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どの位置からライターになるか

Yuhei Suzukiさんの記事を読んだ。自身が書き手でありつつ編集の仕事もされている。いろんなライター志望者と出会った中で印象的な出来事が綴られている。

一口に「ライター」といっても立場はさまざまで、仕事に至るまでのルートもバラバラだ。私は私が経験したルートしかわかっていなかったので、書かれていた状況はとても新鮮に思えた。

「ライター」の仕事って、自己表現の場じゃなくって、第一に「読者に届けるため」のものだからだ。

だよね。でしょ。というか、違う感覚の人がいるの?

それが読んだときの印象だった。依頼者が実現したいことを文字で実現するのがライターの仕事。土台を作ったあとで初めて「自己表現」に手をつけられる。依頼者が「その表現は要らない」と思ったら削るし、気に入ってくれるなら文章の中に残せる。

100%自己表現をしたいなら依頼者の文章に載せるのではなく、自分の名前で出す原稿に書いて、求められる場所を探して公開するしかない。書いた原稿がお金になるかどうかは別の話。あなたの自己表現にお金を出してもよい、という人がいてくれたら商売になる。

で、それは「ライター」ではなくてやっぱりエッセイストやコラムニストがすることだと思っていた。ライターは依頼者の文章を書く人で、自己表現から入るものではない。

でもライターとしてそれをめざす人がいるのだなあ。最初に述べたようにいろんな「ライター」がいるのだからアリではある。どうして入口が違うのだろうと考えて読み進めていると、ギャップの元が見えてきた。

私は広告営業のOLからライターになった。営業という名前ではあるものの、枠を売ったあとはデザインや内容を詰めるのでディレクターも兼ねる。アイデアは出すけれど表現の主役はお客様で、お客様が実現したい表現をスムーズに形にするにはどうするか知恵を絞った。

私のライター仕事はこの延長線上にある。ビジュアルで表現していたものを文字に絞って、文字でお客様が実現したい表現をサポートする。

正直、自分の個性や自己表現なんてライターになった最初の3年くらいは意識したことがなかった。むしろ邪魔になるとすら思っていた。だんだんお客様や同業者の目に触れるようになって文体の特徴を「こうだね」と評されて、「そうなのか」と考えるようになったくらいだ。

Suzukiさんの記事に出てくる女性は自己表現から入って文章を磨き、今は依頼者の要望に応えつつ個性を出せるライターになったという。

どちらが良いとか悪いとかではない。ただ、ライターをめざす道は1方向からとは限らず、人によってアプローチの方法が違う。

年上や経験者が年下や未経験者を見るとき、往々にして自分がたどったルート以外の人をネガティブに評価してしまう。私もうっかり陥ることがある。事情をよく知らなかったら、記事に登場した彼女についても頭ごなしに否定してしまったかもしれない。

「ライター」の良さは、どんな人も取り込んで仕事につなげられる間口の広さだと思う。いろんなスタイルが存在していて自分はその中の一種。他の人も同じ一種。自分物差しだけを使って「こうあるべき」と言い切るのは本当に危険だ。


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仕事としてのライター、起業準備から継続にいたる地味な話。


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