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ニュースで話題の裁判追いかけたら毅然としたくなった話(航空法違反、威力業務妨害など) 傍聴小景 #29-②

当記事は、以下の傍聴記事の次回公判の傍聴記となりますので、内容のご理解のためにまずお読みいただけると幸いです。長ぇけど。

まずは、この度は上記にもご紹介している記事につきまして、
多くの方にご覧いただきまして大変嬉しく思っております。本当にありがとうございました。

このような評価もいただき嬉しいのと、やはり社会的な関心が高い事案なのだなと気が引き締まった思いとなりました。正直いただいた多くの意見の中に、耳が痛くなるようなものもありました。しかし、根底、根本から否定なさるような方はいらっしゃっらなかったので、やはり色んな立場や見方があれど、そのご自身の意見に必死の思いがあるというのがよくわかりました。


そんな訳で、今回もお手数ですが以下の点をご確認の上、何卒よろしくお願いいたします。


お読みいただくにあたって

・料金記載がありますが、当記事は全文無料でお読みいただけます!
 なぜ料金の表示があるかは、最後で。

【ここ非常に大事】
 検察側、弁護側の主張が出てきます。長いですが両方をご覧ください。
 また、これらはあくまで、主張や証言に過ぎず、実際がどうだったかは
 わかりようがなく、司法上判断するのは裁判所です。

・某有名事件を取り扱いますが、今までを踏襲し名前は出さず
 「被告人」と表現します

・裁判の完全再現は当然無理なので、紹介する内容は頭で要約や
 脳内補完している部分もあるのはご了承ください

・裁判所外、SNSで被告人はこう言ってたけど、みたいなのは
 考慮しません。あくまで裁判内での話をします ←ここもメチャ大事


第7回 公判概要

日 程:6月28日 10:00~15:20
罪 名:威力業務妨害
    傷害
    航空法違反
    公務執行妨害
    器物損壊
被告人:30代男性
傍聴席:23人(10時開廷時)

前回からこの事件の傍聴を始めて、人の少なさにもどかしさを感じていましたが、この日はさらに減りました。スタート時は前回同様でしたが、裁判の途中で徐々に減っていかれました。裁判というのは途中出入り自由なのです。自由といっても、そんな頻繁にするものではありませんが。

そんなこの日の法廷ですが、午前中に限り少し変わった措置が取られていました。

大阪地裁 6月28日AMの201号法廷

ざっくりとですが、この法廷の傍聴席は1人掛けが5つ並んで後ろに続く島が、左、真ん中、右と3つあります。その中で、真ん中の島の傍聴席側から見て一番左から4番目まで着席不可の張り紙が。事件関係者用の席であったり、記者用席が設けられるため一般着席が不可なことはありますが、それにしても今回は多い。

これは午前中に出廷した証人が、秘匿の対象とされていたため、証言台付近に傍聴席や被告人席から見えないよう大きな遮蔽がされていたためなのです。

大阪地裁 6月28日AMの201号法廷

こんな感じ。
でも、これだけでは「✕」の席がある理由にはなりません。だって、どの席からだって証人のことは見えないよう隠れているのですから。
これは推測なのですが、この遮蔽は結構高いので、裁判官から「✕」の座席に座ってる人はわからなくなります。裁判長はこの公判の長として、傍聴席が見えないということがあったら困るのです、多分。
たまに性的犯罪の被害者が出廷するときなども同様の措置がとられていますね。

まぁ、じゃあなんで一番右だけは空いているんだよというのまではよく分からないのですが、今回の話で後に出てくる座席の見え方の角度という問題の布石になっていたり、なってなかったり。


被告人が法廷に入ってきました。前回は裁判官に一礼する姿も見受けられましたが、今回は一瞥したのみ。なんというか、疲れているように見える。今回、被告人がなにか不規則な発言をしたりとか、特に表情を見てどうこうというのはないので、本編に全力を注がせていただきますね。

今回も前回同様、検察として犯罪事実を立証するのに必要と思われる証人の尋問を行います。


公判中いろいろあった呼び名の統一

「被告人」に統一:名前、被疑者、21Cのお客様などの表現
「B」に統一    :当日搭乗していたチーフパーサー
「CA」に統一  :客室乗務員などの表現
「機長」に統一  :機長、キャプテンなどの表現
その他乗客は座席番号で、全て敬称略


検察側申請 証人尋問・搭乗していたCA(検察官より 1/2)-異議ありで波乱なスタート-

まず一人目は、事件の飛行機に搭乗していた前回とは違うCAさん。

検「今回、事件の飛行機にCAとして搭乗していましたね」
証「はい」

検「あなたとBさんの他にCAは2人いましたね」
証「はい」

検「濃霧の影響により20分遅れで、搭乗が開始されましたね」
証「はい」

アイスブレイクのような質問兼、前回、証言したBさんの証言と同一性があるかの確認のような質問が始まりました。もしよろしければ、前回の記事をご覧になった方は、そういった観点からもお読みいただけますと。

検「この日、何か変わったことがありましたね」
証「21列目あたりで、CAがお客様と話しているのを目にしました」

検「それはどういったものでしたか」
証「後に報告を受け、マスク着用を拒否していることで、
  21A
(被告人の2つ隣の窓際)と揉めていると」

検「そのことは、誰かに報告しましたか」
証「Bさんにしました」

検「そこからあなたはどうしましたか」
証「自分の職務として、前方からお客様の様子やマスクを配るなどを
  していました。そして9列目あたりで、揉めている様子が
  見えたので向かいました」

検「そこでわかったことはなんですか」
証「被告人が、暴行罪だ、侮辱罪だと言っていました」

検「具体的にどういうことかと言っていましたか」
証「21Aから「気持ち悪い」と言われ、暴行をされたと」

検「被告人はどこに座っていましたか」
証「21Cです」

前回の裁判が、先週にあったばかりですから、記憶が補完されていくようでなかなか興味深い体験でした。少しずつニュースでしか知らなかった世界観が頭の中で色付けされていきます。

