見出し画像

No.667 医の智の光明

『ターヘル・アナトミア』の翻訳書である『解体新書』を前野良沢(翻訳係、1723年~1803年)と杉田玄白(清書係、1733年~1817年)が著したのは、1774年(安政3年)のことだそうです。フランスでは「太陽王」と呼ばれたルイ14世が即位した年、また、ドイツではゲーテが『若きウェルテルの悩み』を刊行した年だとも言われます。
 
驚くことに布教のために日本にやってきたポルトガル人修道士のアルメイダ医師(1525年~1583年)は、大友義鎮(よししげ=宗麟、1530年~1587年)が「心室中核欠損症」であることを突き止めていたそうです。『ファブリカ』(1543年刊)という詳細な人体解剖図を載せた本をアルメイダはリスボンの王立病院で学び、知っていたからだというのです。
 
この人体解剖図(1543年)が解き明かされる(1774年)まで、日本は西欧に実に231年も後れていたということになります。2016年(平成28年)に始まった安部龍太郎氏の新聞小説「宗麟の海」第111号(大分合同新聞朝刊・10月7日版)で知りました。
 
かくまで西欧に大差をつけられていた医学術で後発国の日本でしたが、1987年(昭和62年)の利根川進氏、2012年(平成24年)に山中伸弥氏、2015年(平成27年)に大村智氏、そして、2018年(平成28年)には大隅良典氏が、それぞれノーベル医学生理学賞を受賞し、人類に大きく貢献する業績を残しています。
 
日本は世界に誇れる「医の智」(命)の光明が差す国でもあります。私はナショナリストではありませんが、日本人は、大差に屈せず、先見性を持ち、「負」から出発しても進取の精神で世界に伍することのできる国民であるように思います。

※画像は、クリエイター・Saralaさんのタイトル「体いっぱい、感じてみたら」をかたじけなくしました。深呼吸したくなる1葉です。お礼申します。