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2024年1月27日の乾杯

新しい乾杯。年が明けたと思ったら1月も終わり。寒さも募るなかで元気な演劇たちは蓄えた力を解き放つようにしっかりと公演中。手袋とマフラーで日々の寒さと闘いながら演劇について話の尽きないおじさんとおねえさんの会話です。

👨演劇のおじさんと
👩おねえさんです。よろしくお願いします。
👨よろしくお願いします。もう、1月も終わりですね。
👩そうですね。一段と寒くなってきました。
👨日ごと寒さがつのりますね。
👩まあ、それでも日が照っているとまだ少しはましなのですけれど。
👨なにより、風が冷たくなったよね、間違いなく。特に夜風。
👩そうなんですよ。
👨だから、私は朝晩は手袋とマフラーを必ず持って外出するようになりましたけれど。
👩私もです。あの、指のところのないグローブで。
👨あぁ、スマホが触れるように?
👩うん。それでもだいぶあったかい。
👨なんか掌を温めると全身が温かいというよね。
👩そうですね、そこから冷気が入ってくるっていうし。
👨まあ、マフラーも必需品になってきたし。
👩うん、そうねぇ。
👨まあ、それでなくても私の場合体型がふくよかなほうなので。
👩いやいやいや。
👨もこもこと。雪ダルマさんの気持ちがわかるような服装に近づいてきていますけれどね。
👩うふふふ。ところで、きになっていた舞台があるのですが。あの、アゴラでの。チケットをとるのが極めて難しかったという。
👨はいはい。
👩その感想を聴かせてくださいよ。
👨柿喰う客ですよね。特に玉置玲央さん。
👩そうです。
👨はい。まあ凄かったですよ。今回の柿喰う客は「サンキューアゴラ」と銘打って30分から50分のお芝居を3本なのですが、まずは玉置玲央さんの舞台ということで観てまいりました。

