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E-実用bikeで雪山の急坂を登って(下って)みる


E-bike(電動アシストスポーツサイクル)の可能性を検証する の続編 一昨年前から、クロスバイク型のE-bikeを使用目的に適した仕様に変更を加えながら、いろいろとその限界、あるいは特筆すべき優位点を検証してきました。重量物を積んでみたり、川の中を進んでみたり、階段上りや急勾配に挑戦してみたり、サイドカーを連結して重量物を搬送してみたり・・・ その結果、速度を求めるものではないものの、重量物の運搬や過酷な環境で信頼性を持って運用できることを確認できました。一方で、勾配に対しては非アシストに対して絶対的な優位を見せるものの、それでも乗車したまま踏破できなかった超急勾配においてはその車重により、人力で押し上げることが困難になることも実感しました。つまり「押して登る」「担いで進む」については非常に不利な乗り物である、現実的に不可能なことがわかりました。 そのためE-bikeを有効に活用するためには「限界勾配」「限界条件」を前もって知っておき、近づかない、コースに選ばない計画が必要です。 しかし、その「限界」は具体的にはどの程度なのでしょうか。勾配がある程度きつくても(舗装されているかぎり)踏破できることは実感しています。では滑りやすい路面での限界点はどの程度なのでしうか。このことが、検証必要だとずっとひっかかかっていました。 コンクリート舗装の急勾配の道は身の回りにもいくつかあります。有名なところでは奈良~大阪間を繋ぐ国道308号線「暗峠(くらがりとうげ)」があります。確かに国道としては急勾配(最大31%?)ですが、E-bikeにとっては問題ないレベルです。その他、市町村道、私道レベルであればいくつも急こう配の道はあります。マウンテンバイクライドで使うTNJの舗装路もきついながら重量物を積載したE-bikeで踏破できました。ところが、非アシストのマウンテンバイクでも無理だった、そして積載したE-bikeでも登り切れなかった坂が大阪府下にあります。4輪車でも恐怖に感じる急勾配でしかも距離も長く、これまでで知っている坂の中では最大級の「難所」と思います。積載有では登れませんでしたが、空身ではどうでしょう。しかもこの季節の雪、または凍結の条件下ではどんなことになるのか非常に興味あります。踏み固められた雪であればある程度乗って登れることをこれまでの経験で掴んでいます。E-bikeであれば体力(脚力)の問題は排除できるものの、その摩擦が低下した状態だとどうなるのでしょうか。ある程度登ってしまってから先に進むことも、引き返して下ることも出来ない・・・ なんてことになるのでしょうか。 1月になり、毎日の気象と、現地の積雪などの情報を毎日追跡していました。22日まで順調に冷え込みが継続し、また降雪もあって最大13㎝くらいの積雪がありました。気温も氷点下を維持してくれていれば、溶けて「氷化」することもなく、固く締まった雪であれば比較的好条件でした。 ・・・た。 ところが23日に暖かい風が低気圧と共に入り、雨も降ったようです。積雪は一気に5㎝程度にまでになりました。いえ、積雪量は重要なのではなく、その解けた雪の水が翌朝の冷え込みで「氷」となることが問題になります。案の上、月曜、火曜としっかり冷え込んで積雪量は維持、つまりできた氷板もそのままなのでしょう。山頂の積雪情報では同時に「アイゼン必要」「不要」のアドバイスが発せられます。日曜日は「不要」でしたが月、火は「必要」にかわりました。決行の今日、水曜日、実は帰ってからその情報を見たのですが「積雪5㎝ 気温ー3°」そしてアイゼンについては「ーーー」と無表記。そして「5㎝は氷の厚さです 非常によく滑ります」となっていました。(=アイゼンが)あっても効かないほどの氷ですよ) つまりこの情報は見なくても、この日の条件は「超最悪」だったということのようです。 陽が昇って直後くらいの時刻に麓のスタート地点に到着し、出発の準備をします。(この地点では)思ったほど寒くなく、上記の情報ほど酷いコンディションだということは想像できていませんでした。日曜の雨ですっかり雪が消えてしまったアプローチ道路を登り始めます。序盤は未舗装の緩やかな登り。問題ありません。次第に勾配がついてくるのと同時に脇斜面から流れ出た水が凍って路面の凍結した個所が出てきます。それらを上手く避けながら、いよいよ避けることも難しくなってきたため、タイヤの空気圧を少し下げて進みます。幸い、高度が上がっていくと路面の雪が多く残ってき始めました。融雪水が凍ったものよりは、雪の方が何倍も摩擦が大きく、比較的楽に進むようになってきました。それでも油断をしていると一様でない雪面の滑りやすい箇所に載ってしまったり、雪に隠れた氷板を踏んでしまって一瞬ヒヤッとするホイルスピンをなんども繰り返します。