第12回ぷちコンのゲームデザイン

こんにちは、床です。

アンリアルエンジンで作品を作って応募する「ぷちコン」に応募したところ、113作品中の8作品にノミネートされ、Unreal Fest East 2019で展示して頂きました。

「あの椅子をみちびけ!レイ&バン」というゲームです。

1.テーマ発表~テーマ決定

今回のテーマは「れい」でした。令和、霊、礼など、なんでもOK。

色んな捉え方があると思いますが、自分の場合はゲームメカニクスは「れい」に直接関係あるものにする(アセットはメカニクスにあっていれば「れい」でなくても良い)という縛りを設けていました。
そして、考えた案が以下の通り。

■令(令和):元号おじさんが、元号カードをめくる。間違った元号(冷和など)だったらカードを撃ち抜く。おじさんを撃たないようにする→絵的に面白そうだけど、そもそも漢字を見分けるのがあまり好きではない
■霊:グレイマンにお墓参りをさせてお墓を進化させるアート主体のエモゲーム。これはプロトタイプを作りました。https://youtu.be/XX26282ls0s 結果→良い感じだけど具体的なゲームデザインが思い浮かばない
■人狼鬼ごっこ(?)→複雑すぎて作り終わらなさそう
■礼:グレイマンにお辞儀をさせて、主人公に背中渡りをさせるパズルゲーム→これは良さそうだけど、ビジュアル表現とかモチーフが思い浮かばないなあ、、

ピンと来ない企画で実装を始めても、ピンと来ない作品しかできない(しかも迷いがあるので工数はかかりがち)と常々感じていることもあり、中々取り掛かれずにいました。(「最初に思いついた企画ではじめるな」と、どこかのゲームデザインの本に書いてあったような気もします)

上記の案のなかでは「グレイマンにお辞儀をさせて、主人公に背中渡りをさせるパズルゲーム」が一番明確にメカニクスが想像できたけど、全然モチーフが思い浮かばなかい、、締め切りが9/16なのに、うかうかしているうちに気づけば9月に、、半ば諦めていたところ、流星のごとくあらわれたモチーフがこちら!

アンリアルエンジンの公式グッズですね。フェスで販売予定でしたが、CEDECで先行展示(?)していました。最高。パズルゲームにぴったりの形状。モチーフはこれでいくしかないでしょう。

CEDECのタイムシフトも見なければならないのに、出す決意をしてしまった時のツイート。

2.ゲームデザインの基本


「グレイマンにお辞儀をさせて、椅子に背中渡りをさせるパズルゲーム」
具体的にはどうなるでしょう?最初に浮かんだイメージがこちら。

説明1

通常のグレイマン(左)は1x1マスの中に納まっている。
礼をした状態のグレイマン(右)は3x1マスを占有する。また、背中は道になるので、主人公(椅子)が移動できるスペースとなる。

背中を渡る

イメージその2。グレイマンを「礼」させることで、赤いボールが、手前まで移動できる道をつくるイメージです。

レイヤー 2

(実際にはグレイマンを礼させても3マス分占有する比率にはならないので、「礼をさせると光る道が現れる」という視覚的表現にしました)

次に、プレイヤーは具体的に何をすれば良いか、考えます。

問題

①あらかじめスタート位置とゴール位置が示されており、さらにグレイマンも配置されています。
②各グレイマンを「礼」させた状態にすることで、各グレイマンの位置から数えて3マスの道をつくります。道をつくる方向は、上下左右どれでもOK。そのようにしてスタートとゴールを繋げた場合、どのような経路が考えられるか??答えは、、、

解答_アートボード 1

こうなります。一見簡単そうですが、

■この説明では俯瞰視点(上から見た図)だが、実際には横からみて操作するので、ものごとを立体的に考える想像力が必要
■グレイマンを操作する前に、どのような道を作るべきか、あらかじめ計画的に想像することが必要(実際にグレイマンを操作しながら考えることも可能だが、想像でシミュレートする方が圧倒的に時間の短縮になる。)

なので、、、この表現が適切か分かりませんが、基本的に「右脳に負荷がかかる」はずです。「想像する(右脳系)」⇔「操作する(左脳系)」を繰り返すと、脳トレのようになって楽しいのでは?と予想していました。しかし、実際に実装してみると

慣れたプレイヤーにとっては、一本道でつまらなかったです

やっぱりね、、ということで、対策をします。

3.オプションを加え、ゲームに幅をもたせる


■解答を複数用意する

基本のグレイマンだけ設置しても一本道ゲームになってしまってツマラナイので、オプションのグレイマンを設置することに。例えば、先ほどの盤面にオプションを一体加えて次のようにします。

