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「若害」とは

近頃、「若害」という言葉を目にします。これは、職場や社会における若者と、既存の大人社会との間の価値観や行動の違いから生じる問題を指しているようです。さらに読み込むと、このギャップは、若者が過度に保護され、批判に弱く、また、既存企業の期待に応えるための主体性に欠けると見られることから生まれています。  

そこでこの度は「若害」と呼ばれる現象を、現代の社会問題として捉え、これを若い世代への配慮を前提に考慮します。

職場における現代の若者の課題

若害と呼ばれる現象を現代の問題意識や若者への配慮の観点から考えると、これが単なる若さゆえの失敗や過ちによるものではないことがわかります。この現象は、現代の社会的・経済的な変化が、若い世代の仕事環境との向き合い方や、態度や行動にも、特有の影響を与えていることを示しています。

1. 社会不安とキャリアに対する不安

若い世代の人たちは、間接的にも、2008年のリーマン・ショックや2011年の東日本大震災、さらには2020年の新型コロナウイルスの流行など、大規模な社会経済的危機を経験しています。これらの出来事は、若者たちに社会全体への不信感や、不安の種を植え付け、安定した職を求める一方で、企業や政府に対する依存度を減らす傾向を提供した可能性があります。

例えば、若者たちは入社初日から「自分のキャリアプランをどのように企業が支援してくれるか」を尋ねることがあります。これは、これまでの企業の期待する態度とは異なるかもしれませんが、自分たちの未来が不確かであるとの認識に基づく対応として、自己の成長とキャリアパスを明確に求める動きとも考えられます。

2. 希少性と売り手市場

日本の労働人口は少子高齢化により減少を続けており、特に若年層の労働力は「希少資源」となっています。その結果、若者が職場で持つ「交渉力」が以前よりも強まっています。例として、若手社員が勤務条件や役割に対してより多くの要求をするケースが増えており、これが従来の職場文化との摩擦を生んでいます。

3. 教育と育成のギャップ

現代の教育環境では、学生に対して失敗を極力させず、成功体験を積ませる方向でカリキュラムが組まれる傾向があります。このため、実際の職場環境で初めて直面する困難や失敗に対処する能力が不足しているとも言われます。例として、少しの批判やフィードバックで動揺する若手社員が多いことが挙げられますが、これは、教育期間中に充分な対人スキルやコンフリクトマネジメント(他者との対立を建設的に処理する方法)の訓練が行われなかった結果です。

4. 価値観の多様性

現代の若者は、個々の価値観やライフスタイルが多様であり、これが従来の企業文化や階層的な組織構造に適応しにくい原因となっています。彼らは仕事を通じて社会的な意義を見出したり、ワークライフバランスを重視する傾向を持っています。企業がこれらの価値観を理解、尊重することなく、命令的な管理を行うと、若者との間に深い溝が生まれることがあります。

まとめ

現代の若者には、企業や社会への不安や不信感から、自らの成長やキャリアプランを重視する傾向が見られます。これによる既存企業が育んできた文化や期待とのギャップには、少子高齢化や売り手市場、社会不安などの社会経済的な背景が影響していると考えられます。これらの現象を踏まえ、企業や組織には、若者たちの特性を理解し、適切なサポートや環境を提供することで、彼らの潜在的な能力を引き出し、世代間の調和を図る視点が必要です。

現代の若者たちには、既存の企業文化が望みたい(これまでの)期待値にまっすぐに応える力が足りないと感じられる場合があるかも知れませんが、DXの取り組みをはじめ、テクノロジーやツール活用、現代のマーケティング施策、ITリテラシーへの順応性の高さ等、これからの社会環境の整備や作成に生かせる特性も育ちやすい世代です。
彼らが育ってきた社会・経済・教育環境を良しとしてきた私たちには、彼らによるこれからの社会が立ち行くように、適切にバトンを渡す責務があります。

「若害」との表現は、若い世代を表す言葉ではなく、現代の私たちが取り組むべき、社会課題を表しています。

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