おきぎんマイカーローン
おきぎんマイカーローンの、TVCM出演者を題材にしたスピンオフ小説。
ビュンビュンと、景色は高速で流れていく。 その景色に目をこらすと、たまに見えるものがあった。 巨大なピンヒール。 真っ赤な口紅。 色とりどりのメイクパレット。 粉っぽいファンデーション。 大きな鏡に向かう自分。 3年前、私は私を捨てた。 短大の頃は、流行りのメイク、流行りのファッションで、 出来るだけ沢山の人がするような行動を心がけた。 目立たないように、意見だって多数派に合わせた。 そうやっていれば、一人になる事はなかった。 大学を卒業し、社会に触れ
頭がズキズキする。 眉間を指でつまみながら、パソコンのキーボード横に置いた、ビタミン入りの スポーツドリンクを手にした。 体には気を使っているつもりだ。 2台のパソコンモニターには、オンラインゲームの戦場が映し出されていた。 このゲームを始めて、そろそろ3年になるだろうか、課金で装備を増やしながら しまいにはパソコンやキーボードにもお金をかけ、ゲームを中心に生活を変えていった。 家から出なくなって、そろそろ2年になる。 着々と続けていたが、最近は熱が冷めて
大きなハンドルは意外と細くて、小柄な私でも余裕で握れるほど。 アクセルをゆっくり踏み込むと、重い車体が滑るように、そして滑らかに加速する その感覚は、ジェットコースターを思わせた。 ゆっくり、じっくり、車の速度を上げる。 通り過ぎる景色が歪む、光が走る、髪が舞う、風が鳴る。 風の音に負けないように、大きな口を開けて叫んだ。 「うおーーーーーーーーん!!!」狼の遠吠えをイメージしてみました。 「うわおーーーーーーーーん!!!」二度目は本格的に叫びながら、 ポケッ
その車は、クラシックのフォルムに、シートもボディも ピカピカの可愛いピンク色をしたオープンカーで、 まさにインスタ映え間違いなし! その車に乗ると、まるでタイムマシンのように、 時間を加速して進むことができるらしい。 加速はするけど、歳をとるわけではないってとこは、 さすが女子のことをわかってらっしゃる。 頭にスパンコール付きのツノを生やした、真っ白なユニコーン以来の スイートな乗り物の存在は、脳みそが虹色をした、ファンタジーの住人である 私ぐらいしか信じな
僕は意外と冷静で、それはこいつの存在を信じていたからなのか、 そのまま運転席に飛び乗りハンドルを握り閉めると 流れるようにアクセルを踏み込んだ。 ピンクの艶やかなシートからは、車の色と同じくらい 甘ったるい香りを放っていて、目眩がするほどだった。 ものすごいスピードで車は走り出し、 体はシートに押さえつけられるほどで、 暗い外の風景はあっという間に通り過ぎ、 街の光が、線になって通り過ぎてゆく。 ネオンの光がパチパチと、フラッシュのように見えた。 鳥のよう
その車は、クラシックのフォルムに、外国のキャンディーみたいな 甘ったるいピンク色をしたオープンカーで、その車に乗ると、 まるでタイムマシンのように、時間を加速して進むことができるのだそうだ。 そんな都市伝説みたいな話が、この世界にはごまんと落ちている。 特に顔の見えないコミュニケーションの誕生で、そういう類の話は 一気に拡散して、一気に姿を消していく。 信じるか信じないかはあなた次第、だけど僕は信じたい。 大学卒業を目前に、やりたいことや構想はたくさんある。