検「あなたは被告人に声をかけましたか」
証「はい、マスクを着用していただくようお願いいたしました」

検「すると被告人は何と言いましたか」
証「それはお願いですか、義務ですか、と聞いてきました」

検「それに対して、なんと答えましたか」
証「お願いです、と答えました」

検「すると、なんと答えましたか」
証「お願いであれば承るが、答えはノーです、と答えられました」

検「あなたは、被告人が言っている「暴行」の瞬間は見ているのですか」
証「私は、直接は見ていません」

検「その後、マスクの着用のお願いはしましたか」
証「いたしました」

検「すると、ほかにどういった答えがありましたか」
証「非科学的で根拠のないものはつけたくありません、と」

検「被告人による暴行の訴えは一度でしたか」
証「何度もありました」

冒頭にお伝えした遮蔽措置の関係で、証人の姿は傍聴席からは全く見えませんが、かなりはっきりお話しをされる印象。細かい言葉遣いはこの文章上、簡略化していますが、言葉の使い分けなど聞いても、やはりCAさんってかなり訓練されているんだなと感じます。

検「被告人はCAとして何かを求めたりはしましたか」
証「21Aに謝らせろと言っていました」

検「CAの業務として、そういったことはできるのですか」
証「間に入って、解決のための場を作ることしかできません」

検「被告人に対してどう答えました」
証「双方の意見を聞いていませんので、と」

検「できる、できないとは言いましたか」
証「できません、と答えました」

検「被告人は納得していましたか」
証「納得せず、繰り返し言ってきましたので、繰り返し説明しました」

検「会話は噛み合っていたと思いますか」
証「噛み合っていなかったと思います」

検「周囲の乗客はどのような様子と思いましたか」
証「小さなお子様もいらっしゃいましたので、「恐い」という
  声もありましたし、落ち着きがない雰囲気でした」

検「少し話を変えまして、座席のアームレストについて伺うのですが..」

と話を始めたところです。
弁護士が「あー、すみません」と言い、立ち上がりました。

裁判の作品ではよくお目にするでしょう「異議あり!」の場面です。
実際、裁判でものすごく多く見かける場面とは言いませんが、じゃあ全然見ないかというと、そうでもありません。

言い方は人それぞれ。「異議あり!」とは私は聞いたことはありませんが、「異議がございます」というのは結構多い気がします。とにかく質問を中断して裁判官に意義を申し立てればいいのです。

弁「こちら当初の予定に含まれていない質問になっており、
  ここで何か答えられてもこちらは反証のしようがありません」

裁「検察官、異議についてのご意見は?

検「前回も出てきた話ですし、客観的事項の確認としてのみの
  趣旨でございます」

裁「弁護人は?」

弁「ですから、そこでの内容は確認しようがありません」

ここで、3人の裁判官が相談をしあいます。真ん中に座る裁判長が左の裁判官と話し、そして右の裁判官と話し、というので判断を決めます。
同じ訴えを何度もしてきて、さっきと同じだなという場合は裁判官が即座に判断することもありますが、基本的には異議に対して相手の趣旨や意見を確認します。法律に違反していないか、むしろ法律に沿っているかなど。

こういうのを見ると、法律を学んで自分なりの意見を持ちたいなと考えてしまいます。

あと意外と思ったかはわかりませんが、弁護人の「当初の予定に含まれていない質問」という言葉。私も詳しい手続きはわかりませんが、長期に渡ることが予想される裁判においては、事前に情報の整理などをしっかりするようです。
見えないところでも、裁判関係者は動きまくっているのです。


裁判長「異議を棄却します」

この言葉によって、検察官は質問を再開します。

検「通路側にあるアームレストは可動式ですか」
証「可動式です」

検「どのように操作するのですか」
証「機にもよります。レストの下にボタンがあったり、
  付け根につまみがあるなど」

検「今回はどちらのタイプでしょう」
証「今はわかりません」

検「この写真(なにか提出済みの証拠)を見ると、
  下につまみのようなものが」

弁「答えを誘導しております」

検「では、質問を変えます」

前回の公判では一度も異議の申し立てがなかったので、少しざわつき気味の序盤となりました。やはり出てきた2人の証言が合致するとなると、証言には信用性が認められやすいので、どちらも必死です。


ここで、皆さんの熱を冷ましたい訳でも、CAさんを悪く言うつもりもないのですが、やはり同じ会社の方ですし、意見を合わせやすくはあるというのは頭の片隅に置いておかなければなりません。もちろん出来事がショッキング過ぎて頭から離れないということもあるでしょうが。

だからこそ、反対尋問(今回は弁護人)では切り崩すために細かいところに穴がないかを探すために、意地が悪いと思われるような質問などをするわけです。大変ですよね。今回の件で、弁護士という仕事に悪いイメージ持たないでくださいね。

検「被告人には誰が対応していましたか」
証「Bです」

検「証人はいつまで、被告人の対応をしていたのですか」
証「最初の対応から、Bに報告するまでです」

検「Bは、単独で判断し動いていたのですか」
証「地上係員とも連絡を取り合っていました」

検「それによって、どういう方針を決めましたか」
証「被告人に席移動をしてもらおうと」

検「被告人はそれに応じましたか」
証「いえ」

検「なぜかなど言っていましたか」
証「この席は発券されているので、移動はしません、と」

検「被告人は書類を書くなどと言っていましたか」
証「私は目の前ではなかったので、それについてはわかりません」

検「席移動に応じなかったため、どうなりました」
証「21Aに移動してもらうことになりました」

検「そのとき、通路の反対側の21Eはなにか言いましたか」
証「「お前マスクくらいしろよ」と言っていました」

検「それに対して被告人は」
証「21Eが鼻までマスクを覆ってらっしゃらなかったので、
 「あなたマスクの仕方間違ってますよ、CAさん教えてあげたほうが
  いいんじゃないですか?」
と言いました」

検「それでどうなりました」
証「21Eが「やかましい」と言いました」

検「被告人はどう反応しました」
証「聞きましたか、皆さん。僕恐いんですけど。
  侮辱罪ですよね。
と言っていました」

21Eこの黄色い人ですね。前回、どうしてこの人に飛び火したのか疑問だったのですが、こういった経緯があったのですね。

これについては被告人に同情できる点もありますね。本人としては、言い方はあるとは思いますが、強制でない権利を主張していただけで周りから煽られストレスも溜まっていたことでしょう。

恐らく、冒頭に挙げた濃霧で搭乗が遅れたみたいな話もあって、機内全体的に苛立ちみたいなのがあったのではないでしょうか。これは私の完全な推測です。

検「離陸前、Bとは被告人について何か話をしましたか」
証「降ろす、降ろさないという話は出ました」

検「それで、どういう話になったのですか」
証「マスクを理由に下ろすのは、という話になりました」

検「離陸前に降機を求めるときって、会社の約款として
  どんなときがあるのですか」
証「周りのお客様に対して、健康被害を及ぼしたり、
  機内の秩序を乱す可能性がある場合
です」

