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大人には甘酸っぱさが足りない

先週仕事先で思わず「おお、これは!」というものをみてしまった。

キスマーク。

すんげー久しぶりにみた。同い年(30前半)くらいの取引先の男性だったんだけど、それはそれは立派なキスマーク、いやキッスマーク、を首に。まるで勲章のようにつけておりなんだか見ているこっちが気持ちが若返えるような感覚に陥った。文字通りのごちそうさまです、だ。

大人になるとキスマークなんてつけなくなるよね。今は妻が妊娠してるからセックスしてないけど(もう半年近くしてないから枯れそう)、妊娠前。その時でさえ首にキスマークをつけようとしたら「仕事に支障があるから」と怒って遮っていた。大人なのに何考えてんだって思ってた。でも今考えてみるとキスマーク、つけても良かったなって思う。

大人にはもっと甘酸っぱさが必要だと思う。

初めて彼女ができたのが高3の時。当時吹奏楽部の部長をしていたんだけど1年生の女の子に一目惚れして、それが実は両思いで自然な形で付き合うことになった。ちょうど今くらいの暑いのか暑くないのかわからない微妙な気候の時だった。

初デートはお好み焼き屋の道頓堀。そこでもんじゃ焼きを食べた。どっちもぎこちなくてまだ先輩後輩の壁があって今じゃあ味わえない青さがあった。相手は付き合った相手がいたようだが俺で2人目。俺はその子が初めての彼女。つまりお互いウブ。

もんじゃ焼きって鉄板の上から小さいヘラで掬いながら食べるでしょ。少しずつ量が減ってくるとおのずと相手が食べていたスポットに向かっていく。めちゃくちゃ自然な形で関節キスになるじゃんね。お互いウブだったから、というか俺はキスすらしたことがなかったから関節キスしていいのか?どうなんだ?ととりあえず混乱していた。全力でキョドッていた。相手も空気を察したようでお互いが食べていた境界線を残すことで決着がついた。

で、そこから数週間過ぎた頃。帰り道の空き地でキスをした。ファーストキスは緊張という緊張をしまくって上手くできなかった。スマートに済ませるはずが歯と歯をぶつけてお互い「いたっ」と言って目があった瞬間に笑った。それでリラックスできてゆっくりキスしたら今度は上手くいってうっとりした。唇ってこんなに柔らかいんだなって感動したし、人を好きになるってこんなに素晴らしいことがこの世にあるのかよ!って驚愕した。

部活の先輩と後輩。正直あまりバレたくない。だから部活が終わったらこっそりと待ち合わせをして帰ったりだとか。交換日記をしたりとか。時々放課後の真っ暗な教室で待ち合わせをしてこれでもかってほどキスをした。

2人だけの秘密。そういったクローズドな繋がりにより一層の愛とか繋がりを感じた。というかそれしかなかったとも言える。

甘酸っぱさっていうのは初めて知る高揚する感情と、無力感みたいなね、どうにもならなさのコントラストだと思うのだ。

だから燃えるのだ。お前だけいればいい!その人だけいればいい。当時は本気でそう思っていた。その人との恋に。知らない一面を知る幸せに。高揚感に没頭していた。

が、今はどうだろう。

何人かの人と付き合ってある程度女というものを知り(知った気になり)。結婚もして安定に入り。今は今で幸せだけど決定的に何かが足りない。

多分それは甘酸っぱさとか青さ、そして素直さなんだろう。

初めてあの子と付き合った時。あの時はその人を知るだけで幸せだった。メールするだけで。電話なんてしたら痺れるし、手を繋いだだけで勃起した。気持ちに素直だった。でも、それに慣れて。時が経つほどに「大人だから」と謎の仮面をつけて世間体を気にして感情を揺るがさなくなった。

でも。

でも本当はそんなんじゃあない。キスマークつけるとかね、相手を好きという気持ちに素直になりたいと思っている。社会人だからだとか。そんなのクソだと思う。犬にでも食わせとけ!

来月妻が遊びにくるらしい。

俺はもう決意している。あいつにキスマークつけると。怒って叩かれて鼻血が出てたとしてもそれはそれでいい。

大人だからなんだ。夫婦だからなんだ。年齢がなんだ。社会がどうこうとか世間体とかどうでもいいだろ。

たまには甘酸っぱくて窒息して死にそうな渦中に飲まれようじゃないか。

俺は。今。甘酸っぱいことがしたい。

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