それでも何とか登っていけます。 いよいよ最大勾配区間に近づいてきました。見るからに、グッと勾配が増します。路面は踏み固められた雪。さらに前後のタイヤの空気を抜き、もはやボヨンボヨンの低圧状態(2kgfを切っているでしょうか)。このために今回はいつもの街用実用タイヤをIRCのブロックパターン(26x2.4 ミトスX)に特にリアは「新品」にしてきています。滑り出さないように ソーッと、しかししっかりとペダルを踏んでいきます。適度に後輪へ荷重を掛け、急なトルク変化を避けて一定スピードで登っていきます。 このまま行けるか?と欲張った考えが頭に浮かんだ瞬間、スルっと後輪が空転をして進めなくて倒れました。こうなってしまうとブレーキをかけても止まりませんし、ニンゲンが立っていることも出来ません。滑り落ちていく前に道路わきの土の斜面に入って体制を整えます。登山靴を履いてきていますが、全く歯が立たないため、ここでアイゼンを装着します。土踏まず部分に装着する小さなものですのでこのままペダリング、乗車が可能なものです。しかし、アイゼンなしではここから先に進むことも、そして押して下ることも出来ないでしょう。想定内の装備です。とにかくこの急勾配箇所を押してクリアします。前回は積雪が無くとも、キャンプ装備を満載の状態で推して上がることもままならなかったのです。 アイゼンのおかげで緩やかになるところまで押し、そこから再度乗車します。間もなく「峠」へ到着です。 峠以降は山頂まで比較的緩やかなアップダウン、特に困難な個所は無い勝手知ったる道です。が、日当たりの良い部分では融雪再凍結で氷板となっていて見事に転倒・・・ 想定内です。これまで非アシストでも登り切っていた登りで油断してか、まさかのスリップ。やり直し。あれ? さらに(広義の)山頂からの下り、やはり油断してしまって制御速度以上になってしまって慌てて自転車を倒して停止。アイゼンのおかげで事なきを得ました。展望広場へ行って撮影をしてきた道をもどります。普段は絶対にいかない「三角点」にも寄ってみます。それほどにいつも(非アシスト車)と違って体力にゆとりがあります。 さて、峠まで戻り、ここからが本日の一番の核心、最大勾配箇所の下りです(恐)。要は歩くよりも遅い位の速度までならブレーキ制御でタイヤを滑りださせないようにして何とか進む(下る)ことができるのですが、それを越える速度になった場合にはもうなす術はない、滑落ちるか壁にぶつかっていくしかない、のです。スタンディングでペダルにしっかりと荷重を掛けながら前後ブレーキの滑り出すぎりぎり手前の制動コントロールをしながらゆっくり、ゆっくり下ります。もし制御できない速度に入ってしまったら、無理な制動は避け、少しでも路面条件(グリップ)が良くなる箇所まで我慢してそこで制御の努力を試みる・・・ これらはこれまでの非アシストマウンテンバイクで何度も身に付けたものでE-bikeになっても変わらぬ乗車技術です。明らかに(アイゼンなしの)登山靴では立ってもいられないような斜面をスノー用でもないタイヤを装着したジテンシャ(マウンテンバイク、E-bike)が下っていけることの不思議はもう30年近く前にやはり同じこの場所で発見したこと。 そして毎年「スノーライド」の実施を続けているというわけです。 急こう配の核心部をクリアし、あとは隠れた氷板にやられないように、慎重かつ大胆に麓まで下って終了。 なんだ、2時間しか経っていない。 E-bikeを急勾配の雪道で使用した結果、あくまで埋まって進めないような深い雪を除き、沈まなければ問題なく、走行、登坂、下りができてしまうということ。アイゼンの靴には及ばないものの、アイゼンなしの登山靴よりもはるかに有効こ行動を可能にするものであるということ(アシスト、非アシスト問わず)。その上で、アシスト付きのE-bikeの場合、「一定のトルクで静かに漕ぎつづけなければならない」というシビアな状況ではゆっくり、力ずくでないペダリングのおかげか、非アシストよりもゆとりを持って雪上乗車ができるような感じです。抵抗の増える雪上でも負担が少なく進むことができる、という点もアドバンテージのようです。 最悪の条件の日に臨んだE-bike雪山ライドでしたが、覚悟していたほどの悲壮な状況でもなく、むしろここまで実用的に稼働できるとは驚きです。そしてなによりも楽しい♪ 「雪の積もる」「急こう配の」「登山対象の山」となるとそうそうあるわけではありませんが、そうした環境でもやむなくジテンシャを活用しなければならない場合に大いに有効な手段として生かせることを得ました。 あまりに楽しかったので、また「最悪条件」の見込めそうな日が有ったら再度行ってみたいと思います♪

(2022.1.26)

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