恐らくその約款を見ながら
検「運送拒否の条項というのがありますが、今回該当するのは」
証「Bの他のお客様に不快感を与える、迷惑を及ぼす行為、
  そしてCの他のお客様の安全または被害を与える恐れがある場合」

検「出発の経緯を教えてもらっていいですか」
証「会社の指示です。席移動で落ち着いたらよいとのことだったので」

ようやく離陸です。
今の「ようやく」はCAさんでなく、記事を書いている僕の気持ちです。

前回Bの証言があった上での補完的な質問なので、質問に無駄がなく、ここまでノートの記載内容がほぼ記事に反映されている状態です。

検「離陸して、ベルト着用サインが消えるまで何か問題はありましたか」
証「特にありません」

検「その後、どうしましたか」
証「後方ギャレーでCAで打ち合わせをすることに」

検「すると何か見えましたか」
証「Bが後方に来る途中、21列目あたりで立ち止まっていました」

検「何をしていましたか」
証「はっきり声は聞こえませんでしたが、被告人と話しているようでした」

検「周囲の乗客はいかがでしたか」
証「落ち着かない様子だったので、私も向かうことにしました」

検「行ってどうしました」
証「周りにお客様もいらっしゃるので、後ろで聞きましょうと言いました」

検「後方ギャレーで被告人と話したのBさんだけ?」
証「3人です」

検「3人なのはなぜ」
証「トラブルになったときの証人になろうと思い」

検「Bさんの指示ですか」
証「私の判断です」

検「マニュアルには何か書いてあるのですか」
証「安全阻害行為の対応は複数であたると記載があります」

検「後方ギャレーで被告人はなんと言っていましたか」
証「先ほどの2人に謝罪させると言っていたが、
  誰も来ない
じゃないか、と言っていました」

検「謝罪をさせると言ったのですか」
証「言っていません。どのCAが言いましたかと
  聞いても答えませんでした


検「そのほか、被告人にはなにか言いましたか」
証「今、2人を連れてきましょうか?と提案しました」

検「そうしたら」
証「そんなことしたら警察沙汰になりますよ、と言ってきました」

検「被告人が言う、謝らせろとは誰のことだと思いますか」
証「21Eだと思います」

検「どうしてですか」
証「「やかましいんじゃ、ボケ」と言ったことにと仰っていたので。
  でも、実際は「ボケ」とまでは言ってないので、
  話が大きくなっているなと」

被告人は21Eに怒っていたのですね。「ボケ」の有無については、記憶の誤差の範囲なので、わざわざツッコミませんが、
後日の被告人質問で、この謝らせると言ったかみたいな話は、被告人として主張するのもかもしれませんね。

言ってないのか、誰かが言ったのをひた隠しにしているのか、あまり連続してまくし立てるので「あー、はいはい」的なニュアンスで流そうとした反応を了承と受け取ってしまったのか、いろいろな可能性はありそうです。

検「被告人との距離はどれくらいでしたか」
証「50cmくらいだと思います」

検「気になることなどありましたか」
証「飛沫が見えたので、不快なのと恐いと思いました」

検「声のボリュームはいかがでしたか」
証「大きかったです」

検「被告人はあなたたちの話を聞き入れる様子はありましたか」
証「特に聞き入れる様子はなかったです」

検「この対応が業務に影響している点については、
  被告人になにか告げましたか」
証「この時点では言っていなかったと思います」

検「Bはどうしましたか」
証「機長に報告すると警告しました」

検「すると被告人はどうしました」
証「両手を上げて、さっきの抗議は取り下げますと言いました」

検「それに対しBは」
証「もうこれ以上しませんね?と確認しました」

検「被告人はどうしました」
証「はい、抗議は取り下げます、と言って席に戻っていきました」

検「その後Bはどうしましたか」
証「前へ戻っていきました」

検「Bは前へ戻れたのですか」
証「21列目で立ち止まってやり取りをしていました

検「それでどうしました」
証「さっきと同じシチュエーションなので、また行って、
  声が大きいので後ろへとお連れしました」

検「何と言っていましたか」
証「全く同じ内容でした」

検「謝罪させられないのかと言ってたのですか」
証「はい、何度も」

もう、早く被告人の言い分を聞きたい!
証人の気持ちはもうわかります。CAとして、やっと元の業務に戻れると、ほっと一息ついたところでしょう。そこで、ギャレーを出たら、さっきと全く同じ行動。「も~、なんなの( ;∀;)」ってところでしょう。

検「Bはどうしましたか」
証「その時、機長に連絡していました」

検「どんな指示が降りていましたか」
証「これ以上騒ぐなら、千歳が近いので下りていただきますと」

検「被告人はなんと言っていましたか」
証「それって職権乱用ですよねと言っていました」

検「業務の影響の話をしましたか」
証「僕の何が悪いというのですか、というので、
  業務を妨げており、大きい声で周りのお客様を不安にさせています
  伝えました」

検「被告人は?」
証「質問するだけで何が悪いんですかと答えたので、
  騒いでるので降りるんですね?と聞きました」

検「それに対して被告人は?」
証「降りませんと言いました」

検「乱気流でベルトサインが着くまでの22分間、業務はできましたか」
証「できませんでした」

検「具体的にはどういった業務があるのでしょう」
証「機内監視、お客様へのサービス。トイレを使ったあとに喫煙した
  跡がないかのチェック、体調不良者がいないか、
  全てができませんでした

検「乱気流のベルトサインが消えてから、あなたはどうしましたか」
証「点灯中に体調不良者がいないかチェックをしていましたら、
  被告人がシートベルトをしていなかったので、着用をお願いしました」

