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記録(4)SAVE KAKOGAWA FES 2022

 運命の2日目開業まであと15時間ほどしかない。

 微妙ではなく明らかな結果が出ていた。駐車場レスでのKMA(川まで歩こう)スタイルでの開催は、ほぼ失敗に近い結果を残していた。客数が少なすぎる。

 1日目の終了間際にスタッフとこの点について議論をした。可能性としては2日目は駐車場レスで開催するのをやめ、広い川原を駐車場として全開放する選択肢もあった。
 じつはこれは簡単なことなのだ。今回は川原の駐車場は使っていないだけであって、広い川原は使用可能スペースとして残っている。イヌを連れてくるお客さんとハンデのあるお客さんだけに絞って使ってもらっているが、駐車場として一般開放すればすぐに使い始めることができる。
 いちばん心配していた会場周辺の渋滞はまったく起きそうにない。今回のSAVE KAKOGAWA FES(SKF)はお盆の開催だったため、帰省渋滞で混んでいるのは川原からも見える高速のバイパス道路だけで、会場周辺の市街地も堤防道路もスムーズなものである。
 これなら駐車場レスを捨てれば一気にボトルネックを解消することができる。
 しかしこれはやめた。せっかく加古川の街や河川敷の使いかたに革命を起こそうとして選択したポリシーがKMAである。初開催の1日目でうまくいかなかったからといって日和ってしまってはいけない。重要な柱はドンとかまえておかなくてはいけない。なんでもかんでも短期的結果に直結させればいいものではないのだ。
 カネはもうけなければいけないが、それは「街を変える」という目的のための一つのツールにすぎない。ポリシーが根元から揺らぐのはなによりも危険なのだ。

 飲食出店者の営業不振の原因はもう2つ考えられた。まずは夏の暑さそのものである。ムサシオープンデパート朝市(MOD)は1年じゅう開催しているので最近はっきり認識できるようになったのだが、冬はひじょうに腹が減るのである。たとえば甘いものの消費量は夏には大きく減少するのだ。チョコレートが冬には食べたくなるのはたんに溶けちゃうからではなく、夏は熱を生産しなくていいためそもそも腹があまり減らないのだ。
 もう1つの原因はビールなどの飲み物だ。夏のイベントではビールや飲み物がよく売れる。会場に到着してツマミを食べながらワイワイ賑やかにビールを何杯か飲んでいると、それだけでほぼ満足してしまい、酔っ払っていることもあって「メシはまあいいか」となってしまいがちだ。
 人間は季節や気温におおきく左右される動物であることがイベントをやっているとじつによくわかる。

 営業が終了したあと自宅に戻ってデスクにすわり、対策を考える。まだ倉庫などで2日目の準備作業をしているスタッフとメッセンジャーでやりとりをしながら、午前1時すぎまでに4本の対策を整理した。
 とにかく客数を増やすしかない。同じ人にたくさん食べてもらうことはむつかしい。いま川原に来てくれていない人を川原に移動してもらうしかない。

1)SKF両日の出店料をすべて無料にする
2)スタッフへのまかないを中止しすべて会場で購入する(金銭サポート含む)
3)会場周辺で呼び込みを強化する
4)社長の立場を活かしてSNSで超直球のお願いを拡散する

 イベント当日にできることとしてはこれくらいが限界か。このうち出店料の無料化については、当初は2日目だけを考えていたが、今回の運営リーダーの惣塚さんから「いくつかの手法を組みあわせると返金はむつかしくないから、両日無料としたらどうか」とアドバイスが入ったのでそちらを選択することにした。
 在宅スタッフからはビールが割り引きになるハッピーアワーを実施する提案があったのでこれも即採用。

