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No.1081 美しき曲と芸

「言うことを聞かんと、サーカスに売り飛ばすで!」
小学校に上がる前の昭和30年代前半のころ、爺ちゃんだったか誰だったかに1度だけ言われたことがあります。何せ、言うことを聞かない子供だったそうです。今は、「婦唱夫随」の実に素直な性格に生まれ変わりました。
 
小学校の3年か4年生のころに、10km以上離れた杵築という町にサーカスが来たとかで、父が私を自転車の後ろに乗せてくれ、見に行ったことがあります。ふと、あの一言を思い出して、
「売られるんじゃなかろうか?」
とビクビクしながら荷台で小さくなっていたような記憶があります。
 
「サーカス」と言えば、1902年(明治35年)の名曲「美しき天然」を連想してしまいます。何ともノスタルジックなワルツなので、外国の曲だと思っていましたが、な・な・何と佐世保海軍第三代軍楽長の田中穂積作曲、武島羽衣作詞の唱歌だそうです。あらま!です。その近未来的なテントや、凝った演出の照明や音楽は、まさにエンターテイメントだと思います。

数年前、文化教室の粋な計らいで、「木下大サーカス」をカミさんと観ることが出来ました。
 
オープニング以下、吊りロープショー、アメイジング・サファリスペクタクル、古典芸能「坂綱」、空中アクロバット、象やマジックのショー、そして、前半の部最後の演目の、空中大車輪にはド肝を抜かれ、観客は悲鳴を上げました。
 
後半の部は、奇跡のホワイトライオン猛獣ショー、世紀のオートバイショー、空中ブランコアクロバット等で観客を魅了しました。息もつかせぬハラハラドキドキの波状攻撃が仕掛けられ、手に汗握る妙技の連続に、頭がシビレてしまいました。
 
笑いの魔術師の道化達が幕間をうまく繋ぎながら、緩急自在に演目を進めるとても素敵なプログラムでした。アルゼンチン出身のブライアンのジャグリングは異次元の芸です。色とりどりのカンカン帽をブーメランの様に放り投げ、頭でキャッチします。演技も盛り上げるセンスも、世界規格だったように思いました。
 
ところで、近代サーカスは、1770年に英国「アストリー・ローヤル演芸劇場」(円形劇場)で開催された曲芸馬に始まったそうです。
 
もっとも、サーカスの始まりは、紀元前3000年の古代エジプト時代に遡るそうで、ジャグリングや道化などがすでに行われていたことが知られます。古代の円形劇場などで曲芸が催されたので、円周・回転を意味する語源から「circus」と言われるようになったとか言われます。
 
サーカスが終わり、「満員御礼」のサークルテントから吐き出されるように出てきた老若男女たちは、いい夢を見続けているような笑顔でした。わたしたちも、感動と興奮の余韻をしばらくの間味わいました。


※画像は、クリエイター・HRSD-noteさんの、「木下大サーカス」の1葉です。手に汗握る妙技の数々、歓声と笑顔と拍手を思い出します。お礼申し上げます。