検「ベルトサインは消えたのにお願いしたのですか」
証「弊社では、安全性のため着席時もお願いしていました」

検「それに対して被告人は」
証「Bが言っているのは職権乱用ですよね、と言ってきました」

検「あなたはどうしました」
証「職権乱用ではありませんと言い、前へお連れしました」

検「前へ連れて行ったのは何故ですか」
証「前方のお客様にも機内の状況をお伝えした方がいいと思い
 (もう少し何か言ってたが不明)」

検「Bと被告人の距離は」
証「20-30cmだったと思います」

検「気になることはありましたか」
証「飛沫が飛んでいるのが見えて不快でした」

検「声を落とすように言いましたか」
証「耳が悪いので大きくなるんです、と言っていました」

検「被告人は耳が悪いと感じましたか」
証「マスクをしているCAの声も聞こえていたのでそうは思いませんでした」

検「その後、被告人はどうしました」
証「声が大きいのが迷惑ならペンとメモをくださいと言ったので
  渡しました」

検「その後、被告人は席に戻りましたか」
証「戻りませんでした。抗議を続けていました」

検「その時Bは機長に報告していましたか」
証「していました」


検察側申請 証人尋問・搭乗していたCA(検察官より 2/2)-警告書、命令書発令の流れ-

検「証人は、安全阻害行為についてどういう機会に学ばれてきましたか」
証「入社前訓練、年に一度の訓練、日ごろの確認などです」

検「今回の件は安全阻害行為にあたると思いますか
証「あたると思います」

検「具体的には」
証「カテゴリ2の職務を妨害、保安に影響を与える。
  カテゴリ3の機内の秩序を乱す行為
です」

検「機長からはどのような指示がありましたか」
証「命令書、警告書の準備をするようにと」

検「被告人はその場を見ていたのですか」
証「そのような書類は必要ありませんと言っていました」

まだおったんか、そこに。
本人の目の前で、警告を通知する書面を作成する絵面って相当緊急性が高い事態と捉えていたというのが伝わります。

検「そのあと被告人は戻りましたか」
証「戻りました」

検「席に戻った被告人は何をしていましたか」
証「はっきりとはわかりませんが、メモをしていたのかなと」

検「テーブルは出ていましたか
証「はっきりとはわかりませんが、メモをしていたのなら
  出ていたのかなと


検「Bはどうしましたか」
証「警告書を読みました」

検「被告人はどうしましたか」
証「だから僕の何が悪いんですかと、ペンでぺしぺしと紙を叩きました」

検「Bは命令書をどうしました」
証「読み上げました

命令書を見せながら
検「どこを読み上げましたか」
証「以下の行為につき、航空法~(書き切れず)~50万円の…までです」

一応ここで補足していますと、具体的にどの行動がとはこの命令書の読み上げでは触れていないようです。前回、弁護人もやたら気にしていた部分ですし。

もう一つ言うと、前回の公判でBは命令書は読まなかったと証言したように思えますが、今回の証人は読んだと言っていました。その後の弁護人側の質問でも突っ込んではいなかったので、その効力については争うポイントではないのかもしれません。

検「Bはその命令書をどうしましたか」
証「手渡しました」

検「それで被告人はどうしましたか」
証「必要ないと拒否して押し返すようにしてきました」

検「それでどうしましたか」
証「渡す必要があるので、膝の上に置きました」

検「それをどうしましたか」
証「くしゃくしゃに丸めて、隣の21Bの席に投げました

検「それでどうしました」
証「Bが拾って、また被告人に渡しましたら、
  今度は通路に投げたので、私とBで拾いました」

検「Bは拾ったものをどうしました」
証「シートポケットに入れようとしました」

検「どちらの手ですか」
証「左手です」

検「右手はどうしていましたか」
証「ポケットを開けようとしていました」

検「被告人はどうしましたか」
証「入れるのを阻止しようと手を掴みました」

検「どの手のどのあたりを掴んだのですか」
証「左の手首の少し下あたりです」

検「被告人の手はどちらでしたか」
証「右手だとは思うが、はっきりとはわかりません」

検「被告人はどういう動きをしていましたか」
証「入れる行為を阻止しようとしていました。
  ケガをさせようというのには見えなかった」

検「引っ張るような動きでしたか」
証「手を上にするように引っ張りました」

検「被告人がBの腕を掴んだとき、証人はBの体は見えましたか
証「手首より下はシートポケットに入っていたので見えませんでした」

検「被告人が掴んだ体の部位は見えていましたか」
証「それは見えていました

こんな位置関係でしょうか。細かくはともかくポケットに入れる手は見えなくて掴まれた手首より肘近くが見えるというのはこういうことなのかなと。

検「事件のあと、検察官と話したときのことは覚えていますか」
証「はっきりとは覚えていませんが」

検「どこかに当たったとは言いませんでしたか
証「アームレストに当たったと」

検「今、当たったという記憶はありますか」
証「はっきりとは・・・」

検「当たったと書かれた調書に・・・」

すると、ここで本日2回目です。弁護人が立ち上がって

弁「調書に書かれたことをもとに誘導しようとしています

裁「検察官ご意見は」
弁「記憶喚起のための質問です」

~裁判官で協議~

裁「異議を棄却します」

今回も棄却です。もちろん異議が採用されることもありますが、誘導か否かというのは、ちょっと僕には判断基準がわかりません。
「アームレ・・・?」とか聞いたらダメなのは僕でもわかりますが。

検「今、その記憶はいかがでしょうか」
証「動きが早かったので、今は曖昧です」

検「Bは何か言っていましたか」
証「今のは暴力です。確認しました?と聞いてきましたので、
  確認しましたと言いました」

検「そのときの被告人はどんな様子でしたか」
証「覚えていません」

検「命令書はシートポケットへ収納しましたか」
証「収納しました」

検「警告書、命令書の順番でしたか
証「私の記憶では

検「Bは機長に報告しましたか」
証「後方で一連の流れを報告していました」

検「一連とは?」
証「警告書、命令書の対応をして暴行を受けたことです」

検「その後どうなりましたか」
証「すぐに着陸態勢に入りました」

皆さんも大まかな流れのイメージがついてきたのではないでしょうか。でも、傍聴人としては次に弁護人が質問をするので、どういったことを言ってたかそれなりに覚えておいたり、これ突っ込まれるんじゃね?とヒヤヒヤするものなのです。