駒場アゴラ劇場

👩舞台のタイトルは何でしたっけ。
👨『いきなりキスシーン』ですね。
👩あぁ、はいはい。昔やったやつね。
👨そう。
👩あれは一人芝居ですよね。
👨うん、そうです。30分くらいの尺でしたけれどね。チケットは発売時に前売り蒸発だったのですが、その後座席を組んだら少し余裕ができたのか当日券なども若干出たみたいですけれどね。
👩ああ、そうだったのですか。玉置さんは今、なんだっけ、紫式部さんのドラマにご出演中ですよね。
👨大河ドラマ。『光る君へ』ですね。演じているのは藤原通兼さんだっけ。
👩うん。
👨関白になったら7日後に死んでしまったという歴史上の人物ですけれどね。
👩はいはい。ありましたねぇ。そんなはなしも。
👨第一回での凄みにSNSがざわついていたものね。で、そんな道兼の弟役を江本佑さんが演じていて、栄華のお鉢はそちらにまわる見たいなお話だったように記憶しているのだけれど。もちろん玉置さんも江本さんも紫式部役の吉高さんも良い味をお出しになられていて。
👩あぁ、はい。玉置さんは大きな舞台でも活躍されているしね。今アゴラでみることができるんかい、という話ですけれど。
👨まあ、いろいろに凄かったですよ。
👩どんなふうに?
👨開演20分前には観客がほぼほぼ席に座って開演を待っているのですよ。もうね、始まる前から場内が一種の緊張感に満ちている。ぴーんと張り詰めたような感じにね。
👩あぁ、わかる。
👨客席はL字型に組まれていて。素舞台で。時間になって、その静寂のなかに後方のというか道路側の外階段の上にある扉から彼が走り込んでくる。その瞬間にだれもが息を呑んで、場内の空気が一気に塗り替えられてしまう。
👩わぁ。あはは。
👨まあ、この作品を私は10年以上前の初演で観ていて、で、まあ当時から彼は他の追随を許さない切れっきれの俳優ではあったわけですよ。
👩そうですねぇ。
👨恐ろしく身体は効くし、一気に観客を掴む力もあるし、一方でちゃんとシチュエーションに合せて場を作ることも出来るしみたいな。まあ、当時から小劇場には過ぎたるとさえおもえる俳優だったわけですよ。
👩いやぁほんとですよね。なんか小劇場演劇の中にはいらい方だったというか、どこか別の世界につれていってくれるような感じでしたね.今また活躍の場が広がっていらっしゃって、更に洗練をされていかれるみたいだし。
👨以前NHKでは朝ドラにもご出演されていらっしゃったし。 
👩そうですね。なんかびっくりしますよね。
👨いやぁ、あの道兼さんの狂気なんかを見せられると、凄いなぁとおもうよね。なんか道長さんよりもまひろの吉高さんよりも道兼さんを見たくて録画をなんども見返してしまったけれど。その、しっかりと大河のお芝居を彼はされていますものね。
👩うんうん、そうですね。
👨なんかそれぞれの場において常にベストのお芝居が出来る力というのが凄いなぁとおもうのですけれど。でね、最初にこの演目を見たとき、10年以上前のその舞台では観客がみんな彼のお芝居に食いついて必死で一瞬ずつを追いかけていたのですよ。彼の演技に吸い込まれていた。その台詞とか身体の動きとかね。
👩はい、わかりますよ。わかります。観ていますから。
👨でもね、今回はそれだけではなく空間全体まで作ってしまうんだよね,彼は。なんか、昔の彼は切れ味のよい日本刀を駆使して切れ味を出していたのが、今回の彼は太身の刀を一閃して空間全体を作っていたような感じがあるんだよね。
👩へぇ。
👨その、身体はやっぱり衰えてはいるんだと思うんだよ。ちょっと見た目にはわからないけれど。
👩はあ。
👨動きの切れとかね。今彼は38歳だそうだけれど、最初にこのお芝居を観たときはまだ20代前半だったのだろうしね。やっぱりね、20代前半の身体でお芝居をしているわけではないんですよ。
