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台風は近づいていた 《Can you celebrate?な夜》第3話

 朝9時半頃に、管理会社の担当の営業所に電話番号に電話をした。
すると、音声アナウンスが始まった。よくコールセンターに電話を
する時にあるような、この用件の場合は1のボタンを、また別の用件
の場合は2のボタンを、というものだ。引っ越した頃は、電話をすると
直接営業所につながって、すぐに担当者と話が出来たのだが。
 どのボタンを押したのかは忘れたが、やがて受付の女性の応答が
あった。
「以前は営業所に直接電話がつながりましたが。」
「システムが変わって、一旦コールセンターに電話がつながり、
 そこで対応できるものに対してはその場で処理し、出来ないものを
 担当営業所に割り振ることになりました。」
「隣室からの深夜の騒音の件ですが。」
「何時頃でしょうか。」
 (22、23時くらいの時間だったら一々文句言わないでよ。)
「書き込みをした時間の前後です。」
「そういえば何か連絡が入っていましたね。確認いたします。・・・」
「・・・あれっ。」
 (強気で出ちゃったかな。)
 
 今回は初回(初犯)ということで、相手に直接注意するのではなく、
全戸対象に『こういう申し出がありましたので、皆さん注意してくだ
さい。』という、全体注意の形で張り紙等をするとのことだった。
(まあそんなのって、すぐに収まるって感じで)
 こちらとしては、とにかく深夜にうるさくなければ良いので、それ
で収まれば問題はない。その内容で了承した。

 その日の夕方出先から帰ってくると、玄関の掲示板に張り紙が増え
ていた。ポストの中を確認すると、郵便物とともに、張り紙と同じ
注意文書が入っていた。
 部屋の中に入ってから内容を確認してみた。
『一般に午後10時から午前6時までは休息の時間とされていて・・・』
これは私が言ったことではない。この文面は、管理会社のひな形文書
なのか、担当者の創作なのかは分からない。
『うるさくて困っているので早急に対処して欲しい。』
 こんな言い方を私はしていないが、効果があるのであれば、それで
よいだろうとその時は思った。でも、なんだか茹でダコのように顔を
真っ赤にして怒っているおじいさんのイメージがした。
 
 その夜はとても静かだった。そして翌日の夜も。効果はあったかと
思われた。

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