とりあえず、もう少しだけ検察官のターンが続きます。

検「緊急着陸でベルトサインはついたとき被告人は?」
証「テーブルを戻さずメモを書いていました

検「テーブルは出したままでいいのですか」
証「このときは収納していないといけません

検「戻してくださいと言いましたか」
証「言いましたが戻してくれませんでした」

検「少し話を戻しますが、被告人がBの腕を掴んだときは
  テーブルは出ていましたか」
証「そのときは出ていなかったと思う」

検「被告人が戻したのでしょうか」
証「わかりませんが、私たちの方では勝手には戻さないので」

検「新潟空港に緊急着陸し、被告人が降機して、周りの反応は
  いかがでしたか」
証「拍手が起きました

検「Bは身体の異変を何か言っていましたか」
証「そのときは何も言っていなかったが、その後に
 「左手のあたりがちょっと痛いんだよねぇ」
と言っていました」

検「証人には事件後、精神状態はいかがでしたか」
証「1週間くらいは夢に出てきました

検「業務での変化は」
証「故意にマスクをしない、模倣しているような人がいました。
  声かけが恐くなりました」

検「被告人の処罰について希望などはありますか」
証「特に大きさとかはわかりませんが・・・、私や会社や、同僚・・・」

急に言葉に詰まる証人。そして急に、声が震え出す証人。

怒り、恐怖の感情で証言してきたものの、ふと終わりが見えたところで、どうして自分がこんな目に?という思いになったのかもしれません。

検「言える範囲で構わないですからね」
証「(声を震わせながら)家族など、私の一生に
  二度と関わらないでほしいです」

検「被告人の行為は許せますか」
証「許せません」

ここでようやく、検察官からの尋問が終了。

このまま弁護人からの尋問を予定していましたが、最後に声を震わせてしまったこともあり、裁判長が休憩を挟むかを確認。しかし、問題ないとのことでそのまま続行。

検察側申請 証人尋問・搭乗していたCA(弁護人より 1/2)-被告人の気持ちが知りたくなる現地の状況-

弁「本件の後、CAで報告書を出しましたね」
証「はい」

弁「筆跡を見たら自分のものかわかりますか」
証「はい」

CA作成の報告書を1枚ずつめくりながら
弁「1枚目は」
証「Bさんです」

弁「2枚目は」

という感じで、前回同様進みました。全部で8枚だか、10枚だか、欄外に書かれた注釈だ、付箋だの確認もします。二回連続で聞くということは、何か狙っているのがあるのかもしれません。
とりあえずは、4枚目(欄外の注釈は違う)~8枚目(8枚目の付箋は何人か)が証人の筆跡とのこと。

弁「メモ作成の取りまとめは誰がしたのですか」
証「会社で4人で行いました」

弁「それぞれがメモを作成して取りまとめ、
  内容を確認して会社へ報告したと」
証「はい」

弁「今回マスク着用についてが問題だとは思うのですが
  マスクをつけないことについて社内の方針はあったのですか」
証「コロナになってすぐだったので、マニュアルなどは
  ありませんでした
。ただ、全体の快適性のため、
  お願いをするということでした」

いわゆる反対尋問というのは、どういう手でひっくり返そうと考えているのか気にするので、注意力がこちらも過敏になります。

例えば最後の質問の「今回マスク着用についてが問題だとは思うのですが」という導入部分はいらないと思うのですが、ここを無視してサクサク答えてしまうと、「では、あなたがマスク着用が問題と思っていたと?」と揚げ足を取られるかもしれません。

裁判傍聴はハマればハマるほど、こういった点で疑心暗鬼になったりもするのです。

弁「通路側のアームレストが上がったのを見ましたか」
証「私は見ていません」

弁「座っている席のをCAが断りなしに上げることはありますか」
証「いったんは声かけすると思う」

弁「承諾を受けてからするということですね」
証「承諾というか、、、そうですね」

ここは証人、「承諾」に即座にはいと言わなかったのは頑張りました。
というのも、21Aが移動時にBはアームレストを上げています。声をかけてないことはないと思いますが、今までのやり取りを鑑み、承諾を得れたとは思えません。なので承諾を得ないと上げないという質問に即座に乗らなかったのは味方を守ったのでは。

というか、こっちの方が誘導尋問なのでは?と思わなくもない。

弁「元の地上でのトラブルは見ていますか」
証「21Aの暴行の件は見ていません。やかましいんじゃ
  というのは見ました」

弁「そのとき、周りが爆笑したということがあったのではないですか」
証「21Eとのやりとりではあった

弁「周りは被告人に対しても笑っていたのでは?」
証「みんなというのではないです。恐がる人もいましたし。
  あまりにも会話になっていなかったので」

弁「周囲が失笑するというのもあったのでは」
証「座席移動の際はあったと思う」

被告人の細かい心情は、被告人質問で聞かないとわかりませんが、当然いい気分ではないでしょうね。その怒りが21Eなのか、収拾できなかったとしてCAに向いたのかはわかりませんが。

弁「被告人からはコールでなく、近くにいるときの呼びかけですよね」
証「はい」

弁「後方ギャレーへと提案したのはCAですよね」
証「はい」

弁「それには素直に従いましたよね」
証「はい」

弁「後方ギャレーに行く際、21Aや21Eとトラブルになりましたか」
証「恐らく、どこに行ったとかはわかっていなかったんだと思います」

弁「結論として、なかったということですよね
証「はい」

いいですよね、この結論だけ引き出せればいい感じ。味方だと頼もしく見えるし、敵対してたら嫌らしく見えますし。

弁「後方ギャレーから、1回は被告人は席に戻りましたよね」
証「はい」

弁「そのあと、Bとの打ち合わせはどんな話を」
証「他のお客様もいるし、できるだけスルーしようという話に」

弁「乱気流後、また声をかけられて、前方にと言ったら来ましたね」
証「はい」

弁「安全阻害行為についてマニュアルは機内で見ましたか
証「常に持っています

弁「今回の対応時に見たかどうか聞いているんです
証「開いては見ていません。頭に入っていますので」

皆さんも、なんとなく弁護人が何を言いたいかわかってきたのではないですか。

さて、ここから少し、法廷内の証拠の読み上げなどが続くので少し不明瞭になります。
前回、Bが知らないといったガイドラインについての質問のようです。

実は前回の記事のあと、とある専門の方から、あそこでのガイドラインってなんのことですか?と質問を受けました。そのときはわからなかったので、今回こそはと思ったのですが、今回もガイドラインとしか聞き取れませんでした、ごめんなさい(ToT)

ガイドラインを見せて
弁「これを見たことは」
証「はっきりとは覚えていません」

弁「この中で、安全阻害行為と機内迷惑行為は違うとありますが、
  その認識はありますか」
証「すみません、はっきりとわかりません」

弁「13Pのポイントというところには、いわゆる機内迷惑行為
  というのは2004年の法改正により運行の~(不明)~との
  ことですが、その認識は」
証「あります」

