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百均おじさんの発泡酒

年季の入った革ジャンのポケットに飲みかけの発泡酒の缶を突っ込み、後ろ手を組んで百均の商品を眺めているおじさんがいた。具体的にどうということはないが、どことなく凄みのある佇まいに目を引かれた。憧れるか憧れないかで言ったら別に憧れないが、かっこいいか悪いかで言ったらなんかかっこいい。そんなおじさんだった。

もし自分が同じことをやろうとしたら、周りの目を気にしてしまうし、自分自身の「なんか突飛なことやっちゃって」的な目線も気になるだろう。とてもではないがあんなに平然と百均を眺めることはできない。というか、酔っているいないに関わらず、そもそもあんなにじっくりと腰を据えて百均を鑑賞することがない。そう、あれは「鑑賞」だった。ただ眺めるだけではなく、彼は百均の商品から何かを読み取ろうとしていたのだ。あんなに真っ直ぐに百均に向き合うことのできる人間がどれだけいるだろうか。ダイソー社員の中にも数人いるかいないかだろう。

僕が見ている間、おじさんは淡々と百均を眺め、発泡酒に口をつけることはなかった。次の一口はいったいどのタイミングだったのだろうか。一通り眺め終えたあとに資本主義経済の行き着く先ついて思索を深めた上で、その場を立ち去りながらグビリ、だろうか。それとも百均の商品に書かれたほぼ意味のない英文を口ずさんでからグビリ、か。

きっと僕のような凡人には想像も及ばないタイミングで飲むに違いない。

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