👩うんうん。
👨でも、それを凌駕するくらい演じる熟度はあがっていて、同じひとつのものをつくるにしても無駄な動きがなくなって、昔は動で示していた物のある部分を静で示せるようになっているというか。
👩ああ。振りだって静の方が籠もるものがあるからね。なんていうのか、衝動だとか生まれ出ている物とかが衰えているとは思えないから、静になったらむしろ伝わる物が大きいのかも。
👨そう、そうなんですよ。
👩外側に出ていた物ももちろん人を惹きつけるけれど、内側になった分凝縮されて届いてくるような気がする。なんか恐ろしくなる。
👨そう、恐ろしいよね。
👩恐ろしいですよ。
👨しかも、その中で時に客席にまで入り込んで、空間全体で物語を編んでいくから。
👩うわぁ、はいはい。
👨まあ、物語自体けっこう跳んだ話じゃないですか、あれって。女子高生の
👩ああ、そうですね。。
👨でも、空間全体でやってくるとそれが突飛な話ではなくなって、その女子高生が思い抱いている温度でつたわってくるんだよね。
👩うん、うん。
👨たとえ体が昔よりは衰えているとしても、ここ一番での外連というのはしっかりとできるし、大向こうを唸らせるような力業もしっかりやるし。また、アゴラは袖の部分というかエレベーターホールの部分なんかもあるじゃないですか。
👩はいはい。
👨あそこもつかって、そこの蛍光灯の下でのお芝居があったりもするし。まあ、基本的に音響をなしでやっているし、照明も色を入れたりせずに明暗だけで作っていくし。
👩地灯りというわけではないんですね。
👨いや、作られてはいるとおもうのだけれど。私って照明のことはよくわからないのだけれど、いくつものの燈体の昼光色的な明かりの強弱というか。それはちゃんとデザインはされているのだけれど、柿喰う客のいつもの舞台のように様々な色で作り込まれたり、シャキーンと切れたり、ぴかぴか光ったりしているわけではない。
👩だから照明も動と静で。全体に静なんですね。
👨そう。初演に比べてもそういう印象で。
👩そうすると、よりあれじゃないですか。役者次第じゃないですか。
👨だから俳優を見せるための照明のようにも思えたよね。
👩俳優次第で舞台の一瞬が何色にもなるという。
👨そうそう。
👩それだけ俳優の腕がいいというか実力があるから許されるというか。
👨ほんと、そう。だから、観客が俳優の懐の内に完全にとりこまれないと単純に見えてしまうとも思うんだよね。でも、そうではまったくなかった。さっきも言いかけたけれど、エレベーターホールの薄暗い蛍光灯の下でお芝居をするシーンがあったりもして、そういうところを生かしての作品としてのメリハリも際立っていた。
👩へぇ。それもおもしろいね。
👨そうやって想いの明暗なども作り込まれているのね。
👩うんうん。
👨暗転して終演。その後ライトがつくと観る側もふっと解かれたような感じになって。十分に満たされすぎて。
👩拍手喝采。
👨もちろん。で、柿喰う客って毎公演必ずアフタートークがあるじゃないですか。
👩あぁ、はいはい。
👨そこで、15分くらい、作品のいろんなこととか、彼にとってのアゴラの思い出なんかを語って頂いてね。
👩うわぁ、すごく贅沢な。
👨うん。で、今こまばアゴラ劇場って劇場のグッズを売っていてね、劇場のTシャツを売っているんですよ。
👩はぁ、なるほど。
👨ええとね、青年団の劇団員、井上みなみさんがご自分が欲しいこともあって提案したら平田オリザさんからOKが出たとのことで。3000円で売っているんですよ。
👩へぇ。
👨白と黒の2種類でね、白い方は胸のところにアゴラのロゴの刺繍がしてあるんですよ。それで黒い方は背中に劇場の図面がプリントされているの。
👩あぁ、おもしろいねぇ。