弁「ここには、~(不明)~と書いてあり、
  業務の妨害「かつ」人の生命身体に支障をきたす恐れのある場合と、
 「かつ」とある認識は持っていますか」
証「はい」

弁「即座に対応できないものが該当し、いわゆる一時的なものでは
  あたらない
とありますが、それは認識していますか」
証「はい」

弁「緊急着陸は警告書を出し、反復するのが前提なのではないですか」
証「それは機長の判断なのでわかりかねます」

ピーチのマニュアルを見せながら
弁「25P、禁止命令が出て、行為の継続があって、
  緊急着陸
と書いてあるのが見えますか」
証「はい」

弁「新千歳近くの上空では警告書も出ていない状況ですよね」
証「2回目の後方ギャレーで、機長に報告をしているところ」

前回も書いたけど、警告書、命令書についてもう少し詳しく知りたいと思うよなぁ。優劣であったり、強制力や効力の違いとかも。そうでないと、弁護人の指摘がまともなのか、どうかがわからないのです。

特に空での一歩間違えたら命に係わる話なので、実際の文例は知りませんが例外的な対処についても言及がないとも思えないというのが正直なところ。


検察側申請 証人尋問・搭乗していたCA(弁護人より 2/2)-警告書、命令書発令の流れ-

弁「被告人が、ギャレーに21Aか21Eを連れてくる提案をして、
  警察沙汰になると言ったのは、直接もめごとになるという
  意味ではないか」
証「私たちは解決できないので」

弁「言いたい趣旨はそうなのでは」
証「趣旨はそうだと思います」

弁「謝罪を繰り返し求めたというが、地上の時点でマスクの着用で
  降機を求められたことについては言ってなかったか」
証「それはないです」

弁「被告人が機内で書いていた質問書は見ましたか?」
証「はい」

弁「①、②、③とあります。①は謝罪の促しがあったかと書かれており、
  ②は長い文章がここに書かれていますが、
  機内でCAに言っていませんでしたか?(何のことかは不明)」
証「離陸前までで、離陸後は言っていない」

弁「被告人からは約款という言葉は出ましたか」
証「覚えていません」

弁「マスクの根拠が話題になりましたか」
証「非科学的とは言われた」

弁「③の新千歳で降ろすというのは、職権乱用だと
  特に問題視していた
のでは」
証「はい」

最初は、マスク着用のお願いでストレスをため、それを周りに煽られ、そして「自身の解釈では」職権乱用で降機までさせられそうになっていた。これらは不備ではないのかと主張軸になってくるのかな。

不備があるから情状を酌量して欲しいというのか、だから航空法や威力業務妨害にはあたらず無罪というのか、どっちの主張なのか気になります。普通の心情として、途中までは理解もできるけど、航空法という中でどう判断されるのかは、一般的な視点とは違うと思いますし。

弁「大きな声はダメだというから、メモとペンを貸して欲しい
  という話になったのでは」
証「そうです」

弁「何を問題視しているか書きたいと言ったのでは」
証「そうです」

弁「ペンを持って帰ってから、静かになったのでは」
証「渡した直後は大きな声で言い続けていました」

弁「戻ってからは静かでは?」
証「そうです」

弁「席で質問書を書いていると思わなかったのですか」
証「何を書いているかまではわかりません」

弁「何かはわからないが書いてはいた?」
証「はい」

弁「何が迷惑行為にあたるのか質問してきた」
証「はい」

弁「命令書の具体的な行為の欄は空欄になっているとBと話しましたか」
証「話しましたが、妨害行為の認識が一致していましたので」

弁「命令書は読み上げましたか」
証「読み上げました」

弁「命令書は読み上げたら効力が発揮されるのですか」
証「手渡しまでしてです」

弁「仮に受け取らなくても、効力が発揮すると聞いたことなどは
  ありませんか」
証「その認識は私にはありません」

受け取りについては認識に不備がないか揺さぶってますが、命令書の空欄についてはそんな揺さぶってないので、これはこれで問題ないってことなのかな。まぁ仮に自分が受け取る立場になったら、なにか命令されるのに、空欄箇所があったら、「ここ書いてないやないか!」..と思わなくもないかも。

弁「Bがシートに命令書を入れたときの位置ですが、
  調書では立っていたと言っていないですか」
証「動きは常にありましたので」

弁「被告人の右斜め前にいたと」
証「はい」

調書の現場再現の写真を見せながら
弁「この写真は覚えていますか」
証「実際は、Bともっと近かったですが」

弁「この位置だと、シートポケットの様子は見えないのでは」
証「中腰なので見えました」

弁「シートの向こうは見えなかったのでは」
証「むしろちゃんとよく見えていた」

弁「着陸後、被告人の降機に立ち会いましたか」
証「はい」

弁「この場面、動画が撮られているのは見ましたか」
証「SNSで見ました」

弁「証人が暴行を見たか見ていないかという話をしましたか」
証「被告人がしていないと言うので、私は見たと言いました」

弁「その場面で手首を掴んだとは言っていないのでは」
証「払いのけたという話はしました」

弁「被告人は手首を掴んだことを否定していたのでは」
証「そういうことはなかったと言っていました」


ここで、新たに「払いのけた」という言葉が出てきました。

当然のことながら、私に質問権限がないので、この「払いのけた」というのが、腕を掴む行為にプラスして行われた行為なのか、腕を掴む行為は無くて払いのけたということなのか、後の答弁を聞いてもわからないのです。

少なくとも「実際、掴んではいないのではないですか?」という質問にはいたっていないので、この場で言ったか言ってないかだけの話だとは思うのですが。ここは私の理解不足です。

反訳書(会話データの文字起こし)を見せる
弁「ここに以下の流れがあります。

  被疑者「いや、掴んでない」 客「掴んでる」
  被疑者「掴んでません」    CA「手を叩く行為がありました」
  被疑者「叩いていません」   CA「叩いていません」
  被疑者「叩いていない」    CA「確認しました」

  このCAというのはあなたですか」
証「確認しましたというのは私だが、残りはわかりません」

弁「CAによる報告書の5枚目の下に、手を叩く行為があり、
  その後もペンで警告書を叩く行為
があったと書いています」
証「はい」

弁「警告書と命令書どちらが先なのですか」
証「私の記憶では警告書ですが、CA全体の中では逆という
  意見もありました」

弁「検察官調書では、まず命令書があり、次にBが警告書を
  読み上げたとあります。これは証人の中では警告書、
  命令書の順だったが、CAの話の中でそうかもと
  思ったということですか」
証「そうです」

ちょっとややこしくなってきた気はしますが、この文字起こしについても、降機直後でパニック状態でいろんな言葉が飛び交う中なので、叩いたか掴んだかでなく、暴力行為の有無の判断くらいにしか使えないのかなと思います。

