「切り絵の影」




心が壊れてしまわぬように
在りし日の僕らへと 還るのです
短いやりとり 長い運転 雨の峠ぽつり
君は笑って泣いた

規則的な車窓 僕らは名も無き水滴の中を走る獣
交わし合う一つ一つ 重さを量るよう 互いを確かめていたはずなのに

それでも損なう二人で

誰のものでもない白い手 月明かりが差す小さな窓
神経質な神が作った切り絵のように正しく象る影を僕は見ていた


僕らの出逢う前 全ての星はもう 流れ尽くしたと気づいてたら
もっと切実で それで不細工なまま 両手を合わせてから離れただろう

なんてさ何度も一人で

僕のものではない長い髪 あの空より暗く深い色で
静かに揺れる様は 神が気まぐれに汚れた心へ
落とした小さなシミ


辿り着く今日 穴あきの僕
燃えかすに等しいこの記憶も
いつか忘れてしまうだろうか
ねぇ歌にしたなら思い出せる?


誰のものでもない白い手 月明かりが差す小さな窓
神経質な神が作った切り絵のように正しく象る影を僕は見ていた

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