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◎それでも旅するカフェ/近藤史恵

シュークリームを一口かじる。
最初、甘くない、と思った。
乳脂肪の豊かな味がして、
その後シュークリームの香ばしい香り。
それからやっと砂糖の甘さを感じた。
チーズクリームの文字を見た時は、
もっと濃厚なものを想像したが、
驚くほど軽い。
なにより甘さがかなりの控えめなのだ。
それでも物足りなくないのは、
牛乳のおいしさがはっきり感じられるからだ。
クリームチーズと生クリームの中間くらいの
爽やかさだろうか。
癖がないので、子供だって嫌いではないだろうが、
お酒にも合いそうな気がする。

それでも旅するカフェ

真っ赤なスープはトマトではなく、ビーツの色なのだろう。
野菜と牛肉がゴロゴロ入っていて、おいしそうだ。
湯気に誘われるように、まずスープを一口。
思ったよりずっとさっぱりしている。
それでもたくさん入った野菜の複雑な甘みが出て、
とてもおいしいし、なにより身体が温まる。

それでも旅するカフェ

カフェ・ルーズのバインミーはおいしい。
レバーのペーストのようなものと、
大根とにんじんのなます、
パクチー、薄切りのローストポークが、
少し柔らかいフランスパンに挟まれている。
なますと、レバーペースト、パクチーと
バターとニョクマム。
フランスとベトナムの味がうまく馴染んでいる。

それでも旅するカフェ

サンドイッチと聞いていたが、
サンドイッチのイメージとは全然違う。
四角いなにかが皿にのっていて、
たっぷりと溶けたチーズがかかっている。
更にその上に目玉焼き、
トマトソースのようなものがかかっていて、
まわりにはフライドポテト。
そしてパンの中には、
サラミやソーセージや焼いた牛肉が挟まっている。

それでも旅するカフェ

ピタパンからあふれそうなくらいに
野菜とひよこ豆のコロッケが詰まっている。
ミントティーはドライハーブではなく
生のミントがたっぷり使われている。

それでも旅するカフェ

チョコレートがかかっているのは、表面だけだ。
中は白いムースとスポンジが層になっている。
見たことないケーキが、とてもおいしそうだ。
ミントの葉を飾り付けた「鳥のミルク」が前に置かれる。
フォークを入れると、とても柔らかい。
口に運ぶと、甘い風味が広がる。
ムースはカスタードだろうか。
優しいケーキの味に、
表面にかけたチョコレートがアクセントになっている。

それでも旅するカフェ


見たことも聞いたこともない
スイーツがたくさんでてくるけど、
食べてみたいなあって思える。
それは近藤史恵さんの
素敵な食描写のおかげだろうなあ。



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