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よくわからない、ストライキ

スト権スト(ストライキ権奪還ストライキ)というのがあった。JRが国鉄といっていたころのことだから、50年ほど前の話だ。国鉄は名が示すように、日本「国有」鉄道だから公務員みたいなもの。ストライキをする権利がなかった。そのスト権を求めて、ストライキをするという、よくわからないストだった。

当時は毎年のように、国鉄がストライキを実施した。2月の終わりから3月のはじめにかけてが多かったように思う。春闘に向けての条件闘争だったのかもしれない。

大学入試の時期と重なった。そのころの国立大学は1期校と2期校があって、1期校は3月3日が試験日だった。志高く、関西の田舎から北海道まで試験を受けに行くことにした。もちろん、飛行機という手もあるのだけれど、「落ちたら困る」ので地道に国鉄のルートにした。

青春18切符はなく、安上がりなのは北海道周遊券。それを手に、5日ほど前に出発した。ストになって試験日に間に合わないと困るからという理由で。

東京から青森、青函連絡船に乗って函館、札幌と順調に着いてしまった。ストがなかったのだ。早く着きすぎて、札幌のホテルは予約してないし、そんなお金もない。そこは北海道周遊券、帯広、釧路、網走と列車に乗り継いで時間をつぶした。

北海道にはサクラは咲かなかった。スト権ストの国鉄のせいにしようとしたが、飛行機で札幌に来た同級生も咲かなかったので、理由づけにはならなかった。

スト権ストは、よくわからないストライキだった。61年ぶりだという百貨店業界のストライキも理由がよくわからない。

そごう・西武の労働組合が会社売却に反対してストに突入した。その直後に、親会社のセブン&アイ・ホールディングスは米国の投資ファンドへの売却を決議した。売却の道筋はすでにきまっていて、ストで1日店を閉めても、なんら変わることはないのはわかっていたはず。

事業継続の要求だったのか?会社を売却して、カメラ店が入ってきても百貨店の事業は継続するという情報が伝えられていた。4年越しの赤字体質は、そのままのカタチでの継続は望めないのはわかっているはず。

じゃあ、雇用継続の要求なのか。セブン&アイは余剰人員をグループで引き受けると言っていたから、池袋にこだわらなければ雇用継続のチャンスはあるはず。

結局は、「西武」「池袋」にこだわっただけのストライキではなかったのか。

よくわからないストライキだった。