問題2

黄色いのが、新しく加わったグレイマンです。こうすると、新たに

画像6

このようにな経路が考えられ、先ほどの解答と併せて

画像7

このような2種類のアンサーが得られることになります。
プレイヤーは解答例①と②、どちらでクリアしても構いません。
①に近い形でクリアした場合→報酬を与える
②でクリアした結果、時間的に速いクリアができる傾向にある→制限時間を10秒残してクリアしたら報酬ゲット

このように決めました。

■ミッションを与える

①を達成するガイドとして、ミッションを与えます。ミッションでは「グレイマンを何体使うべきか」「グレイマンを何体使わないべきか」を指示します。ゲーム中では、「レイ〇体、バン〇体でクリアせよ!」というメッセージが与えられます。

画像10

この時点で新たに「バン」という機能を実装しました。「バン」は「クリアに使用しないグレイマンをあらかじめ盤面から除外しておく機能」です。

ここで「レイとバンを組み合わせて、スタートからゴールまで道を作るゲーム」のメカニクスが最終決定しました。(オプションのグレイマンを置くことや「バン」の機能は、最初から計画としてはあったものの、実装とテストプレイをしながら実際にメカニクスに組み込むか決めようと思っていました)

決まった道筋を辿るだけではなく、いくつもある経路の中から自分でクリア方法を選択できるようなゲームに近づいたと思います。

4.レベルデザイン(難易度調整)


■難易度を自動でばらけさせる

例として、オプションのグレイマンを下記のように置いた場合

アートボード 1

クリア経路がとてもわかりにくくなり、難易度が上がります。上の図ではあえてオプションのグレイマンの色を基本のグレイマンと同じ色にしてありますが、実際のゲームでもオプションのグレイマンと通常のグレイマンは見分けがつきません。

難易度が上がってばかりだと困りますが、オプションのグレイマンはランダムに設置されれば、レベルによって難易度は様々にばらけると考えました。具体的には

①ゴールまでの道筋をいくつも提示するもの(クリア難易度を下げる)
②ゴールまでの道を攪乱するもの(クリア難易度を上げる)
③明らかにクリアに関係のない場所に設置されているので、簡単にバン(除外)できるもの(ミッション難易度を下げる)

等のパターンがあるはずです。こちらは実際にプレイしてみたところ、そのような振る舞いになっていることを確認できました。

■難易度を徐々に上がっていくようにする

基本的にはプロシージャルにレベルを作成していますが、
①オプションのグレイマンの数
②盤面の広さ
③制限時間
は予め決めておくことで、徐々にクリア難易度があがる調整を試みました。

画像11

レベル15まではこのような感じで数値をいれてあります。レベル16に達すると、内部ではレベル1に戻ってデータを取ってきます。この場合、同じようなレベルを繰り返している感じは出ないでしょうか?こちらの対策として

■制限時間は2周目以降は短縮される
■オプションのグレイマンの位置、基本のグレイマンの数と位置は毎回ランダムに生成される

こちらを実装したところ、その心配はありませんでした。というわけで、一応、無限(intの限界までは...)にレベルがあることになります。

ゲームデザインの基本はこんな感じです!

4.反省点

・操作方法がわかりにくかったこと→チュートリアルが不親切だった。ど反省。
・そもそも操作方法は改善の必要があるかもしれない。キーボードから操作するなど、、。
・「少し立ち寄ってあそぶ」にはゲーム自体が、複雑だったこと
・時間制限が厳しすぎたこと。フェスでの展示を考えるならば、時間制限はなくても良かったかもしれない
・次回は友達や家族に遊んでもらい、その模様を観察して難易度調整をする
・ビジュアル表現の引き出しが少ない。自分の表現に向いているパイプラインを構築することは、普段からしておくべき。
・最後の方の実装の変更に伴うバグが残ってしまった。実装をすこしでも変更したら、一定時間プレイテストをする。

5.実行ファイル

ぷちコンに出した紹介動画はこれ
https://youtu.be/gKMAZ5a7u_I

実行ファイルを用意したので、遊べます
http://tiny.cc/i0t3dz

6.おわりに

反省点も含めて、良い勉強になりました!
ぷちコンは半年に一回開催されていますが、「つくる」→「ジャッジしてもらう」→「誰かにあそんでもらう」→「反省する」→(ノミネートされたりすれば実績になる)のサイクルが短期間でできるので、素晴らしいね!ブループリントとぷちコンでイテレーション回して、面白いゲームをみんなでつくろう~!

主催のヒストリアの皆様、アンリアルエンジンのエピックゲームズの皆様、協賛企業の皆様、このような機会を用意してくれて本当にありがとうございます!

では!

(自分で制作して持ち込んだ、グッズを載せる台。集光パープルのアクリルに彫刻をしたところが、Emissive + Bloomの感じが出ていて気に入っている)

(たぶん誰にも気づかれなかったおまけ要素)

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