IT業界の“人月”計算
IT業界では、仕事量を見積もったり、工程計画を行うために様々な手法を用います。
その中の一つに“人月”(にんげつと読む)計算があります。
「1人が1ヶ月間働いてできる仕事量」を1人月と数えます。
あるプロジェクトが「30人月」だとすれば、
・1人で進めれば、30人月÷1人=30ヶ月
・2人で進めれば、30人月÷2人=15ヶ月
・5人で進めれば、30人月÷5人=6ヶ月
・10人で進めれば、30人月÷10人=3ヶ月
というように、スケジュールを見積もることができるんです。
ではこの1人月とは実際にどれくらいの仕事量なのでしょうか?
この記事によると、『1日8時間×20日=160時間』を1人月としています。
・・・えっ?
これって順調に仕事が進み、週休2日で定時に帰ることができる前提になってますよね?
・メンバー同士のミーティング
・突発的なトラブル対応
・来客や電話の応対
・バグの修正
・要件変更や仕様変更
などなどの、様々な状況に対応するための時間が盛り込まれていません。
つまり、『遅れが生じたら残業・休日出勤するしかない』ということです。
先ほどの30人月であれば、順調に進んだとして30人月×160時間=4,800時間分の仕事量です。
仮に20%ほどのトラブル対応が加わったとすると、5,760時間にもなります。
ということは、残業が960時間・・・1ヶ月あたり32時間です。
これが常態化するというのはいささか問題ですよね。
もちろん業界ではこの問題に対処するために努力を続けています。
残業ゼロをうたう企業もありますし、健康経営を推進する企業もあります。
健全な働き方を進め、ホワイト企業も非常に増えてきました。
ただ、“人月”計算の前提となる時間だけが取り残されているようです。
先ほどの記事中でも、『1ヶ月あたり130時間程度が適切ではないか』と提案しています。これは約20%、1日あたり1.5時間ほどのゆとりを持たせた時間です。
これくらい、個人の裁量で調整可能な時間が組まれていれば、かなり余裕を持ってトラブルに対応できるのではないでしょうか?
どれくらいの仕事量が必要なのかを計算できなければ、仕事の価格も設定できません。技術料として適正に価格設定するには、“人月”のようなわかりやすい基準が必要なことは理解できます。
でも一方でわたしは、“人月”という考え方に『人を物として見る』ような印象を抱いています。人間をロボットや機械のように、文句も言わずに一定の速さで正確に作り続ける物として見ているような・・・そんな感じがぬぐえません。
これからますます発展していく業界ですから、しっかり稼げて働きやすい、人が人として認めてもらえるような夢のある働き方が描けるといいですね。
明日も佳き日でありますように
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