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ジェットタオルだけに

トイレのジェットタオルでこれでもかと入念に手を乾かしている人がいた。僕も使いたかったので後ろに並んで若干待ってます感を出してみたのだが、全く気にする様子はない。体感だと5分、多分実際には30秒くらいしてからやっと男は去っていった。

おそらく彼は手を完璧に乾かし切っていったのだろう。僕にとってジェットタオルはとりあえず大まかに手の水気を飛ばすもの、という認識だが、彼は違うのだ。彼はジェットタオルを信じている。ジェットタオルが名前にタオルと付けた意思を受け止め、正面から向き合っているのだ。その風が全ての水分を乾かすまで、とことん付き合おうと腹を決めているのである。

僕はそこまで誠実にジェットタオルと向き合えていない。多くを期待しないドライな関係性だ。ジェットタオルだけに。

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