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#3 喉元に突きつけられた鋭利な言葉

※タイトルちょっとカッコつけました笑

先「岡安さんお入り下さい」

番号ではなく名前で呼ばれ診察室へ。
神妙な面持ちの先生はすぐに話し始めた。

先「色々病院で検査をしてもらった方がいいですね、
明後日金曜はどうですか?」

岡「その日は仕事ですね」

先「では来週の月曜日は?」

岡「月曜日は大丈夫です」

先「そこで胃カメラとMRI検査予約します」


更に血液検査・レントゲン•造影CT•PET検査。
名前もやり方も内容もよくわからない検査があったが
次々に決まって行く。

ん?そんなに沢山?急に何だ?
前の病院はエコーしながら注射くらいの話だったのに。
朝見た鉛色の空のように雲行きが怪しくなった。


先生は続ける


先「色々調べて結果が出てから今後の方針などを決めて
いかなければなりませんが・・・」


え?方針?なんだ?どういうことだ?

先「ステージによっても変わりますし」


ステージ?先生は何の話してるんだぁ?
すると奥に座っていたうちの司令塔が動いた


ゆ「つまり、何の病気の疑いがあるんですか?」

先「先程見ただけの判断ですが、岡安さんの喉に
下咽頭(かいんとう)がんの疑いがあります」


かりんとう?
お菓子の?
なんだ?
ガンって言った?
嘘だろ?

先「首のしこりはおそらくリンパ節にもガンが転移した
可能性があります」


転移?
俺の体で何が起きてるんだ?
もうそこからは先生の言葉はほとんど耳に入ってこない。

喉元に突きつけられた鋭利な言葉で頭の中は一気にパニックに陥る。


どうしようどうしよどうしようどうしようどうしよう
なんだなんだなんだ?
やばいやはいやばいやばい!
え?ガン?がん??癌??


嘘だ!ちょっと待った!
これはなんかのドッキリ?!

いやぁ、こんな手の込んだドッキリを
仕掛けるわけがないか・・・


そういえば『ガン』ってどういう漢字だっけ?
難しいことは分かるんだけど、なんか見た目が怖い漢字だったよなぁ。
一回も書いた事ないなぁ。
今それどうでもいいか・・・

こういうガン宣告するコントしたことあったな。
岡安が病院の先生役で旦那さん役は土谷で


岡安「旦那さん、大変申し上げにくいのですが、あなたの奥さんは・・・ファンです』」
土谷「え?ガン?ガンなんですか?」

岡安「いや、ファンです?」

土谷「ファン?うちの嫁はガンなんですか?なんのガンなんですか?」

岡安「奥さんはマッキーのファンです」

土谷「末期のガン?」

岡安「いいえ、マッキーのファン、槇原敬之のファンです」

土谷「は?」

そこに奥さん役の下池登場・・・

今関係ないか。なんでこんなこと思い出すんだろ・・・


頭の中はガンの恐怖から逃げようと必死にぐるぐると無意味な回転を続けていた。

【下咽頭癌】
喉の一番奥に出来るがんで、頭頸部がんの1つです。このがんは、初期のうちは自覚症状がみられないことがあり、発見時はステージ3〜4のことが多い。
自覚症状としては、飲み込むときの違和感、おさまらない咽頭痛、のどからの出血、耳の痛み、口の奥・のど・首にできるしこり、声の変化があげられます。食道、胃などの転移する可能性も高く、更に頭頸部のリンパ節にガンがあるとなると血液に乗って全身に転移する可能性もあるので隅々までの検査が必要

                           岡安診療所調べより

鼻をすする音を背中で感じて振り返ると、
ゆうちゃんの目にはいっぱいになった涙。

我慢して我慢してる。

先生の話を聞こうと一生懸命耳を傾けているが何かの
拍子に限界値を超えて決壊した。

ゆ「おかちゃん・・・おかちゃ・・・ん」

先「奥さん、まだ決まったわけではありませんよ」

ゆ「・・・はい・・・」


申し訳ない…ガンかもしれない…ごめんねゆうちゃん。


涙の司令塔は、ゆっくりとベンチに下がり、
静かに先生の説明を聞いた。

                     つづく

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