 出店料を無料にするというのは、利益どころか収入をゼロにするということにほかならず、あまりほかでは聞いたことがない。じつはわれわれのイベントでは過去にも経験がある。予想を大幅に下回る集客しかできなかったときに実施したのだ。
 1日目がおわった時点で、このSKFという初めてのイベントはかなり成功していた。岡田康裕市長や市役所職員との対話と交流は進んだし、ドッグレースやレンタルカヤックなど新しい試みも盛況である。会場作りも美しくしあがって問題なく機能しておりインパクト抜群だ。事故もない。県外の出店者とのパイプもうまく強化できている。数十万円の出店料など捨ててもいいくらいの実験結果が得られ、広告効果が生まれることはすでに初日で確約されている。
 問題は飲食物の販売不振だけなのだ。これを全力で解消する、解消できなくとも全力で取り組む姿を見せる。そしてこれからも改善を続けていく予感を得てもらうことで、仲間にほかならない出店者たちの満足度を上げ、未来のわれわれのイベントに力を貸してもらう。手元でもうけるよりそのほうが圧倒的に大事なのだ。
 「そこまでやってくれてるならしゃあないわ」と言ってもらえるくらいまで徹底してやりぬく。

 気合いを入れて、対策4の直球のお願いの原稿を書き始める。KSF2日目で夕食を食べてくれる人を文章だけでできるだけ増やすのだ。

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★2日目のSKFで夕食を食べて
★フードロス回避にご協力を
 
SAVE KAKOGAWA FES(SKF)の初日が終わり、みなさんにお願いです。
 
2日目のSKFに来てぜひとも夕食を楽しんでくださいませんか。
 
というのも、飲食店の売上げが想定よりかなり不振(およそ35%ていどのようです)で、このままではたくさんの食品ロスが出そうです。県外をはじめ、各地から加古川を盛り上げに来てくれている出店者のみなさんの売上を助けてやっていただけないでしょうか。
 
不振の要因はいくつかありまして、最大のものとして夏の飲食物販売は伸びにくいというのがありそうです。今回、最大のチャレンジとして、加古川の将来を見据えて「KMA(川まで歩こう)」と題して駐車場レス運営に挑みましたが、さいわい1日目の入場者数5000─6000人は達成できています。このため、来場が少ないというよりは、出店者が気合いを入れて来ているのに、お客さんが夏バテであまり食べてくれない──というのが真相に思えます。
 
このため、株式会社ムサシは出店料の徴収を2日目は中止、初日の出店料に関しても全額出店者に返金することとしました。
 
つまり(1)われわれ運営者の収入をゼロにすることはいといませんので、(2)「加古川復活イベント」に力を割いてくれる出店者にいい経験を持ち帰ってもらいたい(3)食品ロスも避けたい──のです。
 
そこで1人でも多くのかたにおいでいただき、夜の飲食を楽しんでいただければ幸いです。
 
会場は過去の加古川の屋外イベントでも最高の空間になっていると自負しています。ぜひ美しい会場においでいただき、みなさんのお力(胃袋)を貸してください。
 
ふだんから自宅では食べ残すことなど子どもに許さない、株式会社ムサシの代表・岡本篤からの、ほんとうに心からのお願いでした。
 
追伸:重ねて恐縮ですが、みなさまのお友達へのこの投稿のシェアもおねがいできればさいわいです。
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 SNSで目に留まりやすいよう冒頭からわかりやすくストレートなお願いを書く。理由や原因をていねいに説明する。そして社会性のある「フードロス」という視点を入れる。社長であると同時に個人としての「岡本篤」の生活が垣間見えるよう、子どもの話も盛り込んだ。
 配信はこのまま夜中にやらず朝のほうがいい。拡散を狙うなら、投稿するタイミングはひじょうに重要だ。一気にたくさんの人の目に触れ、すぐに多くの人がシェアしてくれる初速を伸ばすのがとても大事だからだ。なにしろ時間がなくもう12時間ていどで2日目が開業だが、だからこそよけいミスはできない。
 また、急いで書いた原稿はしばらく寝かせ、時間をへて「別人」になった自分がもういちど冷静に見直して仕上げたほうがいい。

 書き上げて寝床に入ろうとしたが、SKFとはまったく別の仕事がひとつ残っていて、それを片付けていたら朝の4時になってしまった。朦朧(もうろう)として頭が回らなくなってきたので横になる。睡眠不足確定。

 明日、いや今日はムサシオープンデパート(MOD)史上みじめな1日になるか、持ち直すか。


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