駒場アゴラ劇場 Tシャツ 黒

👨あと1/50の尺での劇場の図面がデザインされたクリアファイルなんていうものもあるんだけれどね。
👩ああいうの。私、建物の図面とかいうのって凄く好きなんだけれどね。
👨で、その黒Tシャツを着て背中に劇場の図面を背負ってお話をされていて。なんか、そうすると、柿喰う客なり玲央さんのアゴラに対する想いやリスペクトがより伝わってくる感じがしてね。それにもほろっとしてしまいましたけれど。
👩あぁ、公演はもう終っているんだっけ。
👨あぁ、玉置さんの公演は昨日1日だけ。
👩1日だけか。
👨うん。26日の昼と夜の2公演だけ。
👩それは観ることが出来た方はラッキーでしたね。
👨うん、私がいうのもきづつないのだけれど、確かに。
👩客席というか客層は以前と違いましたか。
👨やっぱり女性の方が圧倒的に多かったけれどね。
👩あぁ、そうかぁ。
👨その、当日券を買うことができた女性達が終演後幸せそうな表情で出てくるのをみていたらこちらまで幸せな気分になってしまった。
👩よかったね、本当によかった。
👨そう、本当に良かった。もしかしたら観ることができないかなぁと思って足を運んでいるかたもいらっしゃったでいるのでしょうしね。一応当日の朝に一応X上などで◎というかそれなりに出せますよという案内はでていたのだけれど。
👩お客様はどのくらい入っていたのですか
👨どのくらい入っていたのだろう。あごらって本来のキャパは100ぐらいだと思うのだけれど。
👩そうなの?アゴラってそんなに小さかったっけ。
👨うん、たしか。あと舞台面もそれなりに取ってあったからね。彼がしっかりと暴れることが出来るように。
👩なるほどね。
👨そう考えると、多分100くらいじゃなかったのかな。わからないけれど。
👩ほんとうに、本当に運のよい、よかったねという人達がごらんになったのですね。
👨そうですね。ちょっと個人的なことをいうと、私が柿喰う客主宰の中屋敷さんの作品を初めてアゴラで観たのはきっと2009年に遡りますからね。たぶん『切れなかった14歳❤リターンズ』が最初だと思うので。
👩まぁ、まだまだ初期のころだ。私もその公演の名前は知っている。観てはいないけれど。
👨そうそう。その時に28日に観る予定の『八百長デスマッチ』の永島敬三さんもご出演で。そう考えると私の中でこまばアゴラ劇場というのはほぼ柿喰う客のお芝居を見始めたころであったりもするので、なかなかに感慨もひとしおで。ちなみに、その時の作家や演出家の人達って今や岸田戯曲賞受賞者だったり、公共劇場の芸術監督をしていたり、歌舞伎の作家をしたりでね。
👩すごいなぁ。
👨まあ、その時には彼らの未来なんて想像もつかなかったけれど、今にして思えばとんでもない面子の集まりだったのだったなぁって。そんなこんなで、アゴラ劇場の歴史というのはそこに拘わった人達が様々に歩む時間とオーバーラップしているのだなぁともおもったりしてね。
👩うんうん。
👨今回の柿喰う客ではあと2つまだ見ていない舞台があるから、明日それを観に行きますけれど。「サンキューアゴラ」は明日までなので。
👩ああそうか。具体的にはなにを観に行くのですか。
👨ひとつは七味まゆ味さんの一人芝居だね。
👩演目は?
👨『いきなりベットシーン』だったかな。
👩あぁ、はいはい。
👨あと、永島敬三さんと大村わたるさんの『八百長デスマッチ』という二人芝居を。それは初演は観ていなくて、再演をみているのかもしれない。でもさ、あの頃の柿喰う客の俳優というのは、今の若い俳優達とはまた違ってすごいですからねぇ。
👩ほんと、改めて観ることができてよかったですね。やっぱり昔の小劇場時代をよく知っている方々からすれば懐かしさもあり、あぁ、これかともなりますよね。
👨そうそう,柿喰う客でいえば、同じくらい昔に『サバンナの掟』というお芝居があって。それはシアタートラムだったのだけれど。
👩なつかしいですね。
👨まあ、切れなかった14歳の中屋敷チームに出ていたのも、永島敬三さんに加えて伊東沙保さんとか川田希さんとか今村圭佑さんとか武谷公雄さんとか諸々凄かったのだけれど、そのころの『サバンナの掟』にも、玉置さん、七味さん、永島さんにくわえていろんな俳優が出ていてね。今ではけっこう凄い人が多いよね。
👩そうですね。いろんなところで活躍していらっしゃる。
👨そうそう、その時出ていた大森茉利子さんなんて今ではあやめ十八番の母的ポジションだしね。
👩うふふふ。その世代って粒ぞろいだったかもしれない。
👨あと、玉置さんなどその最たるものなのだろうけれど、あのころからの10年とか15年というのはそのまま俳優の方達が力を蓄えてきた日々なのだなぁとも思ってね。
👩そうですね。そこからがあるから第一線でも活躍しつづけることができる。
👨まぁ、やめてしまった人も少なからず知っているけれど、彼らは良く続けたなと思うし。
👩続けることが一番難しい業界でもありますからね。そう言われたことがあります。
👨でも、たしかにそれは本当にそうなのかも知れない。まあ、演劇に限らず芸事なり仕事だってそういうことってあるのだろうけれど。いやぁでも、終ってからも興奮醒めやらずで、もろもろ考えたりもして、いつもだったら駒場東大前から電車で帰るのだけれど、ついつい渋谷まで歩いてしまいしたよ。
👩うふふふ。
👨井の頭線ふた駅分ね。
👩いいですね。
👨というか開演が15時だったから終ったのが15時30分じゃないですか。
👩あぁ、なるほど。
👨お天気もよかったから。ちょっと寒かったけれど。
👩ところで、前回のおすすめで今日ごらんになったものもあったんでしたっけ。
👨あぁ、東葛スポーツね。
👩そうそう。東葛スポーツはどうでした?ちょっと気になっていたのですけれど。
👨東葛スポーツはねぇ。主宰の金山さん、さすが岸田戯曲賞をとられただけのことはあって。ところで東葛スポーツってご覧になったことはありますか。
👩ないんですよ。
👨あぁ。
👩公演の情報もほとんど流れて来なくて。知ってはいるのだけれど。どんなものかなぁって。
👨なんかね、あそこのHP的なところをみるとまだ前回の情報から更新されていなかったりもしてね。
👩あはは、そうなんですか。
👨けっこう雑なんですよね、また、それをネタにして舞台にでてくる俳優にディスらせて笑いを取るという自虐をやったりもしているのだけれど。
👩あははは、
👨会場が北千住シアター1010の稽古場というかミニシアターという名前もあるのだけれど。そういうところは普通、会場の前なんかにポスターとか、百歩譲ってちらしとかが貼ってあってここですよってやっているじゃない。
👩はい。そうですね。
👨でも、東葛スポーツの場合はそのチラシがないから矢印の中に東葛スポーツとかいたものがところどころに貼ってあるだけなの。

