二月が終わろうというこの時期にセミの抜け殻を見かけた。季節外れもいいとこだが、夏のものが雨風に耐えて残っているとは考えにくい場所だったので、多分ここ最近のものなのだろう。少し前に二十度を超える暖かい日が何日か続くことがあったので、そこでうっかり出てきてしまったのかもしれない。

もしそうだとしたらかなり気の毒なセミだ。土の中で数年を過ごし満を持して地上に這い出して羽化したのに、めちゃくちゃ寒い上に誰も仲間がいないのだから。ネットの立ち回りが上手な人なら『巨人の星』の誕生会の話の画像を貼って面白おかしくツイートし、ひとバズりいただけるような状況である。それが本当に面白いのかどうかは置いておいて。

せめてそのセミが一人を楽しめるタイプであることを願うばかりだ。自分の判断ミスを嘆くのではなく、他の多くのセミが見られなかった景色を見られたことを誇っていてほしい。なんか間違っちゃったけどこれはこれでよかったな、と楽しんでいてほしい。辛い現実も受け取り方次第で幸せになり得るのだと示してほしい。それができる存在なのだ、あなたは。

『巨人の星』の画像を貼ったおもしろツイートは、できればやらないでいてほしい。