見出し画像

私は何者か、309


誰のためでもない。自身のための無防備をどれほど曝そうか。暗闇のなかの竜舌蘭のように、もう、見飽きたから、そんなにツンツン刺々しいのはやめて。けれど孤高で美しい姿。春ならば春の、花のように晴れやかに、そんな風に生きるというか、思うように生きていけたなら、そんな贅沢はないし、それに気づく日よ、気づかなかった日々よ、今がいちばん早いのである。それより、アイスを食べよう。アフォガートをかけて。懐かしいような、許される限りの甘えのようで、許されぬ、そう、戒めのようでいて、とても、自分勝手な甘美な解釈を迷いつつ、纏い。ビターとはそういうことをいうのであろう。黒曜石の海岸は甘いばかりの恋などと、そんなものは波に砕かれ、朽ちるのである。しっとりと湿り気を知っている者たちは、馬鹿騒ぎなどしないし、第一大人なのである。子供でないものが大人なのではない。真の大人になるために生まれてきたのだ。振り向けば皆同じ、ロトの妻のように石になる。前にしか道はないのだと、大人なら知っている。そんな大人に。


どれだけ生きたかなど問題ではない。


どのように生きたかを思い知るべきである。


まだまだ青い小さな砂粒。集まれば黒く輝く、黒曜石の海岸で。


何を待つでもなく。


君を待つ。



私は何者か。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?