湯気とともに去りぬ
私は常々、蒸篭には人を癒す力があると思っている。竹を編んだ丸みを帯びたフォルム、立ち昇る湯気、そこから浮かび上がるふかふかもちもちの何か。大抵の煩悩は、蒸篭を開けると湯気とともに消えるのである。
そんなわけで、無職2日目の心の穴を埋めるべく、鬼まんじゅうを蒸した。
(読み返してみたら、今年の1月にも蒸していた。)大きなさつま芋を角切りにして、塩少しと砂糖をまぶして、汁気が出てきたら小麦粉を加えてだまにならないよう混ぜるだけ。
あとはフライパンに水を張って沸騰させ、銀の板をはめて、その上に蒸篭を2段。小さく切ったクッキングペーパーに鬼まんじゅうの種を丸くぼてっと置き、1段に4つずつ載せていく。蓋をして、20分蒸したら歓声。そう歓声だ。
今日はまた娘が微妙に発熱し、一緒に作れなかった。息子は、お砂糖をまぶすのと、ぐるぐる混ぜるのを少し手伝ってくれた。そして、蒸したての味見。「これはおあじみ?ほんとうの?おあじみなの?」と困惑しながら丸々1つを夕食後に食べていた。夫にはひとくちだけ、そうっと食べさせてあげていた。こういうときケチなのも可愛い。
このレシピだと蒸しパンみたいな感じではなくて、芋を小麦粉でつないでいるだけ。でもそれがいいの。むちっと、芋を引きちぎりながら口に放り込む。ほんのり甘く、どこまでも優しい。
ほら、煩悩は湯気とともに消えて、私の頭の中は明日の朝に食べる鬼まんじゅうのことだけだ。鬼まんじゅうと、冷たい牛乳。あったかいほうじ茶でもいいな。
【鬼まんじゅうの作り方】※とてもざっくりレシピです
1. さつまいも中1本を皮をむいて角切りにする
2. 塩ひとつまみ、お砂糖大さじ4程度をさつまいもにまぶす
3.時間が経って水分が出てきたら、水を捨てずに小麦粉を混ぜる(3/4カップくらい)まぜながら、もったりとしてダマがなくなるまで。粉っぽかったら少しだけ水を足す、水を入れすぎたら粉を足す
4.蒸篭で20分くらい蒸して、歓声
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