行くし、笑顔からのギャップも相まってその瞬間の目がとんでもなく怖く見えてしまうのだ。

裏社会の組織に属し、座布団の中に違法薬物を忍ばせて運んでいると言われても納得してしまうくらいの鋭い眼差し。ひとたび邪魔だと認識した者は顔に座布団を押し当てて始末してしまう。そんなことを考えていると、次第にベースの笑顔さえも怖く見えてきてしまう。

早く音ありの山田くんを見なくては。僕のためにも山田くんのためにも。