「盗人猛々しい!!」- 通貨ウォン暴落の引金に。日韓の揉め事から学ぶ「世界」の中で生きる術。

 今回はマーケットの話から少し離れてみる。お読み頂いている方はしばしお付き合いを。2つのパターンを以下に列挙する。

 「Kパターン」

①自分はいつも「正義」。正義の前では約束や契約、証拠などは無意味。 

②自分に不都合なことは大声で叫びかき消す、または別な話にすり替える。

③何か悪い事が起きたら、それは全部他人のせい。自分のせいではない。

④感情に訴えかけて話を大きくし相手の動揺を誘い、議論を優位に進める。

⑤結局はお金。

 「Jパターン」

a. 約束や契約は、たとえ内容に不備や不満があっても破ってはいけない。(あるいは不備部分の内容を改正する)

b. 不都合なことがあってもみっともないのでわめきちらしたりしない。

c. 悪い事が起きてもまず事実確認。こちらに非があれば謝罪。

d. 感情的な対応はなるべく控え、揉め事は最小限に止める。

e. お金に執着するのは卑しい。いわゆる「清貧思想」。

 もうおわかりと思うが、K=韓国、J=日本のパターンである。どちらが良いとか議論するつもりはないが、このK、J が不毛な罵り合いを続けているのが昨今のホワイト国などを巡る日韓紛争だろう。

 「Kパターン」を日本人が見るとクレーマーやストーカーの対策マニュアルにでも出てきそうな文言にも見えるが、欧米流のディベートのテクニックに共通する部分もある。韓国はキリスト教信者も多いと言うし、おそらくアメリカなどの「自己主張」文化や欧州の「個人主義」を模してきたのだろう。それがサムソン電子などが世界的な企業に躍進してきた原動力となってきた側面はあるのも事実。とにかく自己主張には長けている。

 逆に「Jパターン」を見ると、日本人にとっては全く当たり前だが、実はグローバル、特に欧米では通用しない部分もある。それが日本の良さでもあり、また弱点にもなるのだが、世界市場における強い交渉力の欠如は、日本の機械産業の弱体化につながった面も否定できない。最近になって欧米流の「個人主義」を取り入れようとする試みもあるが、まだ日本では「利己主義」と混同されているように感じる。

 それでは本当の「個人主義」とは何か? 日韓ともに決定的に欠如しているものがある。それは相手に対する尊重、敬意、英語でいう RESPECT だ。

 筆者は英国の銀行で22年働いたが、まあいろいろ勉強になった。例えば出張でロンドンの本店を訪れると、ディーリングルームで朝からトレーダー同士が大声で「罵り」あっている。日本人の筆者にはケンカにしか見えないのだが、10分も経つと2人ともニコニコ笑いあっている。彼らはそれこそ大声で自己主張しあうが、同時に相手の主張もRESPECTしている、という。つまり、相手の意見の尊重=RESPECTがあるからこそ自分も強く主張できるという理屈である。これが本来の「個人主義」だと悟った。だから(日本人にとっては)見た目はケンカでも、決して感情的になっているわけではない。

 筆者はどちらかというと日本の銀行にいた時は、(このnoteでグダグダ書いているように)理屈っぽくて、何かと黙っていないタイプに分類されていた。ところが外資に転職したら、人事考課で度々、You are too quiet.(お前は黙ってばかりだ)と言われた。ある会議で、あまりに頭にきたので「そんなのできるわけないだろ!自分で何とかしろ!」とぶち切れて言ったら、むしろ褒められてしまった。「それでいいんだよ」と。

 確かヤンキースに行った松井選手が当時のトーレス監督に「もっといろいろ言って良いんだぞ」というようなアドバイスをされていたことを記憶している。筆者も上司や同僚に恵まれたことはとても感謝しているが、ただ「正しければ黙っていてもいつか分かって貰える」的な日本の常識が世界では通用しないことは痛感した。それだけ日本はある意味特殊なのである。