北千住 シアター1010

👩あははは、いいじゃないですか。そこを辿っていったらワクワクさせていただける。
👨しかも、会場も前回と同じだったこともあってか、その矢印も使い回しではないかと覆われる節があって。
👩うふふ。
👨まあ、タイトルも『相続税¥¥102006200』だしね。
👩うわぁ。
👨でね、まあなんというか、金山さんの最近の作品って岸田をとった『パチンコ(上)』もそうだけれど、なにか昔とは骨の尖り方が違ってきているような気がするのね。昔はそのあたりにあるものを全てディスるみたいな感じだったのだけれど、
👩どんなだったの。
👨全編ラップなのですよ。
👩あぁ前におっしゃってましたね。
👨ラップでディスるから推しが一段と強いのね。しかも、台詞というか歌詞は全て後ろに投影されるから、文字情報としても内容が頭に刻まれていく。
👩で、一方で虚実とりまぜて自分の身内や所属劇団についての自虐ネタをしたりもするから、ますますその中に巻き込まれてしまうのだけれど。
👨で、今回はその金山さんのお父様が亡くなったことからその相続があって、ここでは言えないのだけれど、それに関連してちょっとあり得ないような美術の趣向があったりしてね。
👩ふーん。
👨だって・・・。
・・・・
👩今、こそっと言えないことを伺いましたけれど、凄いことをしますね。
👨まあ、描くことへの説得力には十分すぎるほどなっていたけれどね。彼自身のことや近しいところには劇場で時間を共有するからこそ渡されるいろんなことがあるわけですよ。あと、長井短さんがご出演されていらっしゃって、彼女のラップもド迫力でしたけれど。最後は亀島さんと仮面夫婦ではない旨もラップに編み込んでおられましたが。長井短さんはご存じですか?
👩はい。お名前は存じ上げていますよ。「掛ケグルイ」というドラマに出ていらっしゃった。
👨あぁ、そうなんだ。私はそれ知らないや。
👩漫画が原作なのですけれど、めちゃめちゃ良かった。
👨へぇ。というか最初に彼女を観たのは桃尻犬だったのだけれど、あと根本宗子さんのところにも出ていたよね。
👩出ていらっしゃいましたね。
👨というか、根本さんと一緒にラジオをやっていたよね、一時期。
👩あぁ、そうなんですね。
👨オールナイトニッポンとかやっていらっしゃったのですが、ふたりで。
👩そうなんだ。
👨というか、俳優として、彼女にしか出来ない役って絶対にあるよね
👩ありますね。
👨普通の俳優がやっても説得力がないのだけれど、彼女が台詞を話すと急に存在感がうまれるような役ってあるよね。で、今回は80分の上演だったのだけれど、昔のように右も左もぶった切るみたいな感じはなくて、なんというのか、怒りが内に入って思慮が深くなった感じはしたのよ。 
👩へぇ。
👨なんか想像もつかないような話題などもあってびっくりしてしまうのだけれど、でもそれらが統合されたものを観ると、そこには彼の想いとか怒りとか諦観のようなものまで含めてちゃんと残るのね。まあ、その歌舞き方についてはここでは言えない話もあるのだけれど、そういうものがあったとしても、それだけに目がくらむということはなくて。なんかそこに仕掛けられた芯が毎回コンスタントに残るようになってきたから。それは、因果はよくわからないくて、そういうことができるから岸田戯曲賞を取れたのか、あるいは岸田戯曲賞が彼に新たな創造のモチベーションというか矜持を与えて作品がよりそういう力を持ったのかはよくわからないけれど。
👩そういうのはあるでしょうね。
👨まあ、今回もチケットはあっという間に売り切れてしまったから。
👩あはは。
👨しかも、そのこともネタにしていましたからね。「チケット争奪戦に勝ち抜かれた皆様、ようこそいらっしゃいました」って。まあ、こういう舞台がしっかりと継続してあるというのは演劇の世界としてとても豊かなことだとおもうけれどね。
👩うんうん。そういえば、コンプソンズもご覧になったのですよね。
👨あぁ、コンプソンズ、観てきましたよ。小劇場B1での公演だったのですが、初日から超満員で・。