個人的な思いでは、確かに不完全な部分はあるのかなとは認めるけど、それを拡大解釈するのにも限界があるかなと。人の記憶なんてそんなものですし。

最後に、検察官と弁護人がまた少しずつ質問をします。

検察官から
検「警告書、命令書を言いに行くとき、被告人は静かだったと
  思いますが、命令を停止するつもりはなかったですか」
証「反復された行為なので、先のことを考えても出すべきでした」

検「先ほどの弁護人とも見た、再現時の写真ですけど、
  Bさんともっと近かったというのは、もっと機首よりでってこと?
  もっとBさんに近いということ?」

弁「これは不相当な誘導です。検察官はできるだけ目線を下げて、
  このとき現場を見えるようにしたかったという意図が見えます」

裁「異議を棄却します」

証「通路に投げられた命令書を拾おうとした中なので、
  もっと二人は近い位置でした」


弁護人から質問
弁「その再現した写真ですが、差し込もうとした時の写真ですよね」

証「はい」

弁「あなた立っていませんか」
証「立ち上がった瞬間を撮られた写真ですので」

これにて、ようやく午前の部が終了。

えー!やっと午前かよと読者の方も思ったかと思いますが、午後はそんな長くないのでもう少しお付き合いくださいね。

証人の方は、途中声を震わせることもありましたが、最後までしっかり証言をしていただいたと思います。曖昧な部分はそのように表現していたし、必要以上に被告人を落とさない意思も感じられ、あったことを証人視点で語ってくれたのかなと思いました。


検察側申請 証人尋問・オペレーションセンター運行管理者(以下UC)(検察官より)

午後は遮蔽措置が取られ、30~40代の若い男性が入ってきました。前回の整形外科の先生は被告人の方にだけ遮蔽措置がありましたが、今回はそれもありません。

検「経歴や関連の資格などは」
証「2006年に入社し、2009年に航空局が発行している
  資格を取得しています」

検「UCの権限は」
証「機長と承認作業は権限が同等にあります

検「安全阻害について学ばれる機会は」
証「入社時、資格取得時、あと定期的に学んでおります」

検「メッセージについて、航空機側から発信するのはどなたですか」
証「機長ですが、機長が操縦桿を握っているときは副操縦士です」

検「地上からの発信は」
証「私か、私の依頼で打ってもらいます」

検「特に問題ないときのやりとりはどんなものがあるのですか」
証「航空情報、天気などそのほか諸々です」

ここから、事件当日、証人と機長がやり取りしたメッセージをもとに質問が行われます。応対内容が紙にまとめられているらしいのですが、こちらは分からないので不明な点が多いです。

①~㉑と書かれた、恐らくメッセージごとにナンバリングされたものを、英語での実際のメッセージと日本語の訳文に相違がないことをいずれも確認

検「⑤を見て、証人は何が起きていると思いましたか」
証「臨時着陸の検討とのことなので、カテゴリ2に
  該当することが起きている
のかと」

検「⑥の機長からの「インテーション」をもらいたいというのは」
証「会社方針のことです」

検「どういうやりとりですか」
証「機長の判断に対して、会社として了承をしてほしいということです」

検「⑦の禁止命令について送ったのはなぜか」
証「安全阻害行為が行われて、別の空港に降りるのなら、
  命令書を出しているかを確認する必要があった
ので」

検「⑧の機長からの「ワーニングレター」というのは」
証「警告書のことです」

検「⑫で警告書を出すように言っているのは」
証「当該者に何も情報のない中、緊急着陸はできないので」

検「⑭、⑮を見て、何があったと思いましたか」
証「操縦室周りで叫んでいるということで、操縦室でも
  脅威を感じている
のだと思った」

検「警告書と命令書とどちらかが使われる案件?」
証「これは警告書案件だと思いました」

検「機長は警告書と命令書と区別していると思いますか」
証「していると思います。ここに「加えて」とありますので」

検「オペレーションセンターとして、命令書、警告書の
  発行についての判断は」
証「緊急着陸に向け適切な判断」

検「このタイミングというのは」
証「安全阻害行為を反復していたので問題ありません」

検「⑯はあなたが送ったものですか」
証「これは別の人間が、私の書いた内容でわからないことが
  あったらと送ったものです」

検「⑰の意味は」
証「メッセージに仙台と書かれていたので、仙台空港に連絡した」

検「⑱の意味は」
証「仙台というのを了承した。仙台の現在を送った」

検「⑲⑳はどういう趣旨?」
証「新潟付近で高度が落ちているのを確認したので、
  着陸は新潟で間違いないか聞いた」

検「⑳-㉑でやり取りがないのは」
証「航空機で一万フィート以下は特に注意する必要があるので、
  メッセージ送信は控えている」


実際の現場のやり取り、雰囲気が全くわからないので、この辺りは特に難しかったです。
情けないですが、やや曖昧な内容ということでご理解いただけたら幸いです。


検察側申請 証人尋問・オペレーションセンター運行管理者(以下UC)(弁護人より)

弁「離陸は証人の承認が必要なのですか」
証「離陸に限らずです」

弁「緊急着陸は」
証「これは承認はいりません。機長判断です。」

弁「今回、この文字の通信以外はしていないですね」
証「はい、していません」

前回、弁護人は機長がネイティブかどうか気にしていたので、その辺りのコミュ能力をつつくのかなと予想。やっぱ連続してみると、意図がわかるというか、弁護人などが全体を見越してどう伏線を張ってるかがわかっていいですね。

弁「④で狂ったように叫んでるというのを見て、どう思いましたか」
証「カテゴリ3の案件なのかなと思いました」

弁「これについての具体的な内容は把握していませんね」
証「はい」

弁「⑤での機長からの「if continue」というのはこの状況が続くなら
  緊急着陸するという意味ですか」
証「はい」

弁「⑩で警告書をまだ発していないので、
  カテゴリ2になっていないと思ったのですか」
証「それに近い状態だとは思っていました」

弁「「狂っている」や「if continue」という表現から考えたと」
証「はい」

弁「叫んでいるのを業務の妨害と理解したと」
証「そうです」

弁「具体的な妨害の内容は聞いていないですよね」
証「そうです」

弁「⑭で、CAに対して攻撃であると書いていますが、
  何をしたかはわかっていないですか
証「はい」

弁「どれくらい妨害行為がなされたか、継続されたかは
  確認していませんね」
証「確認はしていないが、時系列で見て確認をしています」

弁「安全阻害は一時的ではいけないというのは」
証「一時的なものが継続しているので間違いない」

弁「機長と直接会ったことはありますか」
証「あります」

弁「この機長からの表現の中で「no happy」とありますが、
  「unhappy」というのがネイティブではないですか

証「あまりネイティブでは使わない表現だとは思う」

弁護側としては、具体的な内容を正しく把握していないのに緊急着陸ってどうなのっていう主張なんだと思います。素人目にはその指摘に頷ける部分もあるんですけど、結局その把握をどこまでしていないといけないのかという証明(言質を取るなど)をしてくれないと、一般論で終わってしまう気がするんです。「だって、普通はそう思いませんか?」止まりというか。

とはいえ、弁護側の主張したいことは十分に感じ取ることができたとは思います。


最後にお一人の証人尋問で終了となります。
より端的なので、皆さんも僕ももうひと踏ん張りですよ!


検察側申請 証人尋問・オペレーション統括本部長(検察官より)

最後に50代くらいの体がかっちりした男性が出廷。航空会社勤務と聞くだけで、なんかピシッとした気がするのは本人のオーラなのか、僕のただ職としての憧れなのか。

検「この事件について本社を代表して対応しているということで
  間違いないですか」
証「はい、そうです」

検「代表取締から当件の対応を委任されていると」
証「はい」

検「告訴等の対応をしたのも証人ですね」
証「はい」

検「今回の件で、金銭的な損害は」
証「燃料費19万円、新潟空港の人件費が10万円程度です」

検「その内訳は」
証「元々、日本海側を通るルートでしたので、大きくはかからず、
  それに補助輪の電力などにかかる費用です。
  人件費は誘導員や係員です」

単純に金額だけ見たら、これくらい?思わなくもないです。でも、その緊急対応にかかった間接的な費用、乗客のケアなどを考えたら、どれほどのものになるのかは想像もできません。

検「金銭以外の被害は」
証「弊社のBが暴行を受けました。また、被告人がツイッターなどで
  航空業界に対して誹謗中傷などを行っており、大変憤っております


検「今回の事件について本部長という立場からどのような思いですか」
証「安全にお客様をお届けする使命がある中で、
  それができなかったのは忸怩たる思いです」

検「裁判所に伝えたいことなどありますか」

証「航空インフラというのは地上と違い、
  すぐ避難することなどはできません。
  2001年のアメリカテロ以降、未然の防止、発生時は
  大きくなる前にすぐに摘み取るということを民間だけでなく、
  官も一体としてやってきたことであります。
安全阻害行為を定め、
  何かあれば厳しい罰則としてきました。
  是非、裁判所におかれましては厳しい判断をしてほしいと思います」

検「裁判所に期待することなどがあれば」
証「アメリカのテロ以降、模倣犯が発生いたしました。
  その後、機内で爆弾を発見し、緊急着陸によって防いだという事案も
  ございます。判決次第で、模倣がされる恐れを危惧しております。
  航空の安全が困難になってしまいます

検「被告人から謝罪などはありましたか」
証「一切ありません」

日本の交通インフラはホント優秀だと思います。でも、それらをただ「優秀」で片づけるのでなく、この安全についての意識を第一に持っていらっしゃる方々によって支えられているというのを強く認識しなければいけないのだと思います。

今回の件だけとリンクするつもりはないですが、便利なのは当たり前、でもサービスはしっかりしろ、ミスがあったらすぐ叩くというサイクルにいつから日本はなってしまったのでしょうか。奉仕だけして、感謝もされず、ミスだけしないよう委縮する社会で、若い人が世に出たがらないのもそうかなと思います。

これだけ「思いやり」だ、「個性の尊重」だ言われてますけど、サービス業への風当たりが強くないですか。こういった方々へ、普段から思いやりを持って、お互いにとっていいサービスとなるよう切磋琢磨するものじゃないんですかね。


私見が増えちゃいました。すみません。

最後に弁護人からです。


検察側申請 証人尋問・オペレーション統括本部長(弁護人より)

弁「警察から電話で聴取を受けた際に、
  被害額は200万としていましたよね」
証「はい」

弁「その内訳は」
証「燃料費150万、人件費50万です」

弁「人件費が50万から10万に減ったのは」
証「CAについては給料が付きで決まってるので、
  最低算出額から・・・(意図不明)」

弁「今回の件、保険や労災は発生していますか」
証「起きていません」

弁「過失相殺は考慮していません」
証「はい」

弁「再発防止としてどのようなことを考えられていますか」
証「航空インフラの安全を守るものとして、
  毅然とした態度で挑む
ということです」

弁「命令書の交付をする際は、刺激をしないようになどとはしていないと」
証「今回の対応で問題はありません」

ときに企業として毅然とした態度をとることは大事だなと僕は思います。安全という大義がある中なので、証人の言う通り、陸上のインフラとはまた違うのでしょうね。

その一方で、命令書の交付で被告人を刺激をしたからだとチクリと言いたい、弁護人もまた職務をまっとうしているなぁと感心します。ただ、法に携わってる方々も、法に則ってるのことを背景に、関係者を刺激しちゃってることもあると思うので、そういった方々が省みるきっかけになればいいなと思ったり。


最後に裁判長が一つだけ質問をします。


裁「先ほど仰った、被告人の誹謗中傷というのは

証「20年〇月〇日(メモできず)に、
  航空機の利用が大衆のものになったことにより、
  客室乗務員の質は大きく低下しました。
~(その後メモ取れず)
  とツイッターに投稿しています」

冒頭の注意書きの通り、裁判以外で発せられたこと以外のことは含めたくないので、彼が普段どんなツイートしているかなどは考慮しません。

でも、もしかしたら今後の公判ではツイッターの話題になるかもしれませんね。そうしたら、私も取り上げざるを得なくなりますね。あーあ、被告人やっちゃったって感じです。


次回は弁護側による主張と、被告人質問が一部行われるようです。

多くの証人尋問を踏まえ、弁護人、検察官とどうロジックを組み立てていくのかこれからも楽しみです。



最後に、前回同様のお願いです。

もし今回の記事を読んで、なにか参考になった、面白かった、今後も頑張ってと仰っていただける場合、「レッドブル」を僕に奢ってください。これで、今後の取材の活力とさせていただきます。

もちろん、この有料は全く強制するつもりも、そもそも強制する作りではありません。

もしよければ、是非ともお願い申し上げます。



というわけで、二回連続で超長文のご閲覧ありがとうございました。

当たり前のことですが、この記事の全責任は私に帰属します。


大人の人生交差点クラブ 普通

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