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”玉虫色” の日銀。

 経済・物価情勢の展望(展望リポート):
 消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)の前年比上昇率
 23年度+2.8%(従来+2.5%) 24年度+2.8%(同+1.9%)
 25年度+1.7%(同1.6%)

 さすがに 提言:「マイナス金利付利制度」を廃止して "デフレ脱却宣言” へ。|損切丸 (note.com) は無理だったが、正直植田総裁が何をしたいのかわからない。実際には毎日の「指値オペ」がなくなったぐらいでいわゆる ”玉虫色” 。「何かしなくては」とせっつかれてアリバイを作ったに等しい。ある意味とても日本的ではある。

 事前報道通りコアCPIの見通しは上方修正したものの、25年度+1.7%にその「自信のなさ」が現れている。2年後の物価見通しが先下がりなのだから、確実に日本国民の ”デフレマインド” に伝播する。

 「自信のなさ」はマーケットにも伝播する。昨日(10/31)のN新聞による ”リーク” 記事で1円以上「円高」に振れたドル円も結果が出てしまえば元へ逆戻り。そこには「政府の経済政策の基本方針と整合的なもの」(日銀法第四条)による政府 ≓ 財務省に対する強烈な忖度が働く。JGBの想定利回りを@1.5%に改定しているのだから、それを超える「利上げ」は出来ない

 バブル崩壊後の日本では、金融政策も財政政策も "費用対効果" 、今風に言えば ”コスパ” が悪い。例えば今回の日銀 ”リーク” 戦略も政策効果を削いでしまっているFXトレーダーが学んだのは実際の決定が過ぎたら「キャリートレード」で「円売り」を再開すればいい、という成功体験。サプライズがないのだから再び+5%の金利差を取りに行くのは "鉄板戦略" である。

 例えば今回も①発表と同時にドル売り介入とか ”リーク” されなかった予想外の「マイナス金利廃止」の札を出してドル円を@145円に押し下げれば、マーケットには日銀に対するRESPECT≓畏怖が生まれる。将来価値的にいうと、いずれ切るカードなら最も良いタイミングで出す方が費用対効果は高い ≓ ”コスパ” が良いアメリカの政策担当者にはそういうビジネス・リスク感覚があるが日本にはない。それがそのまま国力差に繋がっている。

 とはいえ日銀の抱いている懸念も判らないではない。まず気になるのは中国の巨額な不良債権+過剰債務の行方だろう。これがタダで済まないのは素人目にも明らかで、より精緻な情報を掴んでいる日銀なら尚更。

 先日日本を抜いてGDP世界第3位に踊り出たドイツも、行き過ぎた中国傾斜が祟ってマイナス成長に陥りそう≓リセッション。ただこちらは財政規律は守られており、ジャブジャブばらまいた「円」がいかに "死に金" だったか、いみじくも証明してしまった。「投資」のリターンを考えない「清貧思想」の国・日本はあまりにも「お金」をぞんざいに扱い過ぎる

 ここで敢えて ≓ 「中立金利」を巡る議論。ー 最早「マイナス金利政策」など論外。|損切丸 (note.com) に立ち返って見よう。

 学者筋では「自然利子率」という言い方を好むようだが、マーケットでは「潜在成長率」≓「自然物価上昇率」、つまり何もしない状態でどれだけ経済が成長するか( ≓ 物価が上がるか)を基準に考える:

 「自然利子率」≓「潜在成長率」
 グローバリゼーション前:  アメリカ+3.0~3.5% > 日本+1.0~1.5%
 グローバリゼーション後:  アメリカ+2.0~2.5% > 日本+0.0~0.5%
 反グローバリゼーション後: アメリカ+3.0~3.5% > 日本+0.5~1.0%

 中銀による「中立金利」は「潜在成長率」+1%程度と考えられており、現在のアメリカの「中立金利」は@4.0~4.5%程度「コロナ後」の人手不足等供給要因に対応するため「中立金利」+1%程度まで「利上げ」が行われている。「インフレ」が落ちつけば「中立金利」=@4.5%程度まで「利下げ」されていく。この辺は現在の米国債金利水準と整合的だ。

 日銀の元幹部が日本の「中立金利」を@1.8%と示したが、アメリカと比べ不良債権処理に時間をかけ過ぎて成長が鈍っている日本としてはまあ妥当。財務省の「想定金利」@1.5%も同じ発想から来ている。

 70代の植田総裁としては、JGBの金利も着実に上がっているし何が不満なんだ、という思いもあろう。だが今の世はAIが動かす ”スピード時代”昭和の時代に国会の評決を真夜中まで遅らせる「牛歩戦術」というのがあったが、今の日銀の「サラミ利上げ」がまさにそれ。見ていてヤキモキする。これではマーケットの変化に追いつけない。

 本音を言えばアメリカの「インフレ」が収まって金利が下がるのを待ちたいのかもしれないが、それでは日本としての成長戦略が描けない。「金利」≓「潜在成長率」が上がるほどの変化が望まれるが、今の「お金」の扱い方のままでは難しい「投資」同様、もっと「お金」に働いて貰わなければならない「金利」はいかに「お金」が働いているかのベンチマーク。バブル期には出来ていたのだから、同じ日本人に出来ないはずはないのだが...。

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