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描く信念⑨ディヴィット・ホックニー展(東京都現代美術館/江東区三好)

ディヴィット・ホックニーという画家がいる。
彼は非常に多彩で、何でも描けるし、特に草木に対する描画は現在iPadで描いているらしい。
御年86歳の彼は「描く信念」と「イメージの疑念」に葛藤されていたのではないだろうか…

春は、必ず来る。

数年、コロナ禍が猛威を振るい、今年の夏はご無沙汰の行動制限の無い暑い日々だ。街を出れば以前とは考えられないほど人が多く行き交うし、諸外国から来日したグローバルな人々。
ようやく、以前の「日常」が戻ったような、そんな日々。

ホックニーさんはそんなコロナ禍で描いた1枚の絵がある。
その時に添えられた一言が、「春は、必ず来るよ。」だった。
見えない敵=ウイルスと闘う世界で出口が見つからず、突然の別れを強いられたり、職を失ったり、様々なことがどんどん押し寄せてくるなかで描いた作品。
そう、まるで終わりのない冬を過ごしているかのような日々だった。

しかし彼はちょっとの希望を胸に抱いて、描いたのだ。

ちょっとかもしれないけど、それは大事な希望なのかもしれない。

自分のイメージってなんだろう

ホックニーさんは当初、「自分」にフォーカスした抽象的な画を描いていたそうだ。もしかしたら葛藤があったのかもしれない。

「自分」なんて、どこから見ればいいんだろう。
どう表現すれば「自分」であるのか。

人物画

ポートレートのような、まるでそこに本人がいるかのような、画だった。
写真かと思うほどの、精密さのある画もあれば、デッサンのようにガサガサッと描いた画もある。
さすが、というか、ホックニーさんは王立の美術院を卒業しているそうだ。
自然と何かをスケッチする習慣が身に付いているのだろう。

デッサンのように描いた画は影もしかることながら、関節の微妙な彫りも表現が多彩。見習いたいくらいだ。

風景画

イギリス出身で、ロサンゼルスで活動しているホックニーさんは、風景画が好きなようで、まるでゴッホのような鮮やかで暖かみのあるタッチで描く。

色を重ねて、重ねて表現される風景は、ホックニーさんが窓から見た景色が表現されている。
日本の風景とはまた違った、のどかな風景だ。
鮮やかな色味なのにのどかな光景が広がって見えるのはなんなんだろう。

iPadで大作

ホックニーさん自身、数年前からなんとiPadを用いて描いているらしい。
80代後半ともなると、機械ものは億劫になってしまい分からず触れない人も多いなかで、なんともハイカラな。

長い長い作品が、そこにはあった。四季折々を感じる、大作だ。

iPadでここまで描くことが可能なのか。
私はPC+板タブ派だが、最近、数年前に買った初代SurfaceGoを再び手にしてらくがき程度で使うようになったけどもこんな細かな表現は出来ない(と思う)。

描き手なら、見てみると良いかも。

私はどちらかというと、漫画を描くほう。
いわゆる漫画ヲタクの端くれで同人活動を昨年秋からやっている。
しかし、根本は美術だと思っているので、こういったホックニーさんのようななんでも描ける画家の表現はとても勉強になる。

出先で描いた絵日記。

更に勇気を貰えるなとも感じる。

年齢を重ねても、いろんな情勢があっても、描くということを続けるのは非常に難しい。

描く勇気、続ける勇気、またはその先の狂気、を感じた展覧会であった。


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