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虚無のエッフェル塔

コンビニのコーヒーマシンの前に敷かれたマットにエッフェル塔のイラストが描かれていた。何の意味合いも必然性もなく、ただなんとなく洒落た雰囲気を出したいがために配置されたエッフェル塔だ。100円ショップに売ってある商品などでよくる見ることができる、いわゆる虚無のエッフェル塔である。

そこには積極的な意志というものが一切存在しておらず、もはやお洒落にしたいのかどうかもわからない。「そういうものだから」と脳を使わずに配置されたのではないかと疑いたくなるレベルだ。これと比べたら無地のマットの方がまだ「無地で行くぞ」という意思を感じることができる気がする。

エッフェル塔の横には筆記体で「Thanks for coming to my house(私の家に来てくれてありがとう)」という英文が書かれていた。意味的には客人を歓迎するメッセージなのだが、虚無のエッフェル塔の横に書かれると「何となく筆記体の英文を配置しておきたい」以外の意図を読み取れない。こちらもまた虚無である。虚無英文だ。

あってもなくてもいいエッフェル塔と英文を踏みつけながらコーヒーを取り出した。香ばしく甘いいい香りがする。香りは目に見えないが、足元のエッフェル塔よりもよっぽど実体を持って感じられた。

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