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No.1161 今泣いたカラスが

昨日は、大先輩T先生のお話でしたが、今日は、ある女先生の若かりし頃のコラムです。ご一読いただければ幸甚です。

「また一人、友達が結婚した。
母曰く、
『とってもきれいだったそうよ…。」
何となく、母の言いたいことは伝わってくる。
 クリスマスケーキだって24日は飛ぶように売れるが、25日になると売れ残りとして扱われる。私のイブは、あと1年で終わるが、幸か不幸か、私はケーキのように甘く可愛らしい雰囲気にはほど遠い。
 サラリーマンをしている友人の上司が言ったそうだ。
『結婚するなら、腹を立てる女だけはやめた方がいい。』
 だったら、私はすぐにでも結婚できる…わけがなく、一生できないじゃない!と友人に悟られないように胸をドギマギさせた。
 また、この二つの条件さえ備わっていたら、良い奥さんになれるという話も聞いたことがある。
『料理と按摩の上手な女性。』
私の結婚は、当分の間、期待できそうにない。」

(「国語科通信」第5号昭和63年10月7日発行より)

ちょっぴりアナクロニズムで、地方の封建的な残像が生きていた頃のお話です。そんな中でも、現代的なセンスとジョークを忘れない、明るく溌溂とした女先生でした。
 
そうは言ったものの、やっぱり「恋は思案の外」なのですね。いつ、どこで、どんな出逢いがあったのかは、皆目見当もつきません。しかし、「白馬ならぬ愛車に乗った王子様」を見つけちゃったのか、「ガラスならぬスニーカーの靴を履いた彼女」が見初められちゃったのか、フォール イン ラブしてしまったのですから、この世の森羅万象の摩訶不思議さは、想像以上のものがあります。
 
私設「お悩み相談室」の必要これなく、まじめにお付き合いをし、周りの心配をよそに華麗にゴールインを決めてしまいました。
「今泣いたカラスが、もう笑(わろ)た!」
思わず、指さして言ってやりたいような恋物語の展開でした。
 
あの日から30年以上が経ちます。女先生は、孟子のいう三つ目の「教育の楽しみ」を実感しながら、親御さんにも旦那さんにもお子さんたちにも孝を尽くしつつ、今も教壇に立ち情熱的に授業を行っています。
 
長いようで短かった時の流れは、幾つものドラマを生み、幾つもの歴史を刻みました。


※画像は、クリエイター・村木藤志郎さんの、タイトル「NHK放送博物館」の1葉をかたじけなくしました。江戸川のカラス「キョエちゃん」の姿も見られます。お礼申します。