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No.848 分け合った三兄弟愛

ある年に書いた学級新聞のコラムの中に、こんな話を見つけました。
「娘から聞いた話である。
 小学校1年生の旧友の男の子は大変な弟思いの子で、給食の時の味付きパンがおいしいからと、半分を残して家に持ち帰り、幼い弟二人に半分ずつ切って分け与えるのだという。
 7歳ほどの児童が『こんなおいしいものを一人だけで食べては申し訳ない。弟たちにもあげよう』との思いをしたのだから、ものすごい兄弟愛だ。
 この思いやりの心は、贅沢な家庭環境に生まれた子たちには、なぜか育ちにくいものだ。貧しい人の心は豊かで、金持ちの心が卑しいのだとしたら、何とも皮肉なことである。」
 
改めてこのコラムを読んだ時、1984年(昭和59年)にマザーテレサ(1910年~1997年)が来日して上智大学で講演した時の話を思い出しました。
 
ある時、マザー・テレサは、お腹を空かせた7~8人の子どもをかかえた家族のもとに両手に一杯分のお米を届けたそうです。ところが、その母親はマザー・テレサからお米を受け取ると半分に分けそれを持って出ていきました。
 
しばらくして、戻ってきた母親に「どこで、何をしていたの?」と尋ねると、母親は「隣の家族もおなかをすかせているから、お米を半分持って行ったのよ。」と話したそうです。裏の家も同じくらい子どもがおり、貧しく暮らしていたそうです。

豊かな生活をする富のある人が分け与えるのでなく、貧しい人同士が当たり前のように分け与える心の豊かさにマザー・テレサは驚嘆したそうです。本当の優しさとは何か、本当の喜びとは何か?を考えるようになったといいます。それは、隣人愛だったのでしょうが、崇高な愛だとテレサは感じていたと思います。
 
その時、マザー・テレサは、こんなことも話していたそうです。
「アフリカの国々が滅びるとしたら貧困が原因でしょうが、日本は心が原因で滅びるでしょう。日本人は、インドのことよりも日本の国内の心の貧しい人々への配慮を優先して考えるべきです。」
豊かな日本人に見られる「心の飢え」を39年前にテレサは指摘しています。21世紀に入り彼女のアドバイスは日本人に届いているのでしょうか?
 
あの、パンを分け合った三人兄弟は、今や立派な30代でしょうが、どんな青年に成長しているのでしょう。思いやりの心の人一倍ある兄弟に育ったことだろうなと思ったりするのです。


※画像は、クリエイター・和田のりあき/マジックパパさんの、学校給食の1葉です。私にも懐かしいコッペパンです。お礼申し上げます。