見出し画像

起業を志した研究者は事業計画、特に売上計画についてどのように考えるとよいか

大学や研究所に所属する研究者が自身の研究成果を使って起業する際、所属組織の産学連携部門や事業化アドバイザー的な人達に事業計画について相談することが多い。
(で、僕も相談を受けることがある)

そうした場で事業計画について説明するわけだけど、研究者が作る事業計画は売上規模がどうしても小さくなりがち。そのせいか「もっと大きい売上を考えよう」的なことを言われることがあるみたい。
(で、僕も言うことがある)

今回はせっかく事業計画を作ったのに「もっと大きい売上を考えてよ!」と言われがちな研究者が、起業する際に事業計画、特に売上計画についてどのように考えるとよいかをまとめてみる。

そして例によって、研究者だけでなく起業を目指す人全般に当てはまる話かもしれませんな。

こじんまりとした副業っていいですよね

まあわかるんですよ。起業を志したとはいえ、そんなに大げさなことは考えていなくて、こじんまりとした売上で食っていければOK、大きい売上?なにそれおいしいの?というスタンス。そういう研究者さんは多いし、その気持は超わかる。

実際、起業を目指す研究者から「初年度の売上は20万円くらいで5年後には300万円を目指す。稼働するのは自分だけで、研究者としての本業を続けながら片手間で事業を進める」といった事業計画を伺うこともちらほら。

それはそれでうまく行けば研究者の副業としては悪くはない。だけどそうした規模感だと立ち上げすらうまくいかない事が多いっぽい。

理由は大きく2つ。
1)研究成果を活用した事業の立ち上げにかかる初期コストは大きくなりがち
2)「小さな事業計画」では初期コストを外部から調達することが難しい

もう少し詳しく書いてみる。

小商いでも研究開発系だと初期コストが結構かかる

例えば、自身の研究成果を活かした製品を製造し、販売するビジネスを考えたとする。バイトを雇いつつ最低限儲かればいいのでそこまでの数を売らない「小さな売上計画」を立てる。

ちょっとしたアプリの立ち上げならギリギリこれは成立する。けれど研究開発型事業の立ち上げとなると厳しい。

設備投資はもちろん部材仕入れや作業スペースなど、必要なコストを積み上げると意外とかかる。販売規模を少しでも増やそうものなら製造チームやバックヤードの人件費などが積み上がっていく。

色々な事業を拝見するに、ハードウェアやヘルスケア、バイオ系だとものにもよるが立ち上げに最低でも数千万円-1億円程度は必要になる。研究者個人の手持ち資金だけでは結構厳しい。

製品化に向けた費用を稼ぐために、これまでの研究知識を生かして企業向けにコンサル業務を行うことも考えられるが、多くの場合コンサル業務で手一杯になり製品化に向けた具体的な動きを取れなくなることが多い。

となると、銀行や投資家、行政などから資金を調達する必要が出てくる。そのためには彼らを口説くための事業計画が必要になる。どんな事業計画が必要かというと…。

でかいお金を調達するにはでかい計画が必要

外部からの資金調達としてメジャーなルートは「銀行」「投資家やVC」「行政」の3つ。いずれにせよ「でかい計画」が必要になる。

銀行から資金調達する場合:

銀行から資金を調達するとは「お金を借りる」ことを指す。なので借りたお金は利子を付けて返さないといけない。超シンプル。

なので銀行は貸したお金が利子付きで確実に返ってくると判断できる事業計画を求める。事業立ち上げのために大きいお金が必要なら、その返済ができるだけの確実に儲かる「大きな事業計画」を立てる必要がある。

投資家やVCから資金調達する場合:

投資家やVCから資金を調達する場合、自分が作る会社の株式と引き換えに現金を受け取る形になる。投資家はその会社が成長し、受け取った株式がIPOやM&Aを経て現金化できるタイミングで儲かる可能性に賭けて出資する。

とはいえ、同時にすべてのベンチャーが成功するわけが無いことも知っているので多くの場合、「うまくいけば」大きな売上が見込める成長性の高い事業計画を求める。(投資家のスタンスによっても変わるけども)

なので今、数千万円を調達したいなら5年後に年売上10億円規模の可能性が見込めるような「大きな事業計画」を立てる必要がある。

行政から資金調達する場合:

ベンチャー向けの助成金は規模の大小、ジャンルによって様々なものがある。行政が主体となって数千万円規模を交付する助成金においては、多くの場合国の成長に貢献するような事業計画が求められる。

なので、個人が副業的に儲かるビジネスではなく、何らかの業界構造を変革するような「大きな事業計画」を立てる必要がある。

****

銀行、投資家&VC、行政、どこから資金調達するにせよ、でかいお金を調達するにはでかい計画が必要。そんな背景から、産学連携部門や事業化アドバイザー的な人達は「もっと大きい売上を考えてよ!」と研究者に言うんですよね。

研究成果を使って小遣い稼ぎするのも世界を変えるのも超熱いっすよね

研究成果で小遣い稼ぎをする。研究成果で業界や世界を変える。どちらも自分で人生を切り開いてる感があって素晴らしいことだと思う。マジで。

だが実際問題、立ち上げに大きなコストが必要になりがちな「研究成果の事業化」を目指すなら「大きな事業計画」を作り銀行や投資家、行政のいずれかを口説くのが今の所のベストだと思う。

色々思うところもあるかもしれないけれど、「事業アドバイザー」的な人の意見を聞くときは、こうした背景をつかんでおくとより深い議論ができると思う。
(最終的にアドバイザーさんの言うことに従わなきゃいけない、てわけじゃない。決めるのは自分)

じゃあその「でかい計画」はどうやって作るんだよ

ですよねー。俺も知りてえよ。

事業計画の重要な要素として「何を作って、誰に提供し、お金をどれだけいただくか」というのがあるけど、自分の研究成果にうまくはまる最適解を見つけるのが超絶難しい。

最適解を見つけるための手法はググると色々出てくるけど、今んとこ「客になりそうな人のとこ行って最近の困りごとを聞く」のが汗臭いし実行するのは大変だけど最短だと思ってる。このあたりは別の機会にまとめます。

以下宣伝

もし今大学や研究所に所属してて、売上規模の大きい事業を目指したいけどイマイチどうすればいいかわからない人がいたら少しは相談に乗れるかもしれないのでこちらまでメッセください。
https://www.facebook.com/okaji/

ものによっては相談に乗れるかも or 適切な人/組織を紹介できるかも。とはいえ永久機関、謎水、謎触媒の類は勘弁な。

皆さんからのサポートはもれなく焼酎代とkindle積み本代に変換され、そこでの気付きが新たな記事のネタになり皆さんを楽しませることでしょう。多分。