見出し画像

スタートアップへの「メンタリング」を頼まれてしまった時に注意すると幸せなこと

スタートアップ関連のイベントやアクセラレータプログラムなどでよく見かける「メンター」をネタにしてポエムを書いてみました。

・メンターがどのような行動をすべきか
・どのような行動を避けるべきか
という話題を扱っています。

「初めてメンターを頼まれたけど何すればいいの?」
という人はもちろん、
「アクセラプログラムを運営することになり、メンターというのが大事という話を聞いたけどどういう観点で探せばいいの?」
という人たちに参考になるポエムになっているはず。

結論

メンターを「指導者、助言者」みたいなものと想像している人が多いと思います。
その解釈は意味がないのでまずは忘れましょう。

スタートアップにとってのメンターは「事業を成功させるための具体的な作戦を一緒に考えて、力不足を感じたら自分よりそれに詳しくて熱意のある人を連れてくる係」です。

辞書的な意味は知らんが、メンターとは口出しや手出しを通じてスタートアップの事業を前に転がす機能を持つ人です。

それを胸にメンター係を頑張ってください。
以上、解散。

なおここから先はおまけポエムです。


メンターがやるべきこと

成功するための方法を考える

スタートアップの事業は普通失敗します。

どー見ても失敗しそうな事業なのに、技術面やビジネス面などでメチャクチャ工夫するから急成長して他者を出し抜いて大きな売り上げを作ることができるわけ。テスラとかモデルナとか。

失敗しそうな要因を指摘するだけであれば超簡単。心配性の我々日本人が最も得意とする領域ですね。
でも失敗要因を指摘するだけで事業が成功するわけはないです。
メンターがやるべきことはどう工夫すれば成功するのかを一緒に考えることです。

(なお失敗しそうな要因を指摘することだけを生き甲斐にする人のことを僕は愛を込めて「クソ評論家」と呼んでいます)

メンターをやるからには「クソ評論家」に堕ちずに、100人みたら99人絶望するような失敗の可能性しか見えない事業アイディアだったとしても、自分ならどうやってこれで世界をひっくり返すか?を考えていきましょう。

(考え抜いた上で、「これはどう考えても無理…」ということであればそれはそれで重要な情報なのでスタートアップに伝えるのは多少の価値はあります)

「自分には無理だ、ひっくり返し方を思いつかねえ」という人は続きをどうぞ。
まだまだポエムは続くよ。

自分より優秀な人を連れてくる

これを読んでるあなたは、10代で起業し20代で上場させ30代でもう一社上場させ40代でスタートアップ投資経験150社以上、という人ではないはずです。
もし当てはまるようならこんなポエム読んでないで今すぐ作業に戻れ。

上記に当てはまるような人物でない限りは、自分一人で失敗濃厚なスタートアップを勝たせることはできないです。
ファイナンス面であれ開発面であれビジネス面であれ、自分に欠けてる部分を埋められる人、自分より優秀な人を呼んで、その人と一緒に勝つ方法を考えましょう。
なおクソ評論家は連れてこないように。

優秀な人からの意見を色々集めて、「その中から選んだ作戦を一番の勝ち筋に変えることができるチーム」が良いスタートアップです。メンターとして選んでもらえる作戦を考え、必要あらば具体的に手を動かせるよう頑張りましょう。

なお自分より優秀な人が思いつかない、という人はメンターやる以前にビジネスパーソンとしてマズい可能性があるのでその時は大人しくメンターを辞退しましょう。

メンターがやらない方がよいこと

ダメな所だけコメントする

さっき書いたことと少し重複するけど念のため。

普通にやってもうまくいかないのがスタートアップなので、うまくいかない理由だけ言ってもその意見に「まあそうだよね」以上の価値は特にないです。
どうやったらうまくいくか、自分ならどう手伝えるかをコメントしましょう。

ただこれも難しい部分はあって、僕も永久機関作りました系ビジネスの相談を受けることが定期的にあります。
科学的に成り立たないことはそう言うしかないんですよね。

あとは「吸収するCO2より排出するCO2の方が多い」系の気候対策系ソリューション。
系全体がニーズを満たしていないものも厳しいコメントをせざるをえない。

とはいえこういうケースは意外と少ないものです。
多くの場合「技術的には確かに正しいし面白い。ただビジネス的には相当厳しい」というスタートアップなので、そうしたケースには上述の通り成功する方法を一緒に考えるべきでしょうな。