下北沢 小劇場B1

👩へぇ。
👨あのさ、なんだろ、けっこういろんな世界のごった煮みたいな感じにはなっているのだけれど、一番最初に女性が抱えた一冊のノートみたいなものが出てきて、彼女がこれは自分が書いた本ですと宣言をするのね。まあ、宣言するというのは大げさだけれど、観る側に伝えるのね。そこからいろんな世界が絡んでいって、更に絡んでいって、歩んでいってということで。 なんかちょっと昔の夢の遊眠社みたいというか、一番最初にこのお芝居をみたらそのあとお芝居を見に行くのをやめちゃうだろうような舞台ってあったじゃないですか。その、慣れたら無茶苦茶おもろいのだけれど、最初ちょっととっつきにくいようなお芝居ってあるじゃないですか。
👩最初にそれを見ちゃったらもう帰ってきてもらえないみたいな。
👨そうそう。わけわからないよとかどう観ていいのかわらないよみたいな話をするようお芝居ってあるじゃないですか。
👩大丈夫。観ている方もわからないというかよく観ていてもわからないお芝居というのはあるから。それでなんと運がわるいと呟くのよ。観終わってから。
👨そういう味わいってあるのよ。でも最初にその世界というものが提示されているから。
👩あぁ、見かたが提示されているのは良いですね。
👨まあ、みんながそれを拾えているのかはわからないけれど、私には冒頭がそのように思えたのね。そうするといろんなことが入ってきた時にそれらを全てその中のこととして受け取ることができるから。立ちんぼをしている主婦がいてその仲間と一緒にセーラームーンみたいなことになったり。あとAKIRAの世界が出てきたりとか、異世界みたいなものが出てきたりとか。
👩凄い。てんこもりですね。
👨いやぁ、いい年して最近アマゾンプライムビデオで異世界もののアニメをいろいろ見ているのが、こんなところで役にたつとはおもいませんでしたよ。
👩はぁ。
👨でも、それだけいろいろにてんこもりであっても、それが単純に去来してばらけるのではなくて、終わってみればそれが物語の枠のなかにちゃんといきづいていて、それは、作家に才能があるというか上手いと思うのね。中には野田秀樹さんへのオマージュもあってね。カメラと銃が出てきて、ともにshootじゃないですかといったらほら野田秀樹の言葉世界だというのには笑ってしまったけれど。
👩あはは、なるほど。
👨まあ、言葉遊びでね。野田秀樹先生は東葛スポーツにも登場していたから。今の演劇界では神様のような存在なのかもしれないけれど。
👩そういうお話を伺うと、なにか今年も順調に面白感激をふやしていらっしゃいますね。
👨うん。なんかさ、去年の中盤くらいまではまだどこか様子見のような部分もあって、お芝居も作れたらそれはそれでよかったねみたいな感じがあったけれど、なにかの箍がはずれるような作品を誰もが自由に作れるようになってきた感じはするのね。
👩はいはい。
👨たとえばアゴラで公演を予定していたある団体が流行り病ということではないのだけれど諸事情で公演を中止したときに、柿喰う客がそのスケジュールを救うことができたわけだし。
👩まあ、タイミングもよかったのだろうし。
👨アフタートークで玉置さんが、言われたのが1月初めでえらいびっくりしたみたいだけれど。
👩まぁ、一人芝居だからできたことだろうし。
👨というか、中屋敷さんが勝手にうけちゃったみたいなことをおっしゃっていたけれど。
👩あははは。なるほど。あとは頼むねみたいな。
👨というか、最初相談された時には無理です的なことをいったにもかかわらず、受けちゃったという話になっちゃったとおっしゃっていたよ。
👩うふふふ。
👨でも、そのおかげで。
👩観客はね。
👨そう、観客はね。彼はこれからもっと大きな俳優には間違いなくなっていくのだと思うのだけれど、その一里塚を拝見させていただいたわけで。
👩そうですね。ファンイベントというわけではないのだろうけれど、嬉しいですよね。
👨ありがたかったですよ。
👩まあ、怪我の功名というわけでもないのでしょうけれど。アゴラ的には。
👨それでなくてもアゴラという劇場は他のところはちょっと違うじゃないですか、その存在が。しかも閉館になってしまうわけだし。まあ、そんな感じがしましたけれどね。
👩うんうん。
👨さてと、そろそろ今後のお勧めでもさせていただきましょうか。
👩はい。
👨まずは、幸せ学級崩壊ってあったじゃないですか。活動を休止してしまったのだけれど。
👩あぁ、はいはい。
👨あそこの主宰の方が、幸せ学級崩壊名義ではないのだけれど、本名で作・演出をされる舞台がありまして。
👩へぇ。いつですか?
👨2月18日、
👩割とすぐじゃないですか。
👨1日限りの公演。場所は吉祥寺シアターで。というか吉祥寺シアターの企画公演のひとつらしいのだけれど。彼は今、吉祥寺シアターの職員なんだってね。「EDMとマイクの代わりに大量のメトロノームと謎の民族楽器を携え執り行う、魂の浄化を目論む60分間の演劇儀式!」、とうことで。劇場が主宰する公演みたいで木戸銭も1000円。これは是非に観に行きたいのだけれど。
👩へぇ。
👨あとね、もうひとう。泣かないで、毒キノコちゃんという団体があるじゃないですか。
👩はいはい。
👨そこと、中野あきさんの運営しているあの温泉地が組んで、マイナス200万パワーズ×あの温泉地公演「あの子が死んだ夜に飲んだコーヒーは苦かった。」というお芝居をするのね。
👩会場は。
👨呑もうぜグループのARENA下北沢、天井がガラス張りのあの空間のお芝居の近さはいつもなかなかに魅力的で。雨が降るとちょっと音がきになったりもするのだけれど、それがつくる一期一会の雰囲気もあったりしてね。ちなみにマイナス200万パワーというのも凄いなぁ。
👩マイナス200万パワーってなんですか。
👨泣かないで、毒キノコちゃんは去年9月のスズナリ公演が中止になってしまったのですよ。それで赤を背負ってしまったみたいで、それを逆に糧にしてがんばろうということかなぁと。
👩なるほど。
👨それでなくても2月は王子の佐藤佐吉演劇祭もあったりして大激戦地なのですが。うまくスケジュールを組まないと積んじゃうこともあるので観客側もいろいろに大変だったりもするのだけれど、これは是非に観にいきたいなぁと。
👩ふんふん。
👨まあ、一番寒い時期でもあるし、風邪などひかないようにしなければね。
👩そうですね。
👨では、今日はこのくらいにしましょうか。
👩はい。
👨では、演劇のおじさんと
👩おねえさんでした。
👨また次回。
👩皆様も風邪など召されませぬように。

