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#51『うみのハナ』すけのあずさ

 子供と一緒に調布のParcoに行く時には、いつもまず本屋に行く。勿論、絵本コーナーに直行。だいたい0~2歳児の所にくぎ付け。それで「これよむ」と言って、何度も同じ本を読ませて下さる。最近のお気に入りは、電車関係。『ふみきりくん』という絵本を先日は買ってあげた。
 折角なので私も、0~2歳の棚の他にも、色々な絵本を見たい。でも子供の要望は旺盛なので、なかなかその時間がない。そんな中、ふと子供が指差したのが、この絵本だった。
「ほう」と思って手に取った。何だか、良い感じである。ちなみに子供はすぐに興味が移って、やっぱり電車関係に没頭。私は電車関係の絵本を片手で開きつつ、片目でこちらの絵本を一通り鑑賞した。

 良い作品だった。絵に優しさがある。物語はシンプルだが、これもまた優しさがある。何より波動が良かった。心が籠っている。小難しいことをしていないし、肩の力が抜けている感じ。読んでいると・観ていると、自然と心が凪いでくる。

 物語の展開上の流れもあり、このページは色だけで心に強く訴えかけるものがある。じんわりと涙を誘う。

 水彩が基本だが、一貫して空は色鉛筆で描いている。この発想はどのようにして得られたのだろう? 

 この作品において、とても効果的である。素人考えすると、雲の表現をするなら水彩の方が良い気がする。しかし上のクライマックスの絵を基準としたのだろうか、この絵の空は色鉛筆でないといけない気がする。素晴らしい選択だと思う。
 物語はコンパクトで、特段のひねりはなく、絵も特別個性的とは思わない。しかし、ひねりや強い個性を求めるのではない人にとって、普通にこれは愛すべき小品であり、来客があってちょっと手つかずのひと時があるような時には、そっと差し出したくなるような優しさをおのずから備えている。何より大事なものは心、と考えると、紛れもなくこれは良い絵本である。
 2歳の子供にはまだ早いので、そうだなあ、8歳くらいまで待つと良いだろうか。その後は、何歳になっても味わいを引き出すことが出来るだろう。

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