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No.1116 太っ腹の恩師

人生を振り返る契機となった本と(ホント?)の出合い。
 
数年前の1月に謹呈本が届きました。送り主は、私が中学校時代の恩師I先生で、「自分史」を上梓されたのでした。
 
『上市川のほとりで』(双林社刊)は、252頁にも及ぶ先生の人生が活字に刻まれています。出生~小学校時代、新制中学時代、高校・大学時代、教職時代と組合活動の時代、管理職の時代、退職後の諸活動等々を微に入って記述された後、受賞した数々の文芸作品、さらに家系図まで、孫子の代を思って編集がなされていました。
 
県教組や県労評で活動していたとは、つゆ知りませんでしたが、国語の担当・柔道部顧問として厳しくも温かいご指導を頂きました。冷静で理論派の先生でした。I先生は、その後、中学校の教頭・小学校の校長を歴任されました。
 
その豊かな文章力・表現力にとどまらず、退職後は大分合同新聞の短歌や川柳発表の場に投句し何度も選ばれました。「文字の魔術のような魅力を感じた」という韻文創作の熱意と発想は、先生の学芸の才をよく物語っていると思いました。
 
「人は生まれたときは、粗野で荒削りであるが、人生という水流にもまれるうちに人格を形成し、最後には仏となる」
今の私には、その言葉がズシンと重みをもって迫ります。
 
多くの教え子たちにとって、その生き方の指針ともなる一冊でした。恩師の人生の踏み跡に、我が生き方を振り返る機会を与えて頂きました。不出来のこんな教え子にも惜しげもなく著書を届けて下さる太っ腹な恩師でした。
 
その恩師は、今年1月3日付の大分合同新聞「第39回読者文芸コンクール」の詩の部門で第2席を受賞していました。川柳、俳句、詩と才能は健在です。
 
  地球温暖化
 お花も蝶も訴える
 タデ湿原のリュウキンカン
 一か月早く咲いていた
 蝶のヤクシマルリシジミ
 遠き由布市に住んでいた
 何か変だと皆思う
 はるか産業革命で
 二酸化炭素広がった
 気温上昇世界中
 風水害の激甚化
 連続降水帯も出る
 避難引っ越し新地見る
 命を守る動きとる
 宇宙へ逃げたいときもある
 遠い家族へ気を遣う
 無事で安堵の胸撫でる
 平和な世界求めたい
 人間らしく住める世に
 熱中症も多発する
 年寄り子ども逃げ場なし
 エアコン入れて水を飲む
 二酸化炭素減らしたい
 ゼロを目当てに減らしたい
 総ての命守るため

 私は、老先生から賀状を頂戴したような気持ちで読みました。

「健筆や老先生の年賀状」
 宗像夕野火(1922年~2017年)


※画像は、クリエイター・松田祐樹@MD-Farmさんの、タイトル「MD-Farm、イチゴの植物工場の開発の恩師」の1葉をかたじけなくしました。お礼申し上げます。