自分一人に依存させる

上に書いた「優秀な人を呼ぶ」の逆ですな。
「他の人からこういう意見をもらってて〜」みたいなことをスタートアップに言われて不機嫌になる人がたまにいます。

スタートアップの勝ち筋にはたった一つの正解があるわけではなく、持つべき視点も複数あります。
誰の意見を聞くか決めるのはスタートアップ側なので、メンターは他の人が考える成功プランを参考にしつつ、自分なりの成功プランをスタートアップに共有しましょう。

ただ、スタートアップによっては(悪い意味で)人が良すぎてしまい、ガチでおかしな人を呼び寄せちゃっておかしな資金調達をして後戻りできなくなる場合もあります。

「ガチでおかしな人」を検出した場合は他のメンターや運営チームと相談しつつ「あの人はやめとけ」的な話をすることもあります。
まあー、たまにですよ、たまに。

意見を押し付ける

筋の良いメンター(や、それに類する人)と多く関係を持つスタートアップはマジですごいなあと思います。
そういうチームほど、最後は自分で作戦を決めてたりする。
日頃から筋の良い助言を聞きまくってるんでしょうな。

なおこの「助言を聞く」ていうのは「助言をそのまま実行する」じゃないです。
イメージ的には「助言を一旦テーブルに置いて、精査する」という感じ。
筋の良いスタートアップは筋の良い助言をテーブルに置きまくって、それをふまえ最終決定してる。

なのでメンターをやることになっても「なんで俺の言う通りにやらないの」的なことを言うのは控えましょう。
テーブルに置いてもらえるだけ喜べ。

(視点を変えると他のメンターと多少意見が違っていても自分の考えに自信を持ってスタートアップに伝えましょう。テーブルに置くかどうかは向こうの仕事)

とはいえ人間なので性格の不一致はある

これは個人的にいつも考えてるんだけど、メンターもスタートアップも人間なわけです。そしてメンターとスタートアップの会話はロジックだけで構成されているわけではないです。どうしても「性格の合う合わない」はあるわけです。

僕も過去「コイツ無理」というケースがありました。(全体の1%くらい)

事業アイディアの筋の良し悪し関係なく「悪い、やっぱ辛ぇわ」となる場合は距離をとりましょう。
もしアクセラプログラムなどでのメンターをやっているのであれば運営の人に相談しましょう。

メンターに極少数「クソ評論家」が存在するのと同様、スタートアップにも極少数「(悪い意味で)ヤベえやつ」がいます。
そういう人のためにあなたのモチベーションが削られるのはもったいないし、手伝えない人からのコメントもらってもスタートアップに得は無いし。

無理だなと思ったら離れましょう。

「運営側」が気にすべきこと

スタートアップが参加するアクセラレータプログラムやコンテストの運営側を手伝うこともあるけど、メンターの人たちには上に挙げた中でも特に「評論家コメントは避けてほしい」ことは念押ししてます。

で、多分このやり方は正解だと思う。
スタートアップは事業を前に転がしたいからプログラムに参加するわけで諦める理由を見つけに来てるわけではないので。

それに加え、1チームあたり2,3名のメンターをつけています。一人の意見に依存させない。
これも多分正解のやり方だと思います。

運営側としてメンターをアサインする場合は「メンターとして参加チームにアドバイスしてください」と単に依頼するだけでなく、その前段階として
・参加スタートアップにどうなってほしいのか
・そのためにどういう助言が必要なのか

を検討し、メンターに求める役割を整理した上で、必要な要件をメンターに伝えた方が機能すると思う。
要件を整理する際は上に書いたポエムが役に立つはず。


メンターというお題を設定すると、「日本はメンターばっか増えてスタートアップが増えてねえよな」とか「スタートアップの数に対して伴走する人材が不足している」とか色々なポジショントーク 忌憚のない意見を聞きます。

まあ、スタートアップに興味を持つ人が多いに越したことはないので「メンターとしてスタートアップに触れてるうちに起業したくなっちゃったからスタートアップやるわ!」みたいな人もこれから増えるとおもろいかなと思っています。

では私はランクマに戻ります。なお当方のモダンジュリをマスターに上げるのを手伝ってくれるメンターを探しています。

皆さんからのサポートはもれなく焼酎代とkindle積み本代に変換され、そこでの気付きが新たな記事のネタになり皆さんを楽しませることでしょう。多分。