(ご参考)
・柿喰う客『サンキューアゴラ』
2024年1月26日~29日@こまばアゴラ劇場
作・演出 : 中屋敷法仁
出演:
 『いまさらキスシーン』玉置玲央
 『いきなりベッドシーン』七味まゆ味
 『八百長デスマッチ』永島敬三、大村わたる

・東葛スポーツ『相続税¥102006200』
2024年1月25日~29日@シアター1010稽古場1(ミニシアター)
脚本・演出:金山寿甲
出演:長井短、川﨑麻里子、名古屋愛、
加藤美菜、佐々木幸子、米川幸リオン

・コンプソンズ『岸辺のベストアルバム』
2024年1月24日~28日@小劇場B1
脚本・演出:金子鈴幸
出演:近藤強(青年団)、佐藤有里子、笹野鈴々音、
佐野剛(江古田のガールズ)、西山真来(青年団)、端栞里(南極ゴジラ)、
波多野伶奈、藤家矢麻刀、大宮二郎、
宝保里実、星野花菜里

(今後のお勧め)
・あたらしい劇場プロジェクト『ハムレット・ハウス』
2024年2月18日@吉祥寺シアター
脚本・演出:小西力矢(吉祥寺シアター)演:田久保柚香、宝保里実(コンプソンズ)、升味加耀(果てとチーク)、
村山新

・なかないで、毒きのこちゃんマイナス200万パワーズxあの温泉地
「あの子が死んだ夜に飲んだコーヒーは苦かった。」

2024年2月16~17日、23日~24日@ARENA下北沢
作・演出:鳥皮ささみ
出演:安東安按、鈴木朝代、中野あき


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