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おかげくま、葛木御歳神社・東川(うのかわ)宮司さんに可愛がってもらうの巻

こちらの続きです。

吉野の丹生川上神社下社から里へ降りてきました。向かった先は、御年玉の起源・五穀豊穣・商売繁盛の御歳神「葛木御歳神社」(御所市)さん。

 創建は1600年前とも2000年前とも言われています。御祭神は、稲の神様で五穀豊穣をもたらす御歳神(みとしのかみ)、御歳神の父神でお正月の「お年玉」の語源となった大年神様(おおとしのかみ)、そして、事代主命の妹神で大己貴命の娘神でもある高照姫命(たかてるひめのみこと)の3柱です。

 歴史ある神社にもかかわらず、一時は寂れて荒れ果てていたと言います。そんな苦境から神社を建て直し、V字回復させた凄腕の理系女子宮司がおられると知り、是非ともお話を伺って、おかげくま参りの方々にもお伝えしたい、と今回の吉野巡りの際に訪問と御参拝をさせて頂いたのでした。

  それが本日ご紹介する東川優子(うのかわゆうこ)宮司 様です。

今回、葛木御歳神社にご参拝させていただき、東川宮司様に御由緒や自分が宮司を引き継いだ経緯などを丁寧にお聞かせいただきました。

 東川宮司様は、これまでの神社の常識に挑戦するような先進的な取組をされている宮司さん。「Paypayでお賽銭が払える」「クラファン活用にも積極的」「デザイン性の高いご朱印帳で大ヒット」「SNSで氏子さんやスピ系の方々ともコミュニケーション」など神社業界(?ってあるのかな?)の中でも、ITやSNS活用で1歩も2歩も先ゆく、先進的な取組を行なっておられます。

 お会いするまでは、「私がやらねば誰がやる!」的な押しの強い方では?(失礼!)と想像しておりましたが、実際は大きく違いました。

御歳の神様、初めまして。おかげくまです。

 

初夏の小雨が木々を彩る境内。石段が趣あります。

物腰も柔らか、言葉遣いも丁寧で、名前の通りお優しい女性です。でも、その心の奥底に、芯の強さややり抜く信念をお持ちの方とお見受けしました。

何1つ不自由のない裕福な生活から、父の事業が倒産、株も配当金もゼロ。負債に追われ、いきなりのどん底生活に。

 ご自身は、元々恵まれたご家庭で育ってこられたそうですが、長引く不況でご実家が倒産。一生涯心配しなくていい財産や株式は紙切れとなり、配当金で暮らす生活は一転して無収入。どん底の生活へ。家庭教師や学習塾経営などで糊を凌ごうと務めるものの容易なことではありません。一時は手元に30円しかなく、悲しく辛い想いもされたとのこと。

 生活苦が深刻になる八方塞がりの中、あまりの苦しさを御歳神社の神様に「いったいなぜ私にこのような不幸をくださるのですか?神様お助けください」と涙しながら祈ったところから、宮司だった義父の後継として導かれるように神職への路を進むことになったといいます。

 まるで神様が「あなたが御歳神社を立て直しなさい」とおっしゃったようだといいます。

優しい眼差しでお話しくださる東川宮司さん

 義父から宮司を引き継いだ当初は、たとえ2000年の歴史がある御歳神社と言っても、急激に過疎化が進む御所市では、参拝客は急激に減り続け、神社の収入はわずか数十万円と、とてもやっていけない状態でした。

 壊れた境内や設備を直す費用を賄うのもままならず、このままでは、神社の維持も行き詰まると大きな危機感を抱いての後継。ただでさえ、自分の生活費もままならない中、もはやこれまでか、と思ったことも何度もあったそうです。

(ちなみに、御所市の人口は、令和5年5月現在2万3千人余り。2016年から3000人以上も減少しており、過疎化に歯止めがかかっていません)

「「神様のおかげで」ということは本当にあるんですよ。それは自分を見てもらったらわかること」(東川宮司)

 皇學館大学での2年間の学びを経て、2003年に神職の資格を得た東川宮司さん。とはいえ、宮司になったからと言って、生活も経営も好転したわけではありません。学習塾や家庭教師を続けながら、神社経営も軌道に乗せたい。なんとかしたい!

神社の復興へ

 東川宮司は、まずは氏子さんとの人間関係改善からと、さまざまな祭事やイベントを企画、ブログやSNSでの情報配信も始めました。すると、じわじわと氏子さんだけでなく関心を持った人たちも参拝してくれるようになり、交流の場が必要となってきたそうです。

すると、天からアイデアが降りてきたそうです。

「クラウドファンディングしてみては?」

参拝者と交流する場としてカフェを作りたい。でも、資金が足りない。どうしよう?ってところで、クラファンを始めました。

 幸いにして、2015年3月、このクラファンで、資金だけでなく、御歳神社を愛してくれる「仲間」の方々が集うようになり、さまざまな祭事や山の手入れなどにも協力してくださるようになったそうです。

 さらに、追い風となったのは、旅行会社から依頼を受けた神社参拝ツアー・コンダクター業務。神社業界のインサイダー情報満載の東川宮司さん同行の「こころの旅ツアー」は、今や旅行会社には欠かせない人気プログラムとなり、神社にとっても重要な収入源に育っているそうです。

 また、神社ツアーは、ご自身にとっても学びとなる点が多いと東川宮司さん。各地の優れた神社に訪問する度に、宮司さん同士の交流を深め、訪問先神社の長所や経営ノウハウを学ぶことで、御歳神社の経営にもフィードバック。年々葛木御歳神社のレベルアップや氏子さんとの関係向上に反映されているとのこと。

 例えば、デザイン性の高い御朱印帳や御守りなどのグッズを開発し、ネット通販を始めたのも、他の神社が行なっている良いこととして、取り入れたことだそうです。「やれることは全部やろう」「まずはやってみよう」と仕入れ先を開拓し、厳しい取引条件にもあきらめないで取り組んだことで、道がひらけたとのこと。情熱は世界を動かします。

「神社8万社のうち2〜3割も10年先には無くなる神社があると言われる中、二千年続いてきた当社を一千年先の未来にも遺すにはどうしたらいいか?これまでも時代に合わせて、ニーズに合わせて変わることで生き延びてきた神社なのに、このまま何もせず、黙って指をくわえてみてるだけなら滅びてしまう」

東川宮司 談

 やってきたことを振り返られて、東川宮司様はこうおっしゃいました。
「あの時、本当に資金が苦しい中でも、なぜか大学の神職コースの学費だけは捻出できた。本当に不思議なことです」と宮司様。

「それに、神様から助けられる、という不思議な経験が何度もあるんですよ。
 例えば、外から鏡まで見えるほど朽ちていた摂社を直したいと思いつつも、材料費も出せないほど切迫して頃。
 ちょうど、観光トイレの設置に来ていた大工さんから「これはひどい。工事は奉仕でさせてもらうから、材料費だけなんとか手配してくださいよ」と言われても「その材料費もままならないので、手配できたら連絡しますね」と話した日の午後のこと。
 とある運送会社の会長さんが参拝に来られて「戦争中疎開していた時、こちらの大婆様に大変お世話になったので、何か御礼したい」と申し出されたのです。そこで「摂社の材料費お願いできますか?」と答えると、「喜んで」と会長さん。
 その日のうちに大工さんに電話しました(笑)。ね?不思議でしょ?(笑)」


「どん底を経験したからこそ、一千年先まで御歳神社を持っていくために、それこそやらなきゃいけないことは山積みで、どんどんやらなくちゃって思ってます。やれることは全部やろう、と思ってますが、ツアーや他の仕事で忙しくなって、氏子さんや参拝者の皆さんと交流する時間がなかなか持てなくなってしまったことが残念なことです」

 と未来を見据えながらも、あくまで目線は地域社会、氏子さん、支援者の方々のため、これからの未来一千年以上愛される神社に、という東川宮司様の姿勢に感銘を受けました。東川宮司様、ありがとうございました。

追伸

ということで、御歳神社さんの東川宮司様にお話を伺ったわけですが、その間、実は御歳の神様におかげくま達も良くしてもらっていました。

 宮司様の後ろで一緒に話を聞いておられる御歳様もうんうんとうなずいておられましたが、ご一緒におられる娘神の高照姫命様は「話はいいから、早く早く!」「姫もくまちゃんと遊びたーい!」っておかげくまを連れて神社と御神体でもある背後の御歳山に飛び立って遊んでくれたようです。

「「おかげくま参り」って面白いじゃないですか!うちも2003年にホームページ始めたら、神社がHPなんて!って言われました(笑)」と東川宮司さん。

「姫はお手玉よりもバスケとキックベースが得意なの」と結構活動的です。しばらく静かになったと思ったら、くまちゃんたちと御歳山の上で鬼ごっこやかけっこしてたみたい。「奇魂(くしみたま)」の世界では、雨など降っていないのでしょう。

 ところで、最近はスピリチュアルブームで神社巡りを趣味とする人たちに対して、伝統的・保守的な神社とのトラブルが絶えません。東川宮司さんは、最初からスピ系の方々にも理解があり、大いに共存したいとオープンマインドで話してくださいました。「おかげくま参り」にも好意的に受け止めてくださり、「どんどんやって、神社界盛り上げて!」と応援いただきました。

神社に着いた頃に降り始めた雨は、だんだんと激しくなり、社務所兼カフェでお話している間、外は大雨に。

ところが、、、

なんとお話が終わって外に出たら、雨があがり、記念写真も撮れました。御歳の神様や高照姫命様のおかげですね。

最後に鳥居の前で記念写真。

6月上旬の大雨で御所市でも土嚢を積んだり、大水が出た箇所もあったそうです。天候が不安定な時期でしたが、丁寧にご対応くださり、宮司様、本当にありがとうございました。

おかげくま参拝は、様々な事情で神社仏閣へ参拝できない方々と観光客・参拝客の減少に苦しむ寺社様との架け橋になれば、とくま作家Ray作テディベアによる代理参拝を支援しています。この活動を応援いただける方からサポートいただけると幸いです。