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No.896 惚れ惚れする大きなハートの持ち主

もう30年も前のこと、オーストラリアから1枚の絵ハガキが届きました。見れば、その5年前に高校を卒業したM子が差出人です。えっ、海外移住?

向田邦子よろしく厳格な保険会社の役員を父親に持つM子は、小学生の頃から何度も全国規模の一家転住を余儀なくされたそうです。私が担任だった高校3年生の時、父親の大阪転勤に母がついて行きましたが、本人は頑として動かず、ここで高校を卒業しました。彼女は熱心な高校野球のファンで、野球部と共に甲子園に行き、アルプススタンドからの応援を夢見ていましたが、遂に果たすことは出来ませんでした。

彼女は東京の短期大学に進学し、卒業して金融会社の事務員として働いていました。
「今のうちに海外を見ておきたい。」
と、その時が3度目の旅行だったようです。海を渡ったといえば、四国しか経験したことのない私とは、えらい違いです。オーストラリアの青い海が、何とも印象的でした。

私など、外国旅行と聞くだけでも「生きて帰れるかしらん?」などと及び腰になるくらい「蚤の心臓」しか持ち合わせておりませんが、当時、20代の女性が海外への一人旅に出かけようというのですから、「並の心臓」ではありません。小柄な探偵ポワロ(162,5cm)より更に10cmも背の低い可愛い彼女は、大きな志ある人物でした。

日々の暮らしの中に非日常で彩をつけ、「静」と「動」を織り込み、人生に刺激を求める。21世紀を7年後に控えたころのお話ですが、若い女性の生き方・楽しみ方に惚れ惚れさせられる、そんな絵葉書でした。


※画像は、クリエイター・チルワカ/サーフアーティストさんの、「留学中のオーストラリアスナッパーの写真です」という説明のほどこされた1葉をかたじけなくしました。海の青さが目に沁みます。お礼申し上げます。