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【wkgk】 #002 / 『なんでもない日には』

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昔書いたものをアーカイブしていく試み、第二弾はミニコミ『レタァ』の連載「なんでもない日には」です。

私の文筆家デビューは一応、2012年9月の「cakes」ローンチとともに始まった「ハジの多い人生」ということになってはいるのだが、それ以前の会社員時代にもあれこれと文章を書く機会はあった。ハンドルネームの「okadaic」をもじって、漢字表記の「岡田育」名義で署名原稿を書いた一番最初が、この『レタァ』である。2005年、25歳、社会人2年目のこと。

ちなみに、「レギュラー執筆陣として、続く限りの連載シリーズを」と声を掛けてくれたのもレタァ編集室が一番最初だった。諸般の事情で三号しか続かなかったけれど、とても思い入れが強くて、もし今後『レタァ』が復活することがあれば、絶対にまた続きを書かせてもらいたいと思っている。

名実ともに『Olive』の後継者として発足した『レタァ』の編集長から「イッコちゃんにはこの雑誌のマーガレット酒井先生(=酒井順子)になってほしいのだ」と言われて「畏れ多い!」と椅子から飛び上がって震えたのをよく覚えている。90年代、冴えないオタクだった私は『Olive』の世界に憧れていることが周囲にバレるのが恥ずかしく、でもやっぱり憧れていて、渋谷の書店店頭ではなく地元の区立図書館の隅で、隠れてこそこそ読んでいたような人間なのだ。

蓋を開けてみたら、前のページに載っている兄弟子・吉本真一さんの連載は「俺がこの雑誌の小沢健二だ」と言わんばかりのもので(タイトルロゴからしてやばい)、器の違いを見せつけられた。今をときめく川島小鳥くんが『BABY BABY』を出す2年前、本誌全編にわたってヤヴァイ写真を撮り下ろしまくっているので、そちらもファン必見でしょうね。

「小説のようなショートストーリーでもいいし、自分のことを書いたエッセイでもいい」と言われて、たしか両方試してみて、後者のエッセイを選んだ。あのとき、どんなに短いものでもフィクションでいこうと決めていたら、自分はまったく別の人生を歩んだかもしれない、と今でも考える。

タイトルがどうしても決まらなくて、結局、友部正人から拝借した。これも『ハジの多い人生』『嫁へ行くつもりじゃなかった』や「そのかねを」に連なる、その後のパロディ路線を示唆している。そういえば「そのかねを」に書いたSally Scottのコートの話、ずいぶん拡散されて多くの人に読んでもらったようで有難い。あの回、じつはこの連載「なんでもない日には」の続編のつもりで書いたのよね。

「なんでもない日には」は、セックスシーンのある歌だ。当時、『婦人公論』編集部でセックス特集を組みながらずっと女の人生について考え続けていて、乙女の読み物にどうしても性愛のニュアンスを盛り込みたかったからでもあるし、また当時、「小沢健二はなぁ、これからの日本音楽界で、井上陽水じゃなくて友部正人のような位置付けになっていくんだよ!」と力説していた名残でもある。ね、なったでしょ?

2005年10月6日付のブログ(はてなダイアリー)には、こんなふうに宣伝を打っている。

『レタァ』という雑誌に寄稿させていただきました。

岡田育「なんでもない日には」、わが兄弟子・吉本真一さんのページをめくったすぐ裏です。雑誌という媒体のために、こんなに長い署名原稿を書き下ろしたのは初めてだと思う。じつは当初「短編小説を」と言っていただいたのですが、非オリーブ少女の私が書くには荷が重く。挫折しました。うやむや連載エッセイです。今から第2号が楽しみ。通しタイトルは友部正人さんの曲題から勝手に拝借しました。友部正人が好きです。大好きです。そしてオリーブも好きです。

第一回は、お気に入りの耳飾りについて書いた「気持ちの名前」。第二回は吉本さんと示し合わせたコラボ企画で、甥と姪とが双方の視点から「ぼくの伯父さん」こと沼田元氣氏について書いたもの。第三回は「かわいいはなつかしい」、自分の少女時代や、世間的には「ガーリィ」とされる感性について、まだまだ折り合いがつかないという話。ずっと同じこと書いてるよね。筆写しようかなとも思ったけど、とりあえず画像で貼っておきますね。

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