Cというバンド

当時はさ。いや昔話になっちゃうけど、当時はね、ハコによって色が決まってたの。大体これ系、とかじゃなくて、もうばっちりくっきり。革ジャンだってだけでいきなりトイレ連れこまれてぼっこぼことかね。演奏聴く間も無くよ。可愛そうよね。
で目黒のDっていうハコだったんだけど、そこは完全にパンク系でね。老舗って言われてた。でもよく考えたらパンクってそんな歴史ないじゃんね、あの頃。今思うとテキトーね。ボコられたロッカー君たちこそ気の毒よ。そこにCが出てたの。
Cは、ホントはパンクじゃなかったと思う。少なくともピストルズみたくはなかった。NY系とか言ってる子がいたけど、そんなのわかんない。アメリカにもパンクあったんだっけ。四人編成だった。珍しく鍵盤がいた。その頃のDのトップのバンドで鍵盤なんて入ってるのなんていなかったから目立ってた。シンセとかじゃなかった。ピアノみたいな音だったよ。それがやたらと音が大きくてね。逆にギターなんかは線が細くてシャランシャリンって感じだった。ね。ピストルズじゃないでしょ。おまけに一曲一曲がちょっと長いのよ。そういう意味では他とはちょっと違っててファンとは言わないまでもご贔屓はいたんじゃないかな。
大体がオリジナルだった。まあ人の曲が混ざっててもあたしはわかんないけどさ。さっきも言ったけど大きいピアノの音がぐわんぐわんステージ上で回ってて、それに線の細いギターがたまに聞こえて、それに低い声の単調な歌がだらだら入るって感じ。お経みたいだった。正直Cのファンでもなかったあたしはその日も目当ての友達のバンドを待ってた。ビールとか他のとか入れてたから多少はぼんやりしていたけど、まあ前後の記憶はしっかりしてた。そこで奴が来たのよ。
ボーカルがゴニョゴニョと紹介してた。今夜友達がアメリカから来てる。一曲だけそいつとやるって。ヒモ通してないスニーカーを見たのはあれが初めてだったな。
余談だけどそのボーカルね、最近癌で死んだんだけど、一人娘の結婚式用にビデオの録画遺したんだって。中島みゆきの「糸」。それだけで笑っちゃうんだけど。で、2番までは下手ながらもしんみり歌って、使いようによっては場内の涙を誘うかもって出来だったんだけど、3番から急に替え歌になって、実在の人についての聴くに耐えない罵詈雑言を歌い始めたんだって。おまけに、服を一枚一枚脱いで最後はモロだしでカメラに向かって腰を振りサビを繰り返したらしい。死ぬ前月だったんで見違えるほど痩せ衰えた裸体が意外にアートぽかったって。
なんでそんな消息を知ってるかって? それは秘密。でね、その友人Fromクイーンズなんだけど

ここで目が覚めた。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?