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同意なき、転勤

ずいぶん前のことだけれど、会社のメンバーに転勤を伝えると、
「1回だけは拒否できるんですよね」
と、トランプゲームのババ抜きの「1回パス」のようなことを言うのがいた。そんな「都市伝説」「会社伝説」的なことは知らないし、聞いたこともなかった。

当時、会社都合の転勤は拒否できないもの、ではなかった。家庭の事情や本人の意思を表に出した人も、少なからずいた。そのかわり、というわけではないが、「出世」が遠のくという「伝説」があったのかもしれない。「1回パス」はどこから出てきたのかは知らないが、そういうのもあっていいと思ったものだ。彼はパスを宣言しなかったけれど。

「同意なき転勤」は日本が18.8%だという(2023年経済財政白書)。本人が同意しなくても業務命令で転勤する状況に「ある」という人の割合だ。米国は3%、中国は5.4%、フランスは7.9%だという。日本がとびぬけて多いようだが、逆に、「同意」して転勤する人って80%超もいるのだろうか。

転勤していろんな経験をしてみたい、転勤は出世のステップアップだから、今の場所が嫌だから転勤したい等の「望む」人もいるのだろう。が、多くは「仕方なく、同意」しているのではないだろうか。

「あなたでないと出来ない仕事だから」
と転勤をいわれると、ウソくさく感じたものだ。

あるとき上司が言った言葉は忘れない。
「あなたの代わりはいくらでもいる、俺もそうだけれど」
そう、サラリーマンはそんなものなのだ。

「仕方なく、転勤に同意」などせず、1回だけじゃなく堂々と何回も拒否すればいい。「あなたでないと出来ない仕事」だったら、会社はあなたを認めてくれているはずだ。転勤しなくても。