見出し画像

お出かけ虫

「白ワインにはアムステルダムのニシンの酢漬け、赤ワインはチューリヒの生ハム。それとお燗酒には神田の蕎麦」

Yさんのお酒の「あて」チョイスだ。船舶用エンジン部品をつくる会社の社長で自社製品の売り込みとメンテナンスで世界中を飛び回った結果の集大成らしい。

イタリア産の生ハムが日本から消えた。気がついたのは昨年のはじめ頃だったろうか。品薄で高くなると耳にして食品売り場の「プロシュート」を棚から5-6個カートに入れた。生ハムはスペイン産とフランス産に交代し、値段も高くなった

「アフリカ豚熱(ASF)」に感染しているせいだという。イタリアとドイツなど近隣諸国で発生した。日本の「豚熱(CSF)」とはウイルスが別物だというが、どちらも伝染力と致死率が高い。日本へのアフリカ豚熱侵入防止で、感染国イタリアからの輸入がストップした。

イタリア中部のトスカーナ地方の生ハムが気に入っている。何度かイタリアに行ったことがあり、仕事や観光が終わった夕方にスーパーマーケットに立ち寄る。食品売り場に並んだ数多くの生ハム、その大きな肉塊のひとつを指差して係のおばさんにスライスしてもらう。トスカーナのを選んだとき、彼女のうなづき顔と右手の親指がお薦めだと言っていた。100グラム2-3ユーロ、これを「あて」に赤ワインをホテルで飲む。間違いなかった。

しばらく食べられないとなると無性に欲しくなる。日本じゃだめでも現地にはあるだろう、ゼロじゃあるまい。ちょっと出かけてくるか。