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臆病なのは先天的か、後天的か。


悪いことはしてはいけない。
だって怒られるから。
怒られることは何よりも避けたい。
だって怖いから。

だらしないことは悪である。
だからだらしなくならないよう自分を戒めなければならない。
自分を好きになれないことも悪である。
だから自分を好きになれるよう努力をしなければならない。

しかし、元来だらしない人間が、自分を戒めたり努力をし続けたりすることは、どんな物事よりも困難を極めるのである。



自分はだらしない人間なのだと気付いた後に、何が変わるのか。何も変わらないのか。変えられないのか。
変えた方がいいのか。そもそも変えられるものなのか。変わりたいのか。変われるのか。
すぐに答えの出ない問いを自分に掛けて、考え続けて、悩みに変わって、ネガティブな方向にしか思考が向かわなくなって、自己嫌悪まで行ってやっと考える行為がストップする。

今思うと、答えを出して自分で納得感を得てから動きたかったのだろう。
動きたくないからすぐに動けない言い訳が欲しかっただけだったり、こうしたいからこう動くという理屈がないと本当に動けなかったのかもしれない。

そもそも私には、考えすぎるとどんな物事も全てネガティブに塗り替えてしまう癖があった。
癖があることに気付いたのもここ1年ぐらいのことだ。
何故かは分からないが、自分はとにかく何をしてもダメだし何もしなくてもダメだが、自分以外の人達は無条件で何をしてもオッケーなのだ。
私以外の人達は皆何をしても可愛い、それは当然のこととして、私だけはとにかく可愛くないしダメなのである。
私以外の人類は善だが、私は悪。
そういう強烈に歪んだ前提、思い込み、思考の癖がどうも私にはあった。
思い込みというのは脳みそが勝手にやらかすことだが、頭だけに留まらず体にも影響が出る。ひいては行動にも。



初めて自分がだらしないということに気付いた瞬間は、だらしない=悪 でしかない。
ここが厄介な点である。
物心つく頃には優等生だったので、悪い部分があると改善したくなるのだ。
改善したい、改善しなければならない、悪いところは直さねばならない。そうすれば良くなる。
悪いところがあると怒られる、それは嫌だ。
悪いところを直せば怒られない、怒られずに済む、怒られたくないから、怒られる前に改善しなければ。
そういう思考式ができあがっている。
優等生というよりも、「よいこ」であることが何よりも大事なのだと自分で自分に刷り込んで生きてきたのだろう。
いいこちゃんであれば怒られない。
悪いことをしなければ怒られない。
その人が気に入らないであろうことを私がしなければ怒られない。


どんだけ怒られたくないねん。
怒られたら死ぬんか?



失敗は怖い。怒られるから。
怒られることは怖い。二度と受け入れてもらえない気がするから。
誰に? もちろん母親に。
そんな気がしていただけで、本当は受け入れてもらえたこともあったのかもしれないが、実家にいた当時はとにかく怒られないように、母を怒らせないように振る舞った。
受け入れてもらえなければ死が待っているとでも思い込んでいたのだろうか。

怒りを買わないように行動するし、そもそも行動自体をしなくなる。
何も新しいことをしなければ、日常生活における波は母の機嫌のみで済む。
こちらが動くことで波がひどくなる可能性があるのなら、それは避けなければならなかった。


家の中での普通は家の外でも適応されてしまうらしい。私は自分がしたいことを素直にしたり、やりたいと思ったら考えるよりも体が先に動くなどという体験よりも、身近な大人に怒られないようにするという意識ばかりが優先される性質になった。優等生の出来上がりである。

思い返せば、滅多なことでは怒らないタイプだった習い事の先生には、ダラダラと甘えて舐めた態度を取っていた。
度を越して先生が声を荒げたり、たまたま先生の機嫌で冷たい態度を取られたりすると、途端に嫌われたと勘違いしたり萎縮したりして、そこに居たくなくなって逃げ出していた。

優等生は、成功できなさそうなことや失敗しそうなことには手を出さないから失敗しない。やってみたいという意欲が芽生えても行動には移されず、芽生えは育たず、小さな粒ぐらいの大きさのままそれは恥や恐れといった膨大な自意識によって隅にやられ、風通しの悪いところで腐ったりカピカピになって、ひび割れたりささくれ立って、最終的に己を傷付けたりする。

失敗しないから挫折もしない。
折れないし傷付かないし悔しさからの奮起もない。
何より学ばない。
ただ他人から怒られなければそれでいい。
強さを身につける機会をことごとく避け続けた結果は、臆病で小狡い小心者の出来上がりである。


生まれつきの気質次第で、様々な要素が全て弱さに積み重なっていく。
そういうものかもしれない。


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