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カレーがおいしい1日

朝から予定がなんにもなく、あまりに暇だった。
電車を乗り継いで、少し離れた公園まで出かけることにした。

車なら1時間くらいで着くから、よく家族で出かける場所。遊具もあるし児童センターもあるし芝生広場もある。とにかく広い公園。だが、今日は祝日なので夫はいない。世間は4連休…

なんか特別にならんかな…と思って、試しに「電車で遠足する?」と子ども達に聞いてみると、もう撤回できないほどはしゃぎ始めた。リュックにおやつと好きなものを詰め込んで、水筒を下げて、いざ。

うちから最寄り駅までは徒歩20分かかる。子どもの足だと30分。歌を歌い、手を繋ぎ、マンホールの蓋を踏む。(我が家では、マンホールを踏むときに「ぴんぽん」と声に出せば、ポイントが加算される仕組みとなっている。)足取りは軽い。

駅で切符を買う。娘が千円を入れ、機械がジジジ…とそれを差し戻し、攻防戦をしている。うまくいかない。娘の顔が真剣でかわいい。券売機もエンタメ。

見慣れた街の中を、4両編成の各駅停車がガタゴト走る。私ひとりならばただ無表情にスマホを眺める時間だが、子ども達には特別な時間。

ただ座席に座る間すら、ふたりの胸の高鳴りが聞こえるよう。娘がいそいそとリュックから漫画「あさりちゃん」を取り出す(なんかシュール)。息子がそれを見て、小さなリュック から雑誌「幼稚園」を取り出し、すまし顔で読み始める。そんな大きいの、ようリュック に入ったな…

その後、「切符!切符とってぇー!」と改札を抜ける息子にシャウトしたり、スリリングな展開もありつつ電車を乗り換えて目的地に到着した。この時点で、母は十分に疲れている。

その公園では謎解きが開催されていて、広い敷地内を徒歩で回るのだ。気合いを入れて挑むしかない。

まず、1つ1つの地点が遠い。迂回しないと道が通じていない。そして何より、暑い。子ども達は楽しそうに飛び跳ね、「ぴんぽーん!」とマンホールを踏み締める。帰り道に電車で寝てしまうのでは…とついイメージしてしまうが、脳内から振り払う。

あっち、こっち、え、意味わかんない、と頭を捻って動き回り、途中で園内にあるスガキヤ(ラーメンチェーン)にピットイン。

あの伸びた麺とDNAに染み渡るスープ、上から鬼のようにコショーを振って、食後にはソフトクリーム。魂が高校生に戻ってしまいそうな懐かしさ。

関西出身の夫はスガキヤを「まずくて食べられない」と言うので、スガキヤは滅多に食べられない3人の秘密グルメ。

ソフトクリームで冷たくなった口に、スープをひとくち。これが一層うまい。御行儀は悪いけど、スガキヤはそういうものなの、と教育する。スガキヤ道は私が守り、娘が受け継ぐ。

若返った魂で再びルートに戻り、息子の破茶滅茶な謎解きをナビゲートしながら遥か遠きゴールを目指す。階段を登ったり、坂道を歩いたり、途中で遊具に気をとられたり、一筋縄にはいかない。誰だこれ考えたやつ。「痩せる、きっと痩せる…」と自分を鼓舞して歩いた。子ども達も、歩みが遅くなっていく。

最後はわけわかんない問題に心折れそうになるも、娘が見事に解いてくれて、ハイタッチ。すごい。娘、天才。ありがとう。ああ、終わった。歩いている時間だけで4時間かかった。

すこし休憩してから再び電車に乗り、今度は優雅に乗り換えて、駅から家までを歩く。ふたりともにこやかで、眠くなるそぶりもなく、頼もしい。君たち、もう大人じゃないか。母さんはヘロヘロ。

家についたら夕方だったが、冷蔵庫には前日に仕込んでおいたカレーが待ち構えていて、心は安らか。私も天才だ。

ご飯を炊き、簡単なサラダを作って、カレーを温めればおしまい。ご飯が炊けるまでにお風呂に入り、さっぱりした体で大盛りのカレーライスを頬ばる。天才的においしかった。

14000歩(9.8km)の旅路。
たのしかったね、たのしかったねと繰り返すふたりが、この疲労を甘い記憶に変えていく。
息子は眠りに落ちる直前、「おちんこりん」という謎の言葉を残してにんまりと笑った。

#日記

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