スナックふかよみ_セプテンバー_ソング_後篇1あ

深読み セプテンバー・ソング 後篇その1「終わらない夏、フィフティーン」


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2019年9月1日(日曜)
スナックふかよみ


そして、いよいよサビに差し掛かる…

このサビ部分の歌詞は、「比喩」や「言い換え」や「駄洒落」が駆使された完璧なまでに美しい歌詞だ…

MVの彼と彼女によるドラマ映像も、歌詞を巧みに表現した素晴らしい演出になっている…

ついに、この歌のキーワード「フィフティーン」が登場です…

ちょっと待って。

サビに入る前に、もう一度ミュージックビデオを観てもいい?

細かいところを忘れちゃったから…



まずはサビ1の前半部。

[Chorus]
You were my September Song,
summer lasted too long
Time moves so slowly, when you’re only fifteen

「September」は「第7の月ニサン(Nisan)」のことだった。

だから「You were my September Song」は「キミはボクの9月の歌」ではなく、

キミはボクの「第7月の歌」

という意味になる。

でも「ニサン」は、あたしたちの使うグレゴリオ暦でいうと3月後半から4月後半…

つまり春でしょ?

次の「summer lasted too long(長過ぎた夏)」という歌詞と整合性がとれないわ…

その心配は必要ない。

「summer lasted too long」とは…

長過ぎた最後の晩餐

という意味なんだ。

は? どこから「最後の晩餐」が出て来たの?

「summer last(夏が続く)」が…

「last supper(最後の晩餐)」の駄洒落になってるんだよ。

『The Last Supper』
レオナルド・ダ・ヴィンチ

まぁ!ここでそんなダジャレ!?

でも確かにイエスがいっぱいお喋りしたり、弟子たちにパンや葡萄酒を飲ませたり、いろいろ長い晩餐だったわよね…

For Christ' sake…

そしてMVのドラマにも注目だ。

場面は、建物の上層階に住む若者の部屋…

彼は窓辺に腰かけ、窓に背を向けて考えごとをしていたんだけど、突然ゆっくりと振り向き、窓の下へ目を向ける…

ここで何か気付かない?

何か?

窓が十字架を示しているってこと?

それもある。

欧米人のクリエイターは「窓」や「電柱」で十字架を表現するのが好きだから。

だけどここで注目してほしいのは、彼のポーズに関してだ。

彼のポーズ?

あの夜、長過ぎた「最後の晩餐」が終わったあと…

上層階に住む白い服を着た男が現れて、これと同じポーズをしたんだよね…

上層階に住む白い服を着た男?

最後の晩餐のあとに、そんな人、出て来たっけ?

これです。

あの夜「One for all」の宿命に苦しんでいたイエスを…

天から励ましに来た白い服の男…

『ゲツセマネの祈り』
カール・ハインリヒ・ブロッホ

ああ!同じポーズ!

そして彼は、深夜の路上をひとりで歩く彼女の姿を見る。

つまり、ゲツセマネの園を歩くイエスの姿を…

そこで流れる歌詞がこれだ。

Time moves so slowly,
when you’re only fifteen

フィフティーン、来た!

One for all, all for One!

最後の晩餐は、ニサン15日!

その通り…

ここでの「fifteen」は「年齢」ではなく「日付」だ…

そして「only」の「ly」を小さく発音すれば…

時の流れはあまりにも遅い
キミのニサン15日は

という意味になる…

たしかに…

ニサン15日は「過越し」の日…

最後の晩餐から始まって、オリーブ山の散歩があって、ゲツセマネの祈りがあって、ユダの接吻があって、イエスの逮捕と裁判があって、十字架を背負って歩く苦難の道があって、ゴルゴダの丘で十字架にかけられ、日没前に石室へ埋葬された…

この日は出来事が盛り沢山…

イエスと弟子たちの時間は、まさに、ゆっくりと流れた…

やられたわ。

イエスが処刑されて埋葬されたニサン15日~17日を「十五、十六、十七と、あたしの人生暗かった」と歌った藤圭子の『夢は夜ひらく』と同じトリックね…

尾崎豊の『15の夜』もそうだよ。

テイラー・スウィフトの『fifteen』も。

孤独で不安だったテイラーに寄り添ってくれた優しい「Abigail」を、イエスに寄り添ってくれた天使「Gabriel」に重ねている…

「15が出てくる歌」だけで一晩を語り明かせそうね。

その企画おもしろいかも。

だけど今夜は『September Song』に集中しよう。

サビ1の後半部分にいくよ。

まずはドラマ映像から…

ひとけのない裏道を歩いていた彼女は、シャッターが閉まった倉庫の前で立ちどまる。

彼はその様子を上から眺めていた。

そして彼女は、リュックからペンキと筆を出し、シャッターに文字を書き始める。

このシーンで歌われた歌詞は、こんな内容だ…

You were my September Song,
tell me where have you gone
Do you remember me,
we were only fifteen

キミはボクの第7月の歌
教えてよ
キミはどこへ行ってしまったの?
ボクのことを覚えてる?
ボクたちの、あのニサン15日を覚えてる?

イエスを演じる彼女がペンキで途中まで書き…

最後は弟子の誰かを演じる彼が完成させた言葉…

あれがこの曲のテーマでありオチってわけね。

そういうこと。

そして裏路地にパトカーが入って来て、彼女はライトに照らされる。

彼女は驚いて逃げ出した。

そしてしばらく行ったところで丁度いい街灯を見つけ、よじ登る。

暗い路地裏でここだけライトアップされてて、いかにも何か意味有り気な感じよね…

だいたい見当はつくけど…

普通の人ではまず登れない高さの街灯を、彼女はあっさりと登り切って、壁の向こうへ消えていった…

この一連の流れは「イエスの逮捕」と「十字架刑」でしょ。

だね。

このシーンで流れるサビ2の出だしもこうだ…

And I, I remember the chorus
They were singing it for us

「chorus」とは「サビ」とか「盛り上がりの部分」という意味。

それが「ボクたちのことを歌っていた」というんだよ。

「福音書」の「サビ」ってことね。

つまり「イエスの死と復活の奇跡」の部分。

うまいわ。

山田君、イギリスのJPクーパーさんに座布団一枚あげてください。

山田君がイギリスまで運んでくれるかはわかりませんが、一枚といわず十枚あげたいですね。

さて、彼女が街灯をよじ登って姿を消す光景を見ていた彼は、何かを感じ取ったような顔つきになる。

そしてサビ2の後半が始まり、再びサビ1の後半の歌詞が繰り返される。

キミはボクのニサンの月の歌
教えてよ
キミはどこへ行ってしまったの?
ボクのことを覚えてる?
ボクたちの、あの15日を覚えてる?

街灯を登って壁の向こう側へ行った彼女は、いろんな建物の非常階段を走り抜けた。

そしていくつもの壁をよじ登り、大きな建物の屋根の上に出る。

完璧な歌詞と映像ね。よく出来てる。

だけどまだ彼は「計画」の存在に気付いていない。

夜が明けて、シャッターに残された書きかけの文字を見てから、彼の中で「空白を埋める」作業が始まるんだ。

それでは2番を見ていこうか…



つづく




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