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No.664 はるかな遺伝子、「悩んでるタール人」?

1994年11月、弟・貴乃花が横綱昇進した時の口上は「不惜身命」(ふしゃくしんみょう=自分の身を顧みず物事に当たる)でした。その4年後の1998年5月、兄・若乃花の横綱昇進時の口上は「堅忍不抜」(けんにんふばつ=意思・節操が堅く、辛い時も耐え、心を動かされぬ事)でした。相撲界では、四字熟語の口上、「精神一到」(白鵬)、「全身全霊」(日馬富士)が続きました。
 
2015年(平成27年)のノーベル賞・医学生理学賞に北里大学特別栄誉教授の大村智(80歳)先生が決まりました。アフリカ等で寄生虫が引き起こす熱帯感染症に劇的に効く薬を開発し、何億人という単位で人々を救い続けている研究者だということでした。
 
テレビに映った大村智先生の部屋には、「至誠惻怛」(しせいそくだつ)の額が掲げられていました。知らない言葉だったので調べてみたら、「まごころ(至誠)と、悼み悲しむ心(惻怛)をもって接すれば、物事がうまく運ぶという諭し」だとかで、「越後長岡藩の幕末の武士・河井継之助が陽明学者だった山田方谷に師事した際、方谷から贈られた王陽明の一節である」とネットの記事から教えて貰いました。
 
その陽明学を提唱した王陽明の「伝習録巻中」の一節には「真誠惻恒」(しんせいそっこう)すなわち「真誠(まこと)の惻恒(こころ)」はあるものの「至誠惻怛」の言葉は見いだせなかったという報告もありました。研究者のご教示を得られれば幸いです。
 
その大村先生については、「ノーベル賞とは無縁の近所のおじちゃんだと思っていた。」と故郷の山梨県韮崎の人々から親しまれ愛されていました。気さくで飾らぬ人柄、地元に有益な施設をつくって利益を還元している誠実な御仁でもありました。

ところで、今年(2022年)のノーベル生理学・医学賞は、ドイツの研究者で、沖縄科学技術大学院大学にも在籍するスバンテ・ペーボ博士が受賞しました。ペーボ博士は絶滅した人類の遺伝情報を解析する技術を確立し、4万年前のネアンデルタール人の骨に残っていた遺伝情報を詳しく調べ、ホモ・サピエンスがネアンデルタール人の遺伝情報の一部を受け継いでいることを突き止め、両者間に種が交わっていた可能性を明らかにしたのだそうです。ヘーボタン乱打!
 
私たちの中にも「ネアンデルタール人」の遺伝子が脈々と生きているのでしょうか?私の中では、形を変えた「悩んでるタール人」の遺伝子が健やかに年を重ねています。

※画像は、クリエイター・Noriaki Kawanishi / 田舎暮らしデザイナーさんの、タイトル「人類史からひもとくデザイナーの生存戦略 〜強者生存か、適者生存か〜」をかたじけなくしました。姿形だけでなく、交流した遺伝子も受け継がれているのですね。