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No.1017 生きる

「♪ちょうど一年前に この道を通った夜
     昨日の事のように 今はっきりと思い出す」
から始まるこの曲は、1993年(平成5年)1月にリリースされたTHE 虎舞竜のシングル版「ロード」です。高橋ジョージさんの歌う次のセリフが、聴くたびに胸に迫って来ます。
「♪何でもないような事が 幸せだったと思う
     何でもない夜の事 二度とは戻れない夜」
 
なにげない日常、何でもない当たり前のことが、いかに大切で尊い時間であり幸せなことであるかを分かっているつもりでも、変化のない生活に不満を覚えたり、いろんなことを比較したりして、心卑しく過ごしている自分に気づきます。
 
1987年(昭和62年)の冬に、当時19歳だった少女から、高橋ジョージに届けられたファンレターが、この「ロード」誕生のきっかけとなったそうです。ウィキペディアからの引用ですが、非常にショッキングな悲劇が彼女を待ち受けていました。

その手紙には「現在子供を妊娠していて、相手の彼はバツ1で一児の父。しかし『もう子供はいらない』と言っている。彼にどう打ち明けたら良いのか」という相談内容だった。その後、彼女は春に出産することになったのだが、その春を迎える前に交通事故で胎児とともに死亡した。これを知らされた高橋は衝撃を受け本楽曲を作ったという。なお、高橋ジョージは「ロード」シリーズ制作にあたり上記の出来事は事実としつつ、3人ほどの主人公がおり、いくつかのエピソードや自身の体験、創作も交えて楽曲を構成した事をYouTube番組『街録ch〜あなたの人生、教えて下さい〜』で述懐している。

Wikipedia「ロード (THE 虎舞竜の曲)」の項より

とありました。名前も知らない主人公の一人の彼女ですが、その失われた命が旋律に宿り、永遠の命を与えられたような気がします。歌手とファンの心の邂逅が生んだこの歌は、彼女への哀悼の歌のようにも鎮魂の歌のようにも、また、私たちへの静かな癒しの歌のようにもささやかな励ましの歌のようにも思われ、いっそう心打たれるのです。
 
敬愛する友人から、久しぶりに絵手紙を頂戴したのは、もう半月以上前のことです。それが本日のトップ画像です。今年6月に大きな手術を受けました。そして、無事に戻ってきてくれました。3か月が経ち、心に浮かんだ感慨を寄せてくれたのでしょう。
 
「ただ普通に暮らせることの幸せ」
わずか14文字の賛が10㎝✕14,8㎝のハガキの絵に添えられているのですが、無限に広がりを持つ真実のメッセージとして、しみじみと伝わってきます。普通であることの難しさ、何でもないことの幸せ。よく言われる「平凡の非凡」にも気づかされます。
 
その彼女は、吉川英治のこの言葉も深く心に刻んで生きています。
「晴れた日は晴れを愛し 
雨の日は雨を愛す
楽しみあるところに楽しみ 
楽しみなきところに楽しむ」

とは言え、なってみなければ分からない年を取り、様々な「恐れ」を感じながら私は生きています。