見出し画像

No.886 花香り、蝶の来る。

♪ 山には山の 愁いあり   
  海には海の 悲しみや     
  ましてこころの 花園に    
  咲きしあざみの花ならば 
 
♪ 高嶺の百合の それよりも   
   秘めたる夢を ひとすじに   
  くれない燃ゆる その姿    
   あざみに深き わが想い
 
♪ いとしき花よ 汝(な)はあざみ
  心の花よ 汝はあざみ     
  さだめの径は 涯(は)てなくも
  かおれよせめて わが胸に 
 
1949年(昭和24年)に発表された「あざみの歌」(作詞:横山弘、作曲:八洲秀章)です。倍賞千恵子さんの透明感のある伸びやかな歌声に心癒されます。今年で74歳となる、いつまでも残したい素敵な日本の歌です。
 
そのアザミの花言葉は「独立」「報復」「厳格」「触れないで」だとか。特に「独立」と「報復」についてはスコットランドの伝説に由来するそうです。イングランドはバラ、スコットランドはアザミ、アイルランドは三つ葉のクローバー、そしてウェールズは水仙、これらは、それぞれの地域や国を代表する花や植物と言われています。
 
そのスコットランドは、9世紀~13世紀の頃にヴァイキングたちにより略奪や破壊が繰り返され、スコットランド王国は弱体化し危機に陥りました。そのヴァイキングの脅威から解放されたのが、1263年のラーグスの戦いだったと言われています。
 
この戦争は、ノルウェー軍率いるヴァイキング船団と、スコットランド軍との間で行われました。その際、ノルウェー軍の奇襲部隊が、夜間にアザミの花を踏んで悲鳴をあげてしまったことから、スコットランド軍に知られるところとなり、スコットランド側に勝利をもたらしたといいます。日本のアザミより野性的で、長さ3~4センチの太い刺があるオニアザミだそうです。さしものヴァイキング戦士たちも音を上げたといいます。スコットランドを救ったのは「アザミ」だということで国の花とされました。
 
さて、「あざみの歌」は、1945年に復員してきた横井弘(当時18歳)が、家族が疎開していた長野県下諏訪・霧ヶ峰八島高原で、アザミの花に自分の理想の女性像をだぶらせて綴ったものだという説明があり、興味深く思われました。品位と情趣を思わせる詞の作者が、ゆかしく思われます。
 
「時知りて、アザミ咲く。花香りて、蝶の来る。」
そんなまぶしい季節の華やぎが、何とも嬉しく浮かれ出てしまうのです。
 
「あざみあざやかなあさのあめあがり」
種田山頭火(1882年~1940年)


※トップ画像は、クリエイター・t.kobaさんの、「アザミの花にカラスアゲハの画像。」をかたじけなくしました。みごとな一葉、お礼申し上げます。