80代以上の方に伝えたいこと

ようやく世の中が落ち着き始め、ふと、この3ヶ月を振り返った時、経済的にも精神的にも、日本全体が本当に混乱していたなと、改めて感じます。

個人的にはメディアが必要以上に煽っていた面もあったと考えてはいますが、それでも、死亡率としてはそれ程高くないウイルスに、こんなにもあらゆる場面で、自分も含め人間の弱さが露呈される事態になったことには、今でも戸惑いがあるのが正直なところです。

自分たちの弱さを目の当たりにしたけれど、どこかでまだそれを認められていない、消化できていない。元の生活を取り戻すことで、向き合わずにやり過ごそうとしている空気も、少し感じています。


全国規模の社会的混乱。

日本人がコロナより前で直近に経験したのは、75年前、第二次世界大戦になるかと思います。


この未消化の3ヶ月を経て、私にとって教科書の中の出来事だった戦争に思いを馳せた時、色々な思いがこみ上げてきました。


学校で勉強が出来なくなり、一日中立ち仕事をさせられる。

空襲警報が鳴ったら狭い防空壕にすし詰めに入る。

夜中でもすぐに逃げられる格好で眠りにつく。

満足に食糧が手に入らない中で子どもを守る。

いつ亡くなった知らせが来るかという恐怖と戦いながら夫や我が子を待つ。

意思とは関係なく戦いに動員され、人を殺めさせられる。

大切な人を目の前で沢山失う。

当たり前のように自由な発言や行動は制限される。


どんなに辛かっただろうか。

どんなに苦しかっただろうか。

どんなにひもじかっただろうか。

どんなに悲しかっただろうか。

どんなにやるせなかっただろうか。


この中を生き抜いてくれて、命を繋いでくれて、社会を立て直してくれて、本当に、本当に、ありがとうございます。

あなた方が乗り越えた日々の上に、こんなにも豊かな今があるということを、私は分かっているようで、分かっていなかった。


私には、91歳になる祖母がいます。祖母の家は実家の近くにあり、子どもの頃から会う機会は多かったのですが、祖母の青春時代である戦時中の話をしてくれるようになったのは、ここ2、3年のことです。

祖母は、その話を決して暗い感じでは話しません。そして、戦争のせいだと言うこともありません。

好奇心の強い祖母は、その時間を取り返すように、いつも何かに興味を持って学んでいます。


祖母の家の仏間には、いくつか遺影が飾られているのですが、その中に一人、二十歳前後の青年がいます。祖父の兄です。

私にとってそれは物心ついた時からの当たり前の景色になっていて、あまり深く考えることはなかったし、その話を祖父から聞くこともありませんでした。

でも、祖父の兄の早すぎる死が、祖父の家族にどれほどの衝撃を与えたのか、祖父や他の兄弟がどのような人生を歩んだかを考えると、今なら少し、想像する事ができるような気がします。


私は、この幸せが当たり前になりすぎて、生きている実感すらあやふやになっていた時期もありました。

崩れる事がないと思っていた地盤に、今回少しヒビが入ったことで、この地盤がどうやって作られたのかということに、ようやく目を向けることができたのだと思います。


あなた方が命を掛けて繋いでくれたものを、私も、次の世代に繋いでいきます。

この時代に「命を掛ける」ことは無いように思っていたけれど、改めて「命を掛ける」とは、自分を放棄しないで、自分を活かしながら、一瞬一瞬を大切に過ごすことだと私なりに解釈しています。


一番、何かのせいにしたかったはずのあなた方は、それを口にせず、新しい時代を作ることに尽力してこられました。きっとそんなことを考える余裕がないくらい、懸命に働いてこられたからなのでしょう。

私も今日を境に、何かのせいにするのは一切やめます。今自分に何ができるのか。時に揺れることがあるかもしれませんが、必ずそこに立ち戻ります。


最後に、今同じ時間を生きながら、私とは全く違う時代を生きてこられたあなた方と、お話をする機会を、今よりも持てたら良いなと思っています^ - ^

















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