 香港での実話。  ローカルスタッフの人事異動を発令したときに、「そんなこと聞いてない!」と噛みつかれたことがあった。こちらは普段の態度などで、それこそ「日本流」に示していたつもりだったが、彼に言わせると何も表だって注意や警告をされていないのに突然の移動は不当だ、ということらしい。  現地のローカルスタッフからも「日本人は怖い。突然命令が下る」といった言葉を浴びたこともあった。ばからしいと思っても、日本の外では声に出して言うことが必要な時がある。「あ・うん」では通用しない。

 そういう意味では、日本政府が今回8か月もかけてメッセージを発し続けた事は評価したい。まあグローバルスタンダードではもう少し強く言うべきだったのかもしれないが、少しずつこの国も変わってきているのだろう。韓国の間違った情報発信についても、その都度きちんと否定していったのも効果的だったと思う。今までなら面倒くさがってやらなかっただろうが、世界の中の世論戦ではこういうことも必要だ。

 さて翻ってKパターン。彼らも世界の市場でより欧米流のやり方でのし上がってきたので、日本より自分たちの方が上、という自負はあるのだろうが、今のやり方は自尊心が溢れすぎてしまって自己主張もただのエゴにしか感じられない。そう、全くRESPECTが存在しないのである。だから、欧米からの理解も得にくいし、まして「特殊な日本人」とはうまく行くわけがない。自己意識が肥大化してしまって、勝てるケンカかどうかさえ判断できなくなってしまっている。

 日本も「Japan As No.1」などと言われた時にアメリカにケンカを売って大変な目に遭ったが、これらは日韓とも「驕り」であろう。この点、英国などは老獪で勝てないケンカはしない。

 こういう時、マーケットというのは冷徹で、非情な裁定を下すものである。今回のケンカはKの負け。為替のドル/ウォンレートが防衛ラインの1200を昨夜軽々と突破してしまった。きっかけは文在寅大統領の「盗人猛々しい!!」演説だと「損切丸」は見ている。あれを見て市場参加者は韓国政府は何も現実的な対策をしてこないと確信したはず。おそらく介入の為のドルも底を尽きかけているのだろう。

 想像してみて欲しい。業績が悪化して資金も尽きかけている K 社に取引先の  J 社が取引の縮小を通告してきた。そこで社長が社員向けの緊急集会を開き、「 J 社のせいで業績が悪くなった。でも我々は絶対に負けない。みんなで頑張ろう!」と声高らかに演説をして一部の取巻き社員が拍手喝采。これを見たら他の一般社員はどう思うだろう。しかも給料をK社の株で支給すると言う。おそらくもらった株はすぐ換金し、場合によってはK社を辞める人も出るだろう。そんな内情が社外に漏れたら、K株の売却は必至。取引先もますます離れていってしまう。

 通貨というのは国家の株式のようなもの。いくら J のせいにしたくても、自国通貨の事は自己責任である。あとは韓国民(社員)がウォン(株)を売って逃避行動にでたらお終い、ベネズエラパターンに陥ってしまう。信用不安の高まりから、韓国の銀行もドル資金の調達がかなり困難になりそうだ。

 これで通貨危機は3度目ですか。いい加減学習した方がいい。まあ、かく言う日本人も日経平均が8,000円割れになるまで民主党政権の失敗から目を背けていたわけだから、韓国も行くところまで行くしかないかもしれない。そして理想に燃えたあとの反動も大きくなる - それでも欧米流を貫くなら「個人主義」について一から勉強し直すべき。もっとも南北朝鮮統一のための予定行動だとしたら確信犯なのではあるが。

ps. 「驕り」といえばマスメディアもいい加減、これまでのように世論を誘導できるという幻想は捨てた方が良い。ネットでも大分叩かれているが、今回は偏向報道が凄かった。明白になって良かったとも言えるが、日本のメディアがこれほど一定勢力に牛耳られているとは。  SNSやネットにもいい加減なコメントは溢れかえっているが、中にはとても有用なコメントもあり、特に現場や現地から発信されるものには読ませる力がある。それに比べて、匿名とか関係筋とかあやふやな大手メディアの記事はまるでゴシップ誌。15年前ぐらいまではこんなじゃなかったのになあ...。せめて裏はきちんと取って「読ませる記事」を報道して欲しい。

 ふ~。長いつぶやきになってしまった。ここまで